体の一部の特徴から個人を特定する生体認証のひとつである「顔認識技術」をマーケティングや広告宣伝に活用する動きが広がっている。本来はセキュリティーシステムに使われる技術だが、商業施設内などの広告に取り付けたカメラで、前で立ち止まって広告を見た人の性別や年齢を識別しデータ化。効果的な売り場のレイアウトや広告宣伝に生かす仕組み。IT(情報技術)各社が相次いでシステムを開発し、売り込んでいる。
NECは昨年、広告に取り付けたカメラで顔認識技術で性別や年齢を識別しデータ化するシステムの販売を始めた。
システムを導入した商業施設は「何歳くらいの男性あるいは女性がいつどこの広告をどれくらいの時間見たか」などを把握。このデータを基に、ターゲットの客層が多い場所に商品を配置するなど売り場をレイアウトできる。
さらに同社は客層データと電子広告モニターを連動させるシステムを今年度中に開発し商品化する予定だ。
新システムでは、データに基づき、「若い男性が多い場所」や「高齢者が多い時間帯」などを特定。モニターに時間帯や場所に応じた広告を配信するもので、「広告主はターゲットを絞った効率的な広告宣伝ができる」(NEC)という。
オムロン(京都市)と富士フイルムグループの富士フイルムイメージテックも、客層データと広告モニターを連動させるシステムの販売を始める。
今年夏に発売するオムロンのシステムは既存の監視カメラやモニターに客層を分析するシステムを追加するだけで済み、追加費用は数百万円程度という低コストが特徴だ。
ソーシアルセンサ事業統括部の久保文彦事業統括部長は、「新しい認識システムで、2010年度に100億円の売り上げを目指す」と意気込む。
富士フイルムイメージテックのシステムは、オプションでタッチパネル機能を追加し、電子広告に触れると商品の詳しい情報を提供できるようにする。
新たな用途拡大で成長が期待される顔認識システムだが、課題も多い。NECでは「消費者に加え、ユーザーの商業施設や広告代理店でもピンとくる人はまだ多くない。カメラをさらに小型化しないと消費者が緊張してしまう」と指摘する。個人情報管理の問題もあり、各社では認知度アップと普及促進に力を入れる考えだ。(金谷かおり)
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【用語解説】顔認識
カメラの映像から人の顔を認識するシステム。目や口の凹凸、明暗差などの特徴から事前に登録した人物かどうかを特定することができる。最近は顔の骨格やしわ、たるみなどを解析することで、年齢や性別など、人の属性も推定できるようになった。
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