「財務的な厳しさを毎日のように感じた」--ウィルコム社長会見 - (page 2)

永井美智子(編集部)2010年02月18日 20時44分

 1月末にPHSとNTTドコモの第3世代携帯電話(3G)網が利用できるHYBRID W-ZERO3というモデルを発売した。こういうユニークなスマートフォンへの需要は今後も拡大すると考えている。引き続き、シャープに対してWindowsスマートフォンの継続的な開発を依頼することになるだろう。

――総務省に提出したXGPの事業計画における財務計画に虚偽があったのか、それともその後の金融危機などによる影響を受けたのか。

 免許をいただいた段階では、現行のPHS事業で生み出したキャッシュフローをXGPに投資するという判断をしていた。しかしその後、競争が予想以上に激化したため、結果的にキャッシュフローが想定通りに創出できない事態になった。

 また、世界の金融市場の混乱で、想定していたリファイナンス(借入金の借り換え)も、既存株主からの追加出資も難しい事態になった。

――アドバンテッジパートナーズ、ソフトバンク以外のスポンサー候補は。

 再建計画や支援に向けた出資など、具体的な提案をもらっているところは現時点でほかにはない。

――今後のPHSの純減数はどの程度と予測しているか。

 昨年の秋は大変辛く、月3〜4万の純減があった。背景には、解約が増えたというよりも、新規の獲得ができなかったことがある。資金がなくてテレビCMやプロモーションなどの営業活動が十分できなかったためだ。

 今回の支援要請の結果、資金的な裏付けができた場合は、マーケティング投資を普通の形で実行できると考えている。例えば昨年9月、高校生向けに月額料金が半額になる「新ウィルコム定額プランS」というサービスを始めた。開始当初は認知が進まなかったが、年末にかけて月2〜3万の新規顧客が取れるようになった。2月10日からは対象を大学生にまで拡大している。

 当たり前のマーケティングをすることで、今後は新規顧客を獲得したい。純減を予想するよりも、いつ純増に転ずるかが大きな問題だと考えている。

――既存顧客への取り組みは。

 会社更生法の適用を受けた後で、というところでは、従来どおり継続的にサービスを提供するので、安心してご愛顧いただきたいということに尽きる。今後も端末の開発を続け、これまで以上に満足してもらえるものを提供していく。

――NTTドコモのMVNO事業は継続するのか。

 2009年春からNTTドコモの回線網を借りて「WILLCOM CORE 3G」というデータサービスを始めた。PHSのデータ通信速度が3Gに比べて遅かったので、かなりの顧客が満足して契約いただいた。我々にとって意味のあるデータサービスなので、継続できるようにNTTドコモにお願いしている。

――当初計画していた上場ができれば、状況は変わっていたか。

 上場ができていればそれなりの資金が確保できたので、それを使って従来通りのマーケティングやコスト削減への投資、XGPへの開発投資ができて、今とはまったく違う姿が描けたのではないかと思う。

――経営責任については。

 今朝、取締役会があり、経営責任を明確にするという意味で取締役全員が辞任願いを提出した。ただ、再建手続きをスムーズに進めるために、管財人という立場で私が会社に残り、更生計画の立案に協力する。

――2009年8月に社長に就任したばかりだが、いまの気持ちは。

 5カ月間はあっという間だった。私がウィルコムにお世話になるのを決めたときは、リファイナンスができ、XGPへの投資ができることで、通信ビジネスの拡大に寄与できるという期待があった。

 ただ、財務的な厳しさというのは毎日のように感じた。たとえばマーケティングをするにもお金がなくて困るという事態に直面し、忸怩(じくじ)たる思いがあった。

 とはいえ、機器のネットワーク付加サービスまで含めると、通信技術を使った市場はかなり大きな成長の可能性があると信じている。財務的な安定性さえ確保できれば、支援パートナーと相談した上で思いっきりやっていってほしい。

――銀行からリファイナンスを受けられなかったのは、事業の見通しが厳しいということか。

 PHS事業のキャッシュフローを使ってXGPに投資するという事業計画そのものが厳しい状況に置かれつつあったということが1つの理由かもしれないし、金融市場が混乱する中で、継続的な支援が難しかったのかもしれない。これは銀行の判断なので、我々がコメントする立場にはない。

――従業員のリストラは。

 できるだけ雇用は維持したいと考えている。ただ、スポンサーとの話し合いはこれからなので、その意向を聞いた上で決めていきたい。責任を取ることは重要だが、一方で債権者に対する債務をきちんと返済することも重要だ。

 できるだけ途切れることなくこの会社が経営し、サービスを継続することが大切だと考えている。執行役員を含め、社員が今日を起点にできるだけ前向きに、会社の継続に向けてがんばるようにと指示をしたところだ。

 約1000人の社員がこれまでこの会社を引っ張ってきてくれた。これからも継続的に満足してもらえるサービスを提供するには欠かせない人たちだ。各人が自分の役割を果たして、顧客の満足度が上がるようにサービスを提供することが重要なので、がんばって欲しいという言葉をかけた。

――株主責任は。

 株主は100%減資で責任を取ることになっている。一般債権は維持するが、(端末を供給している)京セラは株主でもあるので、それなりの負担をしてもらう。

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