「違法なことをしても儲かれば勝ち」はもはや通用しない--牧野二郎弁護士

永井美智子(編集部)2008年11月27日 12時34分
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 Joi Labsの伊藤穰一氏と慶應義塾大学総合政策学部教授の國領二郎氏が、「Business Success in Open Networks」(オープンネットワークにおけるビジネスの成功)をテーマにゲストに話を聞くこの連載では、オープンな組織や社会を作るために必要なものをこれまで探ってきた。

 しかし、企業や社会がオープンになることで、どんなメリットが個人や企業にあるのだろうか。今回は牧野総合法律事務所の牧野二郎氏に話を聞いた。ここではそのダイジェストを紹介する。なお、鼎談(ていだん)の全編の内容はCNET Japanビデオにて紹介している。

牧野二郎弁護士、伊藤穰一氏、國領二郎教授

 企業のコンプライアンス(法令順守)などに詳しい牧野氏はまず、企業がオープンに情報開示することが、結果的に企業の利益につながると話す。日本ではコンプライアンスと利益追求が二律背反のものだと認識されがちだが、時代が変わっているというのが牧野氏の見解だ。

 「少しくらい違法なことをやっても儲かれば勝ちだ、だから違法行為には蓋をしておこう、と考える人が一部にいる。しかし、今の若い人たちはそう考えない。人に胸を張れない違法なことをするのは良くないと考える人たちが多く出てきた」

 企業が健全な状態で、しかも利益率もきちんと取れるようにするというのが、コンプライアンスの本来の理念だと牧野氏は話す。

 「コンプライアンスを守りながら利益を出せる状態が今、ようやくできつつある。例えば中国でメラミン入り粉ミルクの問題が起きて、安全な日本産の粉ミルクが売れるようになった。日本で賞味期限や消費期限などを厳しくコントロールするようになったことで、今中国で日本産の食品が売れている。安全で良いものだと分かれば、多少高くても競争力を持って売れる。きちんとした作業をしているということをオープンにして、消費者に選択してもらうことが重要だ」

 また、企業が安全対策の努力をしていた場合、万が一事故が起きても免責されるという。例えばダスキンがミスタードーナツにおいて、食品衛生法で許可されていない添加物の入った肉まんを販売していた事件では、添加物の混入については一切罪が問われなかったという。しかし、添加物が混入していることを知りながら、それを告知せずもみ消したことに対して、最終的に53億円の損害賠償が課された。

 つまり、企業が問題を隠そうとする姿勢にこそ、問題あるとみなされるというのだ。

 また、携帯電話や自動車、家電などの分野では、ソフトウェアのバグに対応するためにOSやプラットフォームを公開し、共有する動きが出てきている。「企業がソフトやノウハウを抱え込むと、抱えきれないバグも背負い込むことになる。そこで、自動車メーカーも携帯電話メーカーも、OS部分は統一してしまい、バグ出しは全員でやろう、その上に載せるアプリだけ各社考えようという動きになっている」。かつて自前主義を貫いていた日本企業の意識も変わってきているというのが牧野氏の見解だ。

 ただし、人材の流動化についてはまだ進んでいない。「ノウハウやプログラムの共有には方向性が見えてきた。1つの事業体で起きた事故というのは、ほかの事業体でも起きる可能性が高いからだ。今度は、その中でどう人材を流動させるかというのが重要になるが、今のところまだ、人については囲い込みが強い」

 人材の流動性が低い社会では、内部告発のようなものが起きにくいという課題が生まれる。組織を裏切れば、自分の居場所がなくなるからだ。

 そういった状況では、第三者としての立場を貫けるジャーナリストの役割も重要だと牧野氏は話す。

 「企業が『透明性がある』と言っている事に対して、『それは嘘ではないか』と常に批判的精神を持ってたたいていく。一般の人たちが全部を知っているわけではないので、内部の勇気ある人たちが通報をする必要があるのと同時に、全く違う立場の人が徹底的に批判をしていくことも重要だ。その批判をするためにも、企業にある程度情報を公開させる、という関係がないと、まず(世の中は)動かないのではないか」

 「ブログやインターネットは素晴らしいが、同時に組織に依存せず命がけで情報を取りに行くようなジャーナリストを支える仕組みを強くしていかないと、やはり違法なことが隠れてしまう」と牧野氏は話し、企業、企業内個人、監視役としての報道機関の三者がそれぞれの立場から、不正のない社会を作っていくことが重要との考えを示した。

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