DRMは市場では誤解に基づいて中傷の的になることも多い。消費者にとっては確かに「無い方がいい技術」かも知れないが、適正なコンテンツビジネスの発展を考えれば、なんらかのDRM技術が必要だということに異論はないはずだ。
また、CGM、UGCなどと言われ、すべての人が著作者になる可能性のある現在では、「あった方がいい技術」または「なければならない技術」でさえあると言える。
はたして著作権者からユーザーまでのすべての関係者を満足させられる解はあるのだろうか。
アイドックのKEYRING.NETを含め各社開発に力を入れているがまだ路半ばというところだ。DRMとはコンテンツをビジネスにする側とそれを消費する側のせめぎ合いで、DRMはデジタルコンテンツビジネスの普及の裏面史である。昨今言われるような「DRM不要論」では何も解決しない。
繰り返すが、Joostのビジネスモデルは既存のテレビを可能な限りインターネットに持ち込もうとしているものだ。DRMやP2Pなど最新の技術を駆使しながら、作り上げようとしているのはテレビのビジネスモデルである。
日本ではGyaOがその先駆者であるが、残念ながら収益的には苦戦を続けている。Joostとの違いの1つは配信方法だ。GyaOが従来のストリーミングやダウンロードであるのに対してJoostはPtoPに挑戦している。PtoPをこのように本格的なコンテンツ配信の手段に使う例は初めてだろう。Skypeを成功させたNiklas ZennstromとJanus Friisの2人が始めたということで注目が集まっているわけだ。
先日、BitTorrent日本代表の脇山社長とお会いする機会があり、PtoPによるコンテンツ配信の可能性についてお話を聞くことができたが、適正な技術を適正に運用することにより、PtoPがコンテンツ配信のメインストリームになる日も近いように感じられた。
DRMの抱えている課題もよく似ているように思える。P2Pはコンテンツオーナーから、DRMはユーザーから問題視されたり嫌われたりする場合があるが、それぞれコンテンツビジネスにとって重要な技術であり、適正なものを適正に運用することが求められている。DRMのビジネスでいろいろな方とお話していると、DRMに対するニーズはとても多様性に富んでいることに驚かされる。非常に固い保護から軽い保護までコンテンツの内容やビジネスモデルによってDRMに対する期待は違ってくる。
また、保護というよりはTrackingと呼ばれる、コンテンツの利用をウオッチする機能に主眼が置かれる場合もある。そういった意味ではDRM(Digital Rights Management)というよりはCLM(Content Lifecycle Management)と呼んだ方が適切かも知れない。
最後に、動画系のDRMで代表的なものをいくつか挙げておく。STBやテレビを対象としたものでは米国のSecureMediaやVerimatrixと日本のソニーが主導しているMarlin、PC系ではコンテンツフォーマットオーナ系でMicrosoftのWindowsMedia DRM、AdobeのFlash Media Rights Management Server、オープン系ではアイドックのKeyringFLASHなどがある。
また、STB系では異なるDRMの互換性運用を提案しているCoral Consortiumがあるが、あまり機能していない。AdobeのFlash対MicrosftのSilverLightといったフォーマット競争も絡んでいる。いずれにしても、市場が望んでいるものは、シンプルで柔軟性に富み、オープンでユーザーに意識させない標準的(De facto)なDRMであろう。
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