解体された情報通信部--韓国のITはいずこへ

 2007年12月中旬、新たな大統領が選出されたのとともに、「大統領職引継委員会」(以下、引継委)が組織され、2008年2月から始動する新政権に向けて準備を進めている。

 その中で進められている事柄の1つが、政府関連組織の統廃合。これは時代の流れに合った組織で効率的な業務を行えることなどを目的に、現在18部ある「執行部」と言われる政府組織を13に統廃合するなどして、スリム化を図るというものだ。そして統廃合の対象には、これまで情報通信分野を担当してきた政府機関の「情報通信部」が入っている。

 引継委が16日に発表したところによると、まず情報通信部は、一部の機能が「知識経済部」に移管される。これは情報通信部のIT産業政策、産業資源部の産業・エナジー政策、科学技術部の産業技術R&D政策といった機能が統合された機能を持つ組織だ。

 また今もっとも重要な政策の1つである放送と通信の融合に関しては、「放送通信委員会」を新設した。現在、放送に関する法律や規制などを管理している放送委員会による放送政策や規制、および情報通信部による通信サービス政策、規制といった機能を統合したものだ。

 次に電子政府政策や情報保護機能は「行政安全部」に移管することとなった。ここは現在の中央人事委員会行政自治部などが統合された組織で、人事政策や地方行政、安全政策などを担当する。ただし情報保護産業に関する政策は、知識経済部が行うことになっている。

 デジタルコンテンツ政策は、文化部に移行される。これはデジタルコンテンツに関する政策業務を行っている文化観光部の機能と合わさった組織だ。

 こうした組織改変については、それぞれの立場からの様々な声がある。中でも放送通信融合委員会が新設されることに関しては「IPTV事業の大きな発展が見込める」と期待感を示す見方が多い。しかしこれまで情報通信部が成し遂げてきた実績や、今後もITは国家戦略として不可欠という見方から反対する声も割合多い。

 情報通信部は1884年に郵便局から出発し、1994年から現在の体制になって運営されてきた。これまでに韓国のIT発展戦略である「IT839」を策定し、これに沿った技術開発を進めてきたのをはじめ、ブロードバンドの普及、WiBroの開発と商用サービス、国際標準化などを行ってきており、いろいろな面で今の韓国を作ってきた存在だといえる。

 ところが情報通信分野自体が、コンピュータや通信に限らないあらゆる分野と融合する傾向にある昨今、同部の担当領域も広がり、ついには産業資源部との摩擦を生み出すこともあった。

 その代表例がロボットだ。韓国では今後のロボット時代に対応する「知能型ロボット開発および普及促進法(ロボット特別法)」を2008年に制定することを目指し、2007年から継続した話し合いが行われてきた。この話し合いを取りまとめているのは産業資源部だが、ここで情報通信部はネットワークロボットに関する規定などを盛り込んだ案を主張。それぞれの立場からさまざまな主張が出て、折り合いがつかなかったのだ。

 実は情報通信部が統廃合されるという噂は、正式発表前から既に広く知れ渡っていた。当然なら情報通信部は、これに反対した。情報通信部は「オーストラリアや日本など、他国でもIT関連政府機能を一元化する方向で組織改変を推進しており、韓国がその最初のモデルケースになった」「最近は放送と通信の融合という命題があり、これを発展させるためにすべきことがあまりに多い」「それなのにIT関連政府組織を改変するというのは、時代の流れと正反対であり大変当惑している」と主張を表明している。

 情報通信部が進めるITと他分野との融合をめぐり、情報通信関連組織の重要さが高まる一方で、業務が重なる部分が出てきたので、再編の必要が生じたというのは、当の事業を進めてきた情報通信部にとって皮肉な結果である。しかし既に決定してしまったことの撤回は難しい。新体制で効率的な業務ができるかどうか、2月以降の動きを見守っていきたい。

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