logo

知られざるアルジャジーラの真実の姿--ネット事業担当者が明らかに

永井美智子(編集部)2008年07月31日 21時19分
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

  イラク戦争での戦禍の様子や、オサマ・ビンラディン容疑者のメッセージ映像などを放映し、日本でも有名になった中東の衛星放送局「アルジャジーラ(AlJazeera)」。テレビ放送だけでなくインターネット上での情報配信にも積極的で、アラビア語のほか英語でもニュースを配信している。

 アルジャジーラはどのような考えのもとで、オンラインビジネスに参入しているのだろうか。札幌で開催されている著作権に関するイベント「iSummit 2008, Sapporo」において、AlJazeera Networkニューメディア長のMohamed Nanabhay氏が、同社のオンライン戦略を紹介した。

Mohamed Nanabhay氏 AlJazeera Networkニューメディア長のMohamed Nanabhay氏

 アルジャジーラはカタールのドーハに本社を置き、世界62カ所に拠点を持つ。従業員は約3000名で、ニュース放送のほかスポーツチャンネルなども保有している。

 Nanabhay氏は、放送局が抱える課題をいくつか指摘した。まず、インターネットの登場により「これまでの視聴者を失っている」(Nanabhay氏)。視聴者はもはや、ただテレビの前に座っている存在ではない。いろいろな手段を使って積極的に情報を取得しようとしているのだ。

 また、視聴者自身がクリエイターでもある。ビデオカメラが普及し、誰でもオンラインで自分の撮影した映像を公開できる時代だ。そして放送局が望むと望まないとに関わらず、世の中はオンライン化の方向に進んでいる。

 にもかかわらず、オンラインでのビジネスモデルは定まっていない。どうやって儲けるかという方法を、手探りで見つけていかなくてはならない。広告収入のみでビジネスを継続していけるのかも分からない。そして最後の課題として、「どんな業界でも変化への抵抗がある」(Nanabhay氏)

 ではこういった問題に対し、アルジャジーラはどのように対応しているのだろうか。Nanabhay氏はまず何よりも聴衆の信頼を得るために、組織の評判を高めることに務めた。「困難な環境であっても報道する、改革のパイオニアという評判を得た」(Nanabhay氏)

 配信方法については、テレビだけでなくインターネットに進出し、米国版を開設した。ほかの地域への進出も検討しているといい、米CNNや英BBCに対抗する、世界的なニュースメディアとしての地位を狙っている。

 財政面については、ネットからの広告収入と、ほかの放送局からのライセンス収入が主な柱だ。ユーザーへの課金については考えていないという。

 視聴者など一般の人でも動画を撮影、公開できる現状については、「(アルジャジーラのサイトなどに参加することで)クリエイターがメリットを得られるようにしていきたい」と話す。具体的な方法については触れなかったが、「視聴者を犯罪者として扱うのではなく、敬意を払う」(Nanabhay氏)とし、共栄を図っていく考えを示した。

 またNanabhay氏はアルジャジーラの経験を元に学んだこととして、「小さく初めて、とにかく前例を積み重ねるべき」と語る。他社とのライセンス交渉時に、あらゆる場面を想定したライセンスを用意して臨んだもののうまくいかなかったと話し、「まずは小さく始めることだ。全部がだめになるわけではないし、仮にうまくいけば、それが1つの前例になる。それを積み重ねていくことが大切だ」とした。

 また、新たな視聴者を獲得するために、YouTubeで積極的に映像を配信していると紹介。英語で公開することで、アラビア語では見てもらえなかった、「アルジャジーラをそれまで見たことがなかったという人たちに、自分たちのことを紹介できた」(Nanabhay氏)。たとえば、同社の女性スタッフがアルジャジーラの映像について語った動画は、これまでに170万再生されたとのことだ。

 Nanabhay氏は組織として「ユニークな価値を提供すること」が重要だと語る。アルジャジーラの場合、その価値とは「地理的、社会的、文化的に『南』の人たちの声なき声を伝えること」にあるという。

 紛争地域の出来事も扱うため、記者が闘争などに巻き込まれ、命を落とすケースは少なくない。しかしNanabhay氏は、「真実を語ることがジャーナリストの仕事だ。真実を伝えることは困難だが、それを伝えないということはもっと難しい」と、社会的使命を強調した。

アルジャジーラ 「真実を伝えることは困難だが、それを伝えないということはもっと難しい」との言葉。背景の写真はアルジャジーラの記者が撮影したもので、この記者は取材を通じて命を落としたという。取材活動は危険と背中合わせだ

-PR-企画特集