USEN株価急落、“動画コンテンツ改革者”の復活はあるのか

 USENの株価が急落している。

本業以外の要因で減収減益

 同社は1月10日、取引終了後に今8月期の第1四半期(2007年9〜11月)決算を発表。連結売上高は前年同期比21.8%減の672億300万円、経常損益は15億5900万円の赤字(前年同期は18億4700万円の黒字)となった。

 この減収減益は本業以外の理由が大きい。

 まず、光ファイバー・インターネット接続サービスのUCOM(非上場)を連結対象から除外したことに加え、ジャスダックに上場する人事派遣・紹介の連結子会社インテリジェンスが決算期を変更したことによって寄与期間が低下(5カ月から3カ月)。売り上げと利益が目減りした。

 また、カラオケ機器販売のBMBを完全子会社化したことによるのれん代償却負担や、リファイナンス組成費用なども計上している。映画配給子会社会社「GAGA」が3月に大作の公開を控えていることによる、季節的な要因も影響した。

 最終損益は55億2000万円の赤字と、前年同期12億2100万円の黒字から急悪化。上記の経常利益悪化要因に加え、保有する株式の評価損も計上した。

「流れを読み違えた」

 今回の経常赤字転落要因は事前から予想されていた要因であり、一時的なものがほとんど。本業ベースでは、ほぼ会社側が期初に立てた計画に沿った内容だった。俗に株式市場は「半年以上先を見て動く」と言われており、USENの決算は好意的に捉えられてもおかしくはない内容だった。

 しかし、株価は11日の株式市場で大量の売り注文を浴び、値幅制限いっぱいとなるストップ安(前日終値比100円安の778円)をつけた。なぜ、株価はそこまで売り込まれてしまったのか。

 11日の株式市場では、USENと同じ大証ヘラクレス市場に上場する不動産ファンドのアセット・マネジャーズの大幅下方修正を受けて新興不動産関連株が軒並み安に売り込まれた。新興市場が全般的にヘラクレス市場を震源地とした“アセット・ショック”に見舞われていた面もあるが、市場はUSENがこれまで経営資源を集中させてきた無料ブロードバンド放送サービス「GyaO」の事業拡大ペースの遅れを失望している。

 「GyaO」は2005年4月の事業スタート以降、インターネットコンテンツ、広告業界の改革者として注目を集めてきた。画像コンテンツから動画コンテンツへ――。現在のリッチコンテンツ主導の流れをつくったパイオニア的存在だった。

 市場関係者は数々の新事業を成功させてきたUSENの社運を賭けた大投資に、期待を込めて注目していた。USENの株価は、会員数の増加ペース、事業収益の動向が発表されるたびに大きく動いた。

 事業スタートから3年弱。、「GyaO」は依然として事業赤字を続けている。会員数の増加は続いているが、株式市場の期待を下回っている。

 一部では「GyaO」の事業頓挫を懸念する声まで出てきている。「GyaO」を追うようにサービスが開始された「ヤフー動画」が2007年末にリニューアルし、広告関係者の好評を得ていることから、「GyaO」の今後の苦戦を読む声が増えている。また「YouTube」や「ニコニコ動画」に代表される投稿型動画の社会的な大ヒットなどを背景に、「流れを読み違えた。中期的には方向転換も必要になってくる」(市場筋)との厳しい見方も出始めている。

 今期の業績は、「GAGA」が配給する「ライラの冒険」が3月に公開。その興業の成否にかかっている。「第1四半期だけで判断するのは次期尚早」(外資系証券)との声もあるが、市場の目は厳しい。ただ、競合ひしめく中で、社運をかけた大投資を断行した「GyaO」の動向が、今後の同社株価のカギを握ることに変わりはなさそうだ。

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