好調な業績を背景に今年1月17日に東証一部への上場を果たしたソネットエンタテインメント。ISPとポータルの両ビジネスを主軸に事業を展開する同社は、ベンチャー企業とのアライアンスも積極的に行っている。
「まだ規模が小さく、アーリーステージの会社に投資することが多いですね。投資の基準は、投資に必然性があるかどうか。我々は、上場企業として、コンプライアンスを遵守し、株主にも納得していただかなくてはいけません。もちろんリターンがないと投資は続けられませんが、そのためには本業も含めて投資先と協業関係をつくり、お互いにWin-Winの価値を築いていくことが理想的です」(同社投資部門担当の十時裕樹取締役)
同社の投資先としては、すでにDeNAやソネット・エムスリーが上場を果たしてきた。また、エニグモ、マスチューンといった今後成長が期待されるベンチャー企業にも以前から出資をしている。出資先の希望に応じて、資金面のみならずコンテンツ支援、顧客や人材の紹介など人的支援も惜しまない。ベンチャーにとっては東証一部企業との提携という無形のメリットも大きい。ではどのように投資先を選定しているのだろうか?
十時氏は、まず経営者の人となりを見るという。「ビジネスモデルや事業プランは、環境に応じて変わっていくものです。起業当初に描いた絵でそのまま成功できるケースは非常にまれです。環境変化が起こったときにうまく適応し、ビジネスモデルを修正していく柔軟性があるかどうかが一番大事な資質ですね。また小さな成功で経営意欲を失ってしまうと、ろくなことはありません。それで駄目になってしまう経営者もたくさんいます。その点、DeNAの南場智子社長、ソネット・エムスリーの谷村格社長などは、東証一部企業となった今でもまったく経営意欲を失わずに経営に携わっておられて、素晴らしいと思います。そういう優れた人物が経営する企業なら、きっと成功するはずです」
こう語る十時氏の言葉には非常に説得力がある。というのも、十時氏は、まったくの異業種参入として話題になったソニー銀行立ち上げの中心人物なのである。そのため、起業の苦しさは骨身にしみて感じているという。
「ベンチャー経営者は、特定のステイクホルダーのために働いているのではなく自己実現のために起業しているわけです。そこを理解した上で、協力していきたい。また、起業当初は、事業以外に集中力を割かれるとうまくいかないものです。例えば、資金集めをしていると働いている気になりますが、事業を大きくする手助けにはまったくなりません。我々としては、事業に集中できる環境を整えてあげることが大切だと考えています」
日本のIT市場がシュリンクしているとも言われる昨今。もちろん同社の投資事業も難しい舵取りを迫られていることに間違いはない。「だが」と十時氏は言う。
「投資は、安定的に続けることが大切です。ブームだから投資額や投資先を増やす、ブームが去ったから絞るというのではなく、スタンスを変えないで続けていくべきです。市場の好況不況にかかわらず、次代を担うベンチャーは一定の確率で誕生し続けているわけですから」
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