電子書籍端末の価格戦争が始まった。そして、AmazonのKindleとBarnes & NobleのNookの間の競争は、電子書籍専用端末の選び方を変えてしまうかも知れない。
米大手書店のBarnes & Nobleは米国時間6月21日、3G版Nookを199ドルに値下げし、さらに149ドルのWi-Fi版も発売した。そのわずか数時間後、AmazonはKindleの価格を189ドルに引き下げてこれに応じた。
その1日前のKindleとNookの価格は259ドルで、最安のWi-Fiモデルが499ドルであるAppleのiPadと競合していた。しかし、200ドルを下回るとなれば、専用電子書籍端末の購入は理にかなっている。2010年に発表されたYankee Groupの予想はきわめて的確だったようだ。同社は、価格が150ドルになれば、電子書籍端末の販売は活性化すると予想している。
Yankee Groupは、2010年に600万台の電子書籍端末が出荷されると推定している。2013年には、出荷台数が1920万台になると予想されている。
その理由は、価格がものを言うからだ。
上のグラフでは、2013年までデバイスの売上は大きくなっていく一方で、デバイス1台あたりの利益は下がっていることに注意して欲しい。
電子書籍市場のより大きな問題は、価格競争ではないのかも知れない。問題は、専用電子書籍端末が、スマートフォンやタブレット端末、ネットブックに対抗できるかどうかだ。
価格が変わったことで、電子書籍端末の立ち位置がわかるはずだ。もし値下げをしても出荷台数が変わらなければ、このカテゴリには望みはない。もし出荷台数が増えるようであれば、電子書籍端末はノートPCやスマートフォンといった、ほかのデバイスにも対抗できるだろう。
ともかく、今回の展開は、このところ立ち遅れているように見えるAmazonを慌てさせたかもしれない。Amazonの最高経営責任者(CEO)Jeff Bezos氏は数週間前、同社の株主総会で次のように述べている。
読書について言えば、これは読書家にとっては重要な活動であるため、彼らは専用のデバイスを欲しがるだろう。現在、人口や世帯の比率という意味では、90%の世帯は必ずしも読書好きであるとは言えない。このため、われわれは非常に焦点を絞り込んでいる。Kindleは読書のためだけのものだ。
値下げ後も、AmazonのKindleが狙っているのは熱心な読書家なのかも知れないが、同社がマスマーケットを念頭に置いていることは明らかだ。少なくとも、Amazonはもはや電子書籍端末の価格を支配していない。電子書籍端末の価格を牛耳っているのは、Barnes & Nobleやソニーのような競合だ。
Amazon、Barnes & Noble、ソニーの間の競争は、興味深いものになるだろう。簡単に言えば、規模と流通が電子書籍端末の勝者を決めることになる。
電子書籍端末はみな非常に似通っており、価格が最大の売りになる可能性があることは認めざるを得ないだろう。この戦いにおいては、Amazonは競争上不利な立場にあるかも知れない。というのは、次のような事情があるためだ。
価格競争の悪循環を打ち破る唯一の方法は、革新性で他社を上回ることだ。そして、その革新性はAppleと同社のiPadにある。この戦いは見ていて楽しいものになるだろうし、消費者のためにもなるだろう。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス