パイオニアは3月7日、同社の主力商品であるプラズマディスプレイパネル(PDP)の生産から撤退することを発表した。PDP生産からの撤退に対する今後の収益への影響について市場関係者の評価は前向きなものも見受けられ、中期的には株価も上昇軌道に乗ることが期待できそうだ。
PDPからの撤退を決めた背景について同社は、「今後想定される販売数量でコスト競争力を維持することは難しいと判断し、次期新製品に搭載するパネル以降、外部からの調達に切り替える」としている。
PDP生産から撤退するために、今3月期に生産設備の除却や廃棄など190億円の減損処理を実施、今期の連結最終損益(米国会計基準)は従来予想の60億円の黒字から、一転して150億円の赤字に転落する見通し。
また、今期末の配当を前期末の5円に比べて2.5円減配して2.5円(年間配当は10円から7.5円へ)と下方修正した。PDP事業からの撤退に伴って従業員をほかの事業に振り向けるなどして、2010年3月期にはホームエレクトロニクス事業の黒字化を目指すとしている。
PDP生産からの撤退に伴って今期は一時的に大幅な業績の減額修正、大幅赤字となるものの、証券会社系調査機関の多くは、中期的には業績の回復をにらんでプラスの評価をしている。
例えばモルガンスタンレー証券では11日付のリポートで、パイオニアの今後の株価について、投資判断を「オーバーウエイト(弱気)」から「イコールウエイト(中立)」へ引き上げ、目標株価も従来の1000円から1200円(先週末14日終値1019円)へ上方修正した。同リポートでは「2009年度に向けての収益改善が明確になった。一方、生産撤退に伴う構造改革費用は2008年度にも計上されることを会社は示唆しているためだ。目標株価算定は2008年度のBPS(1株純資産)1400円から約15%のディスカウントに相当する」としている。
さらに、市場関係者のあいだでは、今回PDP生産から撤退することに伴い、今後の主力事業となるカーナビゲーションシステムなどのカーエレクトロニクス事業に集中的に投資できることもあり、この事業の拡大、採算向上への期待が話題となっている。カーナビ市場は、欧州やBRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)などの新興諸国では本格普及はまだこれからの時期にあり、パイオニアの生産する高品質製品の需要増が期待されている。
同社の株価は2007年6月11日に、昨年来高値の1837円をつけて以降長期間下落トレンドを強いられ、2008年1月23日に722円で昨年来安値をつけた。その後上昇トレンドに転じ、2月半ばからは1000〜1200円のボックス相場を持続してきた。今回のPDP生産からの撤退を機に、これまでのボックス圏を上放れて1500円を目指した展開に期待が寄せられている。
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