IDC Japanは6月8日、国内企業向けオフショアITサービス市場規模予測を発表した。2009年に国内企業がインド、中国などのオフショアベンダーに直接支出したITサービスの金額は、前年比マイナス0.2%の326億円となったものの、2009年から2014年には年間平均成長率9.2%で拡大し、2014年には507億円に達するとIDCでは予測している。なお、この市場には国内ベンダーが自身のオフショア拠点を活用したシステム開発や運用サービス、オフショアベンダーを二次請けとして利用して国内企業に提供したサービスは含まれていないという。
インド、中国などのオフショアITサービスベンダーは、2008年まで順調に業績を拡大してきた。サービスの中心はカスタムアプリケーション開発、ERPパッケージの導入などであり、外資系の金融機関やグローバルな製造業が主要顧客だったという。IDCでは、その背景には、国内ITサービス市場における価格低減要求やITエンジニア不足などがあったとみている。しかし、景気後退に伴う企業のIT投資抑制はオフショアベンダーの国内業績にも大きく影響を及ぼし、2009年の国内企業向けオフショアITサービス市場は若干のマイナス成長となったという。
しかし、景気後退期を経て、国内企業にとってITコスト削減は恒常的な課題となっており、今後低コストでのシステム開発および運用への需要は更に高まると予測。日系企業を中心に、グローバル市場への参入を急務とする企業が、グローバルなシステムでの実績やグローバルスタンダードのパッケージソフトウェアに関する知識を求めて、オフショアリソースの活用を検討、採用するケースが増加しているとしている。
一方、オフショアITサービスベンダーは、個別のアプリケーション開発から、パッケージの導入に伴う上流工程を含めたシステムインテグレーションや開発したシステムの運用など、より包括的なサービスへと提供範囲を拡大しているという。これらの需要を背景に、国内企業向けオフショアITサービス市場は2010年に成長を回復し、その後もITサービス市場全体を上回る高い成長率で拡大を継続していくとIDCでは予測している。
IDC Japan、ITサービスマーケットアナリストの武井晶子氏は「今回の景気後退を経て、オフショアITサービスの活用は企業のIT投資のニューノーマル(新たな常態)となる。オフショアITサービスベンダーと国内ITサービスベンダーは、競合の機会が増加するものの、ビジネス拡大のために新たなパートナーシップの形を模索することが重要だ」とコメントしている。
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