アッカ・ネットワークスがサプライズ続きの展開となっている。
同社の株価は2007年12月18日に大量の売り注文を浴びて急落。その後も新興市場の軟調地合いに押される格好で下値模索が継続している。2008年1月16日には12万7000円まで売り込まれた。
アッカ・ネットワークスはADSLサービスの大手。個人向けが主力で、足元は光回線への乗り換えによる単価向上、企業向けサービスの拡大に力を入れ、株式市場では堅実な収益を続ける企業として認識されていた。
2006年、次世代無線通信の本命と言われていた「WiMAX」への参入を表明。ADSL市場には成熟感が強まっており、アッカ・ネットワークスは「WiMAX」への参入で新たな成長ドライブを手に入れる考えだった。
アッカ・ネットワークスは総務省が交付する免許の取得に向け、実験を進めてきた。資本関係もあるエヌ・ティ・ティグループと提携するなど、免許取得に向けた準備は磐石。その他のライバルも強力な陣営を形成していたが、株式市場ではアッカ・ネットワークスとエヌ・ティ・ティ・ドコモの陣営を本命と見てきた。
2007年12月7日には投資会社イグナシオ・ジャパンを割当先とした資金調達を発表。「WiMAX」参入を前提とした財務基盤強化が目的で、この新株予約権付社債により100億円超を調達する予定だった。この資金調達の発表もアッカ・ネットワークスの免許取得に向けた自信の表れとみられていた。
ところが12月18日、これまでの流れが一転する。
総務省はKDDI、ウィルコムの2陣営に次世代無線通信の免許を交付する方針と報じられた。同日のアッカ・ネットワークス株は大量の失望売りを浴びて一時ストップ安。21日には総務省から正式にKDDI、ウィルコム両陣営への免許交付が発表された。
アッカ・ネットワークスは同21日、「WiMAX」参入を前提としていた資金調達の中止を発表。これまで約2年をかけて準備をしてきた、社運を賭けた新事業への参入が絶たれ、中長期的な成長計画に不透明感が強まった。
株価はその後、下値模索の展開が継続。株式市場全般の急落もあって1カ月間で約半分まで売り込まれた。この嵐のような下げ相場の中で、アッカ・ネットワークス株は予想外の新展開を迎える。
同業のイー・アクセスがアッカ・ネットワークス株を買い増し、議決権ベースで保有比率を11.69%から12.68%に引き上げたのだ。16日、イー・アクセスは、ここまでのアッカ・ネットワークス株の下落について、経営陣の責任を指摘。経営陣刷新などの株主提案を行うと発表した。
イー・アクセスは2005年、アッカ・ネットワークス株の約10%を取得。当時は株式取得の目的を「純投資」としていた。株式市場では当時から「追加取得などでM&A(企業の合併、買収)に進むのでは」との観測が強かったが、その予想に反してイー・アクセスは沈黙を貫き、株式を継続して取得し続けていた。
アッカ・ネットワークスは「WiMAX」への参入失敗を受け、経営方針を転換。MVNO(仮想移動体通信事業者)として、通信設備を借り受けてサービスを展開するとしている。
アッカ・ネットワークス株はイー・アクセスの株式追加取得を受けて急反発。イー・アクセスからの株主提案は今後、委任状争奪戦に進む可能性が強まっており、買収へ発展する可能性も浮上している。
アッカ・ネットワークスを取り巻く環境は二転三転。今後も株式市場の注目を集めそうだ。
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