「22歳で年収1000万円」のケータイゲームクリエイターが生まれた理由 - (page 2)

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 2つめは、スパイシーソフトとのアプリ配信に関する独占契約から得られる収入だ。星野氏は作品をアプリ★ゲットのみで配信する代わりに、毎月一定の料金を得ているのだという。また、コラボレーション企画などで、作者以外が「チャリ走」などの名前を使ったゲームを開発する場合にライセンス収入を得ている。

アプリ★ゲット 星野氏と独占契約を結んで「チャリ走」を配信している「アプリ★ゲット」。クリエイターが開発したアプリを登録できるポータルサイトだ

 3つめは、スパイシーソフトが運営する公式の有料アプリサイト「アプリ★ゲットDX」において配信したゲームの販売収入だ。個別課金タイトルの場合は売上の一部を、それ以外のタイトルについては、固定のゲーム提供料のほか、ダウンロード数に応じた一定のインセンティブを得ているという。

 携帯電話の強みの1つに、課金システムが整っていることが挙げられる。PCインターネットの世界でも「ニコニコ動画」に代表されるように、個人が作品を制作し、発表するケースは多く見られる。しかし、それを収入に結びつける手段が少ないことから、「才能の無駄遣い」という言葉が流行するような事態になっている。だがモバイルサービスの場合、コンテンツの代金を携帯電話の月額利用料と合わせて請求するプラットフォームが確立されている。これを利用することで個人クリエイターでも収入が得やすくなっているのだ。

 広告収入に加えコンテンツによる直接収入という確かな「出口」が存在すること。こうした携帯電話サイトならではの要素が、クリエイターに大きな収入をもたらす素地になっているといえるだろう。

 とはいえ、当然ながら誰でも1000万円という額を稼ぐことができるわけではない。星野氏もアプリ★ゲットに登録した当初は年間数千円ほどの収入しかなかったそうで、やはりチャリ走のようなヒットアプリを生み出せるかどうかが、収益に大きく影響するといえる。

ケータイ世代が発揮する「ケータイのセンス」

 しかしPCやゲーム機に慣れ親しんでいる人の中には、どうしてこのようなシンプルなゲームでここまでの収入が得られるのかと、腑に落ちない部分を感じている人もいるだろう。では実際、“ケータイ”の世界で、チャリ走はどのようなユーザーに、どのような形で評価されているのだろうか。

 1つ、面白い調査結果があるので紹介しておこう。下の表は、Twin Planetが提供するギャル専門リサーチサービス「GRP」が「携帯でしているゲームは何?」とアンケートした調査の結果なのだが、「テトリス」「ぷよぷよ」といった有名なゲームに並んで、チャリ走が4位にランクされているのだ。チャリ走がモバイルサイトを積極的に利用する層の間で非常に高い存在感を示していること、ゲームメーカーのゲームと同列に評価されていることが理解できる。

携帯でしているゲームは何? 「携帯でしているゲームは何?」というアンケートの結果。調査日は2008年10月2日で、約5000人から回答を得た(データ提供:GRP

 チャリ走だけでなく、前回紹介した「リアル系乙女ゲーム」などにも共通して言えることなのだが、ケータイユーザーの中で人気を得るためには、PCとは全く異なる独自の発想とセンスが求められている。だがそれを理解している人は意外と少ないようだ。スパイシーソフト営業企画部部長の滝本功氏は「ファミコン世代は手がこんだものを作りたがるが、それがケータイにマッチしているかどうかは別」と話している。

 その点、星野氏は22歳。初めて携帯電話に触れたのが高校生の時という、ケータイ世代のはしりともいえる存在だ。高校時代にクラスや友達の間で評判となっていた携帯電話ゲームについて聞いたところ、本格的なロールプレイングゲーム(RPG)などではなく、アマチュアが作成したワンキーで遊べるシンプルな無料ゲームで、移動中や休み時間などのちょっとした空き時間に仲間と楽しむことが多かったという。携帯アプリを作る時のこだわりに関しても、「お金をかけて絵などを豪華にするよりは、純粋に面白いゲームを作りたい。ゲームも難しいシステムがあるわけではなく、内容が面白ければいいかな、と思っている」と話している。

 また星野氏に携帯電話用ゲームを作ることの魅力について聞いたところ、「携帯ゲーム機より携帯電話を使っている人の方が多い。それだけ多くの人々に対して、自分が作ったものを楽しんでもらえることが魅力」という回答が返ってきた。

 シンプルさを求めるユーザーが数多くいる携帯電話向けに、ニーズに合ったゲームを開発し、提供していることが、星野氏が成功している理由といえるだろう。

クリエイターを育てる携帯電話という環境

 チャリ走を開発した当初は福島の大学に通っていたという星野氏だが、大きな収入を得るようになった現在は大学を中退してプロクリエイターとして独立、東京に移って新たな可能性を追求している。「スーパーマリオブラザーズ」や「ドンキーコング」などの開発で知られる任天堂の宮本茂氏を、目標とするクリエイターとして挙げており、今後も面白さの本質を追究するようなゲームを作っていきたいと話す。将来はゲームに限らず、「世の中に貢献する凄いソフトを開発したい」とのことだ。

 考えてみれば、現在活躍しているゲームクリエイターの多くは、かつてゲームプログラムのコンテストやプログラム投稿雑誌などで評価や収入を得て、そこからプロへの道へと進んでいった。しかし現在は、当時と比べ市販のゲームが高機能、複雑化してしまっている。そのためゲームを作るためのハードルが大幅に上がってしまい、星野氏がWindows用のゲームプログラムの開発で一度挫折を味わったように、アマチュアのゲームクリエイターが育ちにくい状況が生まれている。

 だが携帯電話の世界には必ずしも高機能、高性能を追い求めないユーザーが多く存在しており、ゲームに対価を支払うための環境も整っている。クリエイティブな活動をする人の多くは、表現力や文化的側面などからPCに目が向きがちである。だが新しいクリエイターを生み育てるには、実は携帯電話の世界の方が適しているのかもしれない。

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