市販の受信機で会話を傍受できる、アナログ式コードレス電話機の子機が、市役所など一部の公共機関で漫然と使われていたことが分かった。専門家は「市民の個人情報が漏れる恐れがある」と警告。総務省も全国の自治体に対策を講じるよう通達を出したが、徹底されるかは未知数だ。
埼玉県深谷市で4月、市の施設内で計68台のアナログ式コードレス電話機が使われていることが発覚。「庁舎の外で受信機を試してみたら、子機の会話がはっきりと聞こえた。驚いた。傍受の危険を知らずに使っていた」(危機管理課)
戸籍情報を扱う市民課では、職員が自分の机を離れて専用端末を操作しながら電話で応対するため、日常的に子機を使っていた。深谷市は既に電話機をデジタル式に切り替え、さらに「個人情報を含む会話は親機を使うように」と指示した。
千葉県佐倉市でもアナログ式コードレス電話機約50台をデジタル式に切り替える方針を決めた。さらに情報保全を強化するため、盗聴対策の専門家「情報安全管理士」を養成している特定非営利活動法人(NPO法人)「日本情報安全管理協会」に職員2人を派遣し、盗聴探査の実技研修を受けさせた。機材も購入し、職員自らが日常的に盗聴されていないかどうか調べる予定だ。
同協会の佐藤健次事務局長は「市民の家族構成などの個人情報が、振り込め詐欺などの犯罪に悪用される恐れがある」と指摘。傍受を防ぐには(1)電話機をデジタル式に交換する(2)個人情報を扱う会話には、深谷市と同様に子機ではなく親機を使う−などの方法がある。
深谷市のケースが発覚後、総務省は全国の自治体に「アナログ式コードレス電話機の使用状況を確認するとともに、使用している場合は適切な対策を講じるように」との通達を出している。
電話機メーカー大手の「パイオニアコミュニケーションズ」(埼玉県所沢市)には、これまでに市役所や学校などから「今使用中の電話機は、傍受の危険があるか」との問い合わせが約300件寄せられたという。
同社は取扱説明書に「子機での通話は第三者が傍受することも考えられる」と明記しているが、知らずに使っていた公共機関がほとんどのようだ。同社の広報担当者は「デジタル式なら傍受の危険は低くなるが、百パーセント安全とは言い切れない。重要な個人情報を扱う際は、親機を使ってほしい」と話している。
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