◆リサーチ市場の現状
前章ではネットリサーチの特徴がリサーチの敷居を下げ、リサーチが身近なものとなったとお伝えしましましたが、身近な存在となったネットリサーチの市場規模はどうなっているのでしょうか。
日本マーケティング・リサーチ協会(JMRA)が発表したデータによると、2006年におけるネット調査の売上高は280億円となり、前年比16%の成長率となっています。リサーチ事業全体の伸張率が前年比5%であることを考えると、いかにネットリサーチが拡大しているかが伺えます。 また、国内市場調査(アドホック調査)手法別の売上構成比をみても、ネット調査は2003年の14.1%から2006年には29.1%と全体の約3割を占めるまでに成長しています。
◆覚えておきたい4つのポイント〜リサーチを失敗させない為に〜
納期が短縮され、調査費用が安くなったとは言え、調査を失敗したいと思っている人は決していないはず。私自身ももちろんそうです。ただし、悲しい事に必ずしもリサーチが全ての問題を明らかにし、課題を解決してくれるとは限りません。
失敗しないリサーチの為にいくつかの注意点をご紹介します。
?目的の明確化
ニ―ズ探索調査なのか、商品コンセプト評価なのか、それともターゲットを決めるための調査なのかを明確にする必要があります。 ※複数の調査目的が必ずしも共存できないわけではありませんが、最も重要な目的を設定する事が大事です。
?自社/自社商品の立ち位置を把握する
マーケットとは非常に難しいもので、消費者のニーズを掴んだら必ず成功するというものでもありません。 そこには競合という存在が立ちはだかります。 自社はリーディングカンパニーなのか、それとも2番手なのかによっても調査内容は大きく異なります。
?まずはデータ収集。そして分析。
情報化社会となった現代、世の中には情報があふれています。 その為、まずは既存のデータ(2次データ)をできる限り集め、その調査が本当に必要かどうかを見極めめる必要があります。そして、もし必要であると判断すれば、事前に集めたその2次データの分析を行います。 もし、そこから課題や仮説を見つけることができればリサーチの成功率は飛躍的に向上するでしょう。
また、自社と競合のサービスを比較する際は、自社と競合のサービス比較を徹底的に行います。 こうすることで、どこに注力して競合比較をするべきかが明確になり、結果としてアウトプットも有益なものとなります。
?適切なサンプル数の確保
サンプル数は多いに越した事はないのは知っている。けれども予算が。。。 多くの方が悩まれる問題です。
統計学上では、母集団比率(※1)が50$で5000サンプルの調査を行った場合、調査結果の誤差率は±1.4%と言われています。
この調査を100サンプルで行おうと思うと、誤差率は一気に上がり±9.8%となってしまいます。
つまり、回答率が50%であった結果は40%とも60%とも考えられるのです(※2)。
[参考文献:「マーケティングリサーチの論理と技法」(上田拓治/日本法論社/2004年)]
これは誰が見てもリスクのあるリサーチと言えるのではないでしょうか。
調査サンプル数は調査条件によりさまざまですが、一般的には400〜500サンプルで調査を行うケースが多いように思います。
(※1)個々のカテゴリが母集団で占めるであろう割合の意。標本比率とほぼ同義で使われる。
(※2)信頼係数95%で計算。
以上、私自身の経験を踏まえて述べてみました。 私自身もそうですが、調査設計を進めていく過程で全体像を見失い 調査すること自体に固執してしまう事があります。
失敗から学ぶことはたくさんあります。むしろ、失敗から学んだ事は成功から学ぶことよりも重要だったりします。 しかし、有限な時間をお金を無駄にしない為にも、上記4つのつぼを押さえつつ、 リサーチ結果をどう使うのかという点を強く意識してみてはいかがでしょうか。
小山田瑞斉(セプテーニ)
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