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世界目指すベンチャー、既存のフレームを崩壊させよ--IPAXでLUNARR高須賀氏が講演 - (page 2)

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 高須賀氏自身は、松下電工時代はエンジニアであり、社内では技術に関して権威となっていた。それから経営企画に異動して「技術もいいけど、事業や経営もおもしろい」と気づいたのだという。やってみると実は会社の事業運営とか経営とか思ってるほど大そうなものではないとの持論を展開した。

 同氏が独立と起業を思い立ったのは、29歳の頃に先輩から言われた「君は29歳だけど、決して若くないよ」という言葉。「若いうちは、たくさん機会があると思うが、人生における機会はあと何回訪れるかと考えた。死ぬときに『これをやっておけばよかった』といった後悔をしたくない。独立して稼げるかどうかの恐怖より、機会をなくす恐怖が先立ち、一歩踏み出せる勇気が得られた」(高須賀氏)と当時を振り返る。

 続いて、高須賀氏は1つのスライドを提示し、ベンチャーの経営について語りはじめた。

 「大企業と中小企業の経営とベンチャーの経営はまったく違う。これを同じ『経営』とくくるのは、明らかに間違っている。その違いは、『不確実性のハンドリング』だ。大企業の人は、大きな組織、大量のリソースがないと大きなことができないと思っている。これが間違いの1つ。世界に目を向けると、少ないリソースで大きな事業を起こしている例がたくさんある。よくヒト・モノ・カネというが、これらが成功のための鍵になるのは、不確実ではないものを扱うときの話で、ベンチャーの話ではない」高須賀氏はこう語る。

 高須賀氏はAppleを例に挙げ、「Appleのスティーブ・ジョブスが新しい業をやりたいのでAppleを抜けるとする。このとき、Appleとスティーブ・ジョブスの新事業のどちらに投資するかと考えたら、自分は後者だと思う。つまり、従来のリソースが必要なのではない」と大企業とベンチャーの経営の違いを説明した。

 高須賀氏はさらにもうひとつの切り口である“キャップ(規模)の違い”について、サイボウズ時代の経験を語る。「ベンチャーといっても、ニッチなベンチャーやドメスティックなベンチャーがある。サイボウズはドメスティックなベンチャーだ」と言った上で、かつて2000年前後にGoogleとディスカッションしたことを紹介し「すごくおもしろいことを言っているとは感じた一方、とりたててすごく優秀だとは思わなかった。当時両者が持っているキャッシュは同じくらいだったが、その後どうなったかは語るまでもない。この差はものすごく嫉妬を感じる。この原因はやはり経営の違い」と語り、本当のベンチャーとはドメスティックなものではなく、社会にインパクトを与える事業を行う企業だとした。

 こうした経験則から、ベンチャー企業の経営は、“不確実性の極大化”であると示す。「大企業がいる既存のマーケットでは勝てないが、不確実性の高いものがそこに入ると不確実性が極大化する。既存のビジネスはフレームを持っていて、本来そのフレームは崩壊しない。しかし、それを崩壊させるようなものを投入していくとマーケットの不確実性は極大化し、強者も弱者もぐちゃぐちゃになり、その後だんだん確実性が増して新しいフレームができあがる」と、ベンチャー経営の醍醐味を語った。

 加えて高須賀氏はこれからのベンチャー企業はコンセプチュアルであることが求められているとした。「高度成長期には、テレビや車、エアコンなど欲しいものがはっきりとしており、それをどう作るかという『手法のイノベーション』はたくさんあった。しかし現在我々は豊かになって、どんなものを作っていったらいいかわからなくなった。そこで『どう作るか』の議論をしてもしょうがない」とし、これから求められることとして「まず、『何をやるか』を考えたほうが不確実性が高くなるし、面白くなる。Googleは、学生二人が『ネット上のリンクの数を数えたら、いいサーチエンジンができるんじゃないか』というコンセプトが先にあった。もちろん技術力は必要だが、まずコンセプチュアルな部分が必要」と力説した。

 人材については、「エンジニアはクリエイターではない。ベンチャーにおいてエンジニアはとても重要性があるが、『何をやるか』というコンセプチュアルなマネジメントにおいては素人。そういう意味で言うと、技術は最重要ではない。エンジニアよりサイエンティストのほうが重要だ。技術を軸にしたベンチャーっていうのはたかが知れてている。まずはユニークなコンセプトが必要で、そのためにはエンジニアだけでは足りない」と、適切なチーム編成が重要であるとした。

 高須賀氏は、旧来の大企業の経営との違いと、コンセプトの重要性をさらに解説するために、ホワイトボードを使って“C”“S”“E”の3文字を書いた。

 「C”はConcept(コンセプト・概念)、“S”はStrategy(戦略)、“E”はExecution(制作・実行)の略。旧来の保守的な企業は、Executionに重要性を持っていた。意思決定も経験とカンで行っていて、新しいことには反射神経で対応していた。たとえば『トラックに積んだ在庫がなくなるまで帰ってくるな』といった精神論や、『兵隊をどれだけ増やすか』というところに比重があった。そこで、事業のさまざまな要素を定数化し、フィードバックしていくような素敵なStrategyをもって実行して効率化するとExecutionよりもいいことがわかる。しかし、Microsoftが検索を死ぬ気で作っても、Googleを抜いていない現実を見ると、賢い人を集めて素敵なStrategyを作っても、Conceptひとつで吹っ飛んでしまうことがわかる。旧来の企業のリソースはE、S,Cの順になっていたが、現在は逆となっている」と図を描いて説明した。

 次に高須賀氏は、不確実性について解説するために1つのスライドを提示した。

高須賀氏のスライド

 「不確実性といっても種類があり、その種類ごとにハンドリングが違う」と語る高須賀氏。まず、左端の図を指して「『来年売れるシステムキッチンの数』については、過去を分析し、数字取り扱えば予測可能だ。その隣の図は、『来年売れるフラットテレビは液晶かプラズマ。そのうちシェアが増すのは有機EL』といった選択的未来。過去から連続的な不確実性であるこの2つは絶対数字を使ってやらなければならない。右端は、『まったくわからない』というもので、まったくわからないものをいくら賢い人が考えても無意味。博打のようなもので、事業化するわけにはいかない」と、異なる種類の不確実性を同じように取り扱うべきではない」と話す。

 最後の1つの図については「これは『こっちのほうかな?』というもの。自分が興味深い領域。グローバルなベンチャーとして世界のユーザーに喜んでもらえるサービスを作るには何が必要かを、自分の経験を踏まえ、仮説を設定するだけではなくて、それを実際に実証していって、そしてそれをまた自分の中で体系化していく」と、構想を語った。

 続いて、数字の書かれたスライドを提示した。

高須賀氏のスライド

 これは日本と米国を単純に比較した図で、それぞれ右側が米国、左側が日本を示しているのだという。数字は一番上が人口、次が年間の起業数、その次が上場数で最後は世界展開する企業数の概算となる。「日本の起業数が20万社に対して米国は600万社。人口は3倍なのに、起業数は米国が30倍。そして上場する数は両者とも0.1%程度。最後はグローバルな企業の数。日本には1つもない。累積なので数の問題ではなく、根本的にやり方が間違っていることがわかる」とした。

 さらに高須賀氏は、「生産性が向上し、効率化がはからられている現状では、ユーザー数が億単位で売上げ1兆円、利益率50%以上だが、社員数は20人程度という会社が生まれる」と予想。最近ではマイクロブログサービスを提供するTwitterが最もそれに近いとされているとし、企業のスタートアップの形がかわりつつあることを切り出した。

 「これまでスタートアップというと、会社を作って、優秀な人材をフルタイムで雇って立ち上げてきたが、現状では『事務所なんてスターバックスでいい』という動きになっている」(高須賀氏)と、プロジェクトベースでさまざまな属性を持った人がサービスを立ち上げるということが可能になってきた現状を説明する。

 会社という箱を抱えてしまうと、税や保険など、サービスとは異なる業務にも追われる。優秀なスタッフを常時かかえてやるよりも、パートタイム的に手があいたときだけ手伝ってもらう人をさがすほうが優秀な人を集めやすいしリスクも少ないので、あえて会社をつくる必要はないというのだ。

高須賀氏のスライド

 最後に高須賀氏は、「自分には、事業をはじめる資金あり、米国で認知をとるためのマーコム力や企画力もある。とりあえずサービスをたちあげて、グローバルでうまくいったら、その際に社員になれる権利やストックオプションの権利なども整備した上で会社を作る。興味があればぜひ参加してほしい」と、プロジェクトベースのスタートアップ構想について説明し、講演を締めくくった。

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