3つめは、広告代理店と提携し、大手ブランドのCM制作をクリエイターから募集するタイプ。Filmakaは、フォードの2010年モデル「マスタング」についてクリエイティブCMを世界各地のクリエイターから募集。優秀作品は、NBCで毎週水曜夜に放送されているドラマ「ナイトライダー」枠で放送された。大手メディアでの映像化を、クリエイターの動機づけに利用したのだ。
Filmakaのジェネラルマネージャーであるリサ・フェレス氏は、「短尺映像はインタラクティブメディアととらえている。マスタングキャンペーンでは、6カ国から応募があった」と話し、色々な言語で制作された映像が今後国境を超えて広まっていきながら、メディアの役割を果たすと強調した。フェレス氏は、「大手ブランドとエンターテイメントが融合し、新たな表現方法を作っていくだろう」と今後の映像の方向性を、広告に特化した形で語る。
もう1つ、中国語、ヒンドゥ語などで制作されるインデペンデント系映像に特化したライブラリの配給で収益をあげるJamanのような企業もある。Jamanは海外で暮らすインド、中国系の人たち向けに、母国の映画やドラマを配信する企業である。ロングテールなライブラリが評価され、10月、米国で400万世帯が導入しているDVR(Digital Video Recording)サービス企業のTivoと提携するなど配給先を増やしている。
以上、成功したUGCモデルを4つに分類してみた。彼らに共通しているのは、映像作品をビジネス化するためにどこからお金を得るのか、顧客は誰か、という点を明確にしていることである。映像ビジネスは、クリエイティブとビジネスのバランスが難しい。独自性を映画監督が生み出し、ハリウッドの映画制作会社がマーケティングに特化する映像ビジネスの分業体制は、インターネット映像ビジネスにも生かせるだろう。
今年のDigital Hollywood の議論は昨年と比べ、インターネット映像ビジネスに大手メディア、ハリウッド映画会社がポジティブに関わる姿勢が見えて、興味深いものであった。
現状の大手メディアのインターネット戦略は、友人とのシェアの仕組みなどインターネットのよい点を取り入れながら、自分たちが得意なマス広告モデルで映像ビジネスが成立するかを試している、という段階である。Huluなど大手メディアの動画配信サイトの成功が増えれば、コンテンツサプライヤーが既存メディアではなくインターネットを使って映像を配信する可能性もでてくる。
出版、画像、音楽といったコンテンツビジネスをインターネット市場へ移行させるのは、オールドメディア側への困難がつきまとった。フリーな文化が蔓延するインターネット市場では、コンテンツのマネタイズが難しかったからである。
Digital Hollywood Fall 2008で提示されたマス広告など既存の映像ビジネスモデルが、どこまでインターネットで通じるかというテーマは、今後のインターネット映像動向を考える上で、興味深いといえる。
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