目指すはメディア企業、広告ベースMVNOのBlyk

 TVやインターネットなどの無料メディアのように、携帯電話も広告により無料にしてしまおう--英国で昨年9月にBlykがローンチした。今年後半にはオランダにも進出する計画だ。広告は現在、モバイル業界の注目トピックスの1つ。今回は先駆者的存在のBlykについて紹介する。

 Blykは広告モデルをとる初のMVNO。加入者を16〜24歳に限定し、広告(毎日6通程度)と引き換えに毎月SMS217通、通話42分を無料で利用できる。これを上回ると有料となる。

 ユーザーは契約時、約50の質問に答える。この情報を基に絞りこんだ広告が、SMSやMMSの形で配信されるという仕組みだ。16〜24歳というのはなかなかリーチできないユーザー層らしく、「この層だけを加入対象とすることで広告主に明確なメリットを提供できる」というのが売りだ。サービス開始から約4カ月後の今年1月にBlykが明らかにした数字を見ると、広告はL'Orealなど50以上の企業と契約しており、500以上のキャンペーンを展開したという。ユーザーは19歳が最も多く、男女の比率はほぼ半々、半分以上が大学生という。初年度、加入者数10万人獲得を目標としているが、これを上回るペースで増えているという。

 これまでのところ、広告媒体としてはなかなかよいようだ。Blykによると、これまでの平均クリックスルーレートはなんと平均29%。キャンペーンの中には50%以上のクリックスルーレートを記録したものもあったという。メディア企業を標榜しているだけのことはある。

 BlykはNokiaの社長をつとめたPekka Ala-Pietila氏が立ち上げたベンチャー企業で、マーケティングも巧みだ。ローンチ前に「広告」「若者」「無料」といったキーワードのみを公開し、十分報道陣の関心をひきつけた。その後も、英国の新聞のオンライン事業を統括していた人物を引き入れるなど、テレコムというよりマーケティング要素を強化している。

 このように、滑り出しは好調といえるBlykだが、サービスはまだ開発の余地がある。Blykが狙う層が携帯電話で利用しそうなインターネットへの対応が十分ではない。先日「Blyk Music」として、提携したアーティストの情報を入手できる新サービスを開始したが、コミュニティ要素はもっと強化できそうだ。広告フォーマットにしても、現在はほとんどがMMSの形をとるというが、モバイルに適したフォーマットが何かはまだ模索の段階。実際、メッセージ機能をオフにして広告配信を拒否するという回避手法をとるユーザーがいるようだ。

 携帯電話にとって広告は、実は新しいようで古いテーマだ。フランスでは、あるオペレータが音声による広告を聴けば通話が無料というサービスをずいぶん前から提供しているが、ためしたところ広告のほとんどは自社広告だった。Blykも、ユーザーが飽きたときに現状のクリックスルーレートを維持できるかは疑問だ。

 携帯電話は個人が常に持ち歩くもので、世界に散らばるその数を考えると市場は膨大といえる。英Vodafone、仏Orangeなど既存オペレータはどこも広告を強化分野としているし、米Yahoo、米Googleなどはインターネットで確立した広告モデルをモバイルに持ち込もうとしている。競争は激しくなりそうだ。

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