ソフトバンクは6月4日、米Appleの携帯電話「iPhone」を2008年中に日本国内で発売すると発表した(日本での発売日は7月11日)。
翌日6月5日の東京株式市場で、ソフトバンク株は寄り付きから大量の買い物を集めて買い気配ではじまり、一時前日比125円高の1991円まで買い進まれる大幅高(終値は前日比53円高の1919円)となった。しかし、翌日は早くも反落し、前日比22円安の1897円となった。株式市場は、ソフトバンクの新たな戦略の行方をどう判断しているのか。
iPhoneの日本国内での販売を巡ってソフトバンクとNTTドコモが、米アップルとの販売契約を競い合っていることは広く知られていたが、ソフトバンクが先行して販売権を獲得したことは、株式市場関係者にも一定のポジティブサプライズを与えたようだ。通信関連企業を担当するアナリストは「販売に関する契約の詳細がほとんど明らかにされていないこともあり、ソフトバンクの業績への寄与は不明な部分も多いが、話題提供、宣伝効果、さらに課題となっているデータ通信のARPU(加入者1人当たり月間売上高)の向上は見込めるのではないか」としている。
iPhoneは、携帯音楽プレーヤー「iPod」と携帯電話の機能を融合したタッチパネル方式の携帯端末で、すでに欧米で約550万台の販売実績を持つ。今回日本で販売されるのは、日本ですでに主流となっている3G(第3世代)携帯電話の速度に対応した新商品となりそうだ。ソフトバンクはこれまでにも、独自の料金割引システムを導入するなどして携帯電話契約の純増数拡大を維持してきた。こうしたPR戦略の意味も含めたシェア拡大効果が期待できそうだ。
ソフトバンクがこれまでテレビ、インターネットで積極的な広告宣伝を行ってきたこともあり、テレビ局、ネットサイトの報道ぶりはかなり大きなものとなった。さらに、これまでiPodの保有者が、これをきっかけに他のキャリアからソフトバンクに乗り換えるなどの動きが加速する可能性もある。
しかし、短期間にiPhoneの販売が業績向上につながるかは不透明な部分も多い。アップルは、これまで米国のAT&Tなど各国の最大手の携帯電話キャリアと契約を結んできており、国内3位のソフトバンクが独占販売することになれば、世界初のケースとなる。NTTドコモでは「アップルとの交渉を打ち切ったわけではない」(IR担当)としており、今後もNTTドコモからiPhoneが発売される可能性もある。すでに、イタリアでは2社と販売契約を結んでいる。
また、アップルは各国でiPhone利用者が支払う料金の一定割合(30%程度と推定される)を徴収する契約を結んでいるとされており、携帯電話キャリアの利益はかなり限られているとの指摘もある。
ゴールドマンサックス証券では、欧州でiPhoneを発売した携帯電話キャリア各社の発表1カ月間の株価(欧州の通信インデックスで除した相対株価)の推移は、マイナス5%〜プラス11%のパフォーマンスと、必ずしもiPhoneの発売で株価が上昇していないことを指摘している。
ソフトバンクの株価は、全体相場(日経平均株価)が3月17日の大底を打って反転上昇軌道入りを鮮明にしている中にあって、反発の度合いが小幅に止まっており、出遅れの状態となっている。したがって、4月高値の2100円台までは比較的短期間に戻す可能性はあるものの、「iPhoneの発売」という収益に対する明確な寄与が判断し難い材料だけではここから一段の株価上昇には時間がかかりそうだ。株価チャート面では上昇を示唆しているものの、信用取引の買い残(将来の売り圧迫要因)が膨らんでいることもあり、短期間での一本調子での株価の上昇は見込めそうもない。
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