モバイル向けソーシャルネットワーキングサービス(SNS)「モバゲータウン」を運営するディー・エヌ・エー(DeNA)の株価上昇が止まらない。10月末に2010年3月期9月中間決算を発表したことをきっかけに上昇基調に入ったが、勢いは11月末になっても衰えていない。決算発表直前の10月27日終値から11月30日までの株価の上昇率は92.9%。全般相場が下値を追う中で株価は2倍となり、連日で年初来高値を更新している。
DeNAはいち早くモバイルSNSで課金ビジネスを確立した業界の先駆者的存在の企業。しかし、今期業績は横ばい見通しで、株式市場では同じSNSでも規模で勝るミクシィ、勢いのあるグリーが高く評価されていた。2008年末に株式公開したグリーが1年をかけて時価総額を倍化させた一方、DeNAは10月末時点で1年前とほぼ同水準。投資家による乗り換えが進んでいる印象で、DeNAは過去の銘柄と位置付ける投資家もいたほどだ。アバターの失速と、新機軸になると期待された3Dアバターの不振が投資家を失望させていた。
10月末以降の株価の急騰劇は、決算発表がきっかけだが、中間期の連結売上高は前期比1.8%減の173億7500万円、経常利益は同18.7%減の63億8000万円と減収減益。株価上昇を招くような内容ではない。通期では売上高430億円(2009年3月期比14.3%増)、経常利益162億円(同0.6%増)を計画しているが、この達成が懸念視される。ただ、DeNAの業績成長鈍化は、従前から知られていたこと。悪い材料が出尽くしたという、株式市場でよく言われる「アク抜け」と呼ばれる値動きとなったのだ。
もうひとつのポイントは決算と同時に発表したIceBreakerからの事業譲渡。モバイルコミュニティサイト「Crush or Flush」を取得する。DeNAは10月初旬にも米Aurora Feintとの資本・業務提携を発表しており、本格的に米国市場に進出していた。国内市場の飽和化が懸念される中で、より大きな市場を持ち、SNSビジネスで先行する米国での事業展開は、今後のDeNAの業績成長ドライバーとなるとの期待が浮上している。
本業もグリーの業績拡大エンジンとなっているSNS連動型ゲームも相次いで投入。9月上旬からペット育成ゲーム「セトルリン」の配信を開始したほか、10月上旬には宝探しゲーム「海賊トレジャー」を投入。SNSゲームで先行するグリーを追撃する体制を整えつつある。これらは自社開発のコンテンツだが、今後はオープン化により、外部の開発者も活用してコンテンツの充実を図っていく方針だ。
値幅制限いっぱいとなるストップ高まで買われた11月30日は、三菱UFJ証券による投資判断引き上げが材料となった。「モバゲータウン」はテレビコマーシャルを行わずに会員を伸ばしており、ソーシャルゲームにおけるアイテム課金売上高も順調で、ゲームサイトは「死んでいなかった」とコメントしている。
DeNA株の特出すべき強さは、短期間での上昇率よりも小型株市場が連続安記録を更新している中や東証1部市場が急落した場面で、逆行して上昇トレンドを継続してきたこと。足元、テクニカル分析による過熱感は強まっているが、買いが買いを呼ぶような展開となっており、当面は強調展開が継続しそうだ。
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