ソフトバンク代表取締役社長の孫正義氏は2月13日(現地時間)、スペインで開催中の携帯電話関連の国際展示会「The Mobile World Congress 2008」にて基調講演を行い、携帯電話が「インターネットマシン」になるという持論を展開するとともに、先端事例としての日本市場の状況と、その中で競争する苦労を語った。
世界的に見ると、携帯電話市場は第2世代携帯電話(2G)から第3世代(3G)への移行期にある。しかし孫氏は講演の冒頭で「私は3Gには興味がない。3Gでは遅すぎる。3.5GのHSDPA以上になってはじめて携帯電話でインターネットが“使える”」と指摘。日本ではようやくこの環境が整ったとした。
日本がモバイルインターネットの先進市場だという根拠として孫氏が挙げたのは、ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)国内最大手であるmixiのアクセス状況と、着メロや着うたの市場規模だ。
mixiについては、2007年8月に携帯電話からのアクセスがPCからを上回ったことを紹介。インターネットアクセスの主流は携帯電話に移っているとした。
また、日本では着メロ等の携帯電話向け音楽配信がPC向けよりもはるかに多いというデータを示した。日本レコード協会の調査によれば、2007年7月から9月までの有料音楽ダウンロード回数は、携帯電話からが1億1347万回であるのに対してPCからはわずか813万回。「日本ではiTunesなどを使わずに、携帯電話で音楽をダウンロードするのが一般的だ」とした。
こういった状況で、孫氏が気にかけているのは、この市場に参入しつつある大手インターネット企業の存在だ。「Microsoftという小さい会社があった。20年以上昔の話だが。当時、Microsoftは子犬のようなもので、Hewlett-PackardやIBMから『かわいいね』といわれるような存在だった。それが急激に成長し、いまや巨人となった。携帯電話会社は同じ過ちをしてはいけない」
では、携帯電話会社は何をするべきなのか。孫氏はインテグレーション(統合)が鍵だと話す。「システムやコンテンツなどを統合し、優れたユーザーインターフェースを提供する必要がある。料金や速度で競争していては、自らを(ネットワークの)土管にしてしまう」
ただし、単純にユーザーが求めるサービスを提供すればいいというわけでもない。自らADSL事業も手がけた経験から、「固定通信の場合は通信容量は無限に近いが、携帯電話の場合は周波数が限られており、しかも国の免許が必要になる。ユーザーが一斉に携帯電話からYouTubeを見たら、周波数は足りなくなる。コンテンツプロバイダーと協議し、うまく調整することが重要だ」 とした。
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