広告主の組織のあり方が変わる!

海老根智仁(株式会社オプト 代表取締役CEO)2007年12月17日 11時00分

 インターネットが広告主のコミュケーション戦略の中核になる時代には、広告主の組織のあり方も変わっていくと思います。私は以下のようなさまざまな考えを広告主は抱えていると思うのです。

  • 考え1:インターネットの活用を、「広告」のみと考えるのであれば、その予算は宣伝部に帰属させた方が良いのではないか。その場合、宣伝部は主に広告主のブランディングを考える部署でもあるので、ネット広告に成果追及型の利用を望むことができにくくなる。その場合、成果追求型の予算は、例えば営業関係部署が持つことになるが、そのようにしていくにせよ、この2つの部署は連携せざるを得ないだろう。
  • 考え2:商品別事業部制を採用している(事業部毎にウェブを持つ)広告主は、それぞれの事業部でネット広告を含む広告予算を持っているケースが多い。自社の広告出稿作業を比較的(相対的)に効率化しやすいマス広告と違って、ネット広告はオペレーションの効率化をしにくいがため、各組織上に二重コストが発生しやすい。また各事業部「同じことをやっている」ということは、作業が細かいネット広告こそ起こりやすくなる。よって、各事業部を統括・管理するハブになる部署の存在が一層求められる。
  • 考え3:クロスメディア的なコミュニケーション戦略を目指し、広告表現の統一化を常に考えている広告主は、インターネット広告の扱いを宣伝部管轄にしようとしているケースが多い。しかし、米国の広告主成功事例をみてもわかるように、「ネットならではの広告表現」「ネット発のメディアプランニング」も出始めている。インターネット展開の広告表現が、マスコミュケーションの広告表現になりえる時代には、広告宣伝部の機能を拡張・変更せざるを得ないだろう。
  • 考え4:インターネットの活用を、「広告」のみではないと考える広告主の組織戦略は複雑である。インターネット活用を広告と捉えれば、宣伝・販促部署が関与する、インターネット上のユーザーの声(口コミ)を気にするのであれば、商品開発部署等が関与する、インターネット上の誹謗中傷を気にするのであれば、またネットIR等を試みるのであれば、広報・IR部署が関与しなければならない。つまりインターネットが関係する領域は、部署横断的でもあるので、結局インターネットそのものを扱うハブになるような部署が必要になってくると思われる。

 本連載では、インターネット中心時代における広告主の組織の考え方例を紹介しました。ここで検討しなければならないのは、インターネットの存在が、広告主のマーケティング活動に対し横断的・中心的であればあるほど、広告主は「部署間連携」や「ハブ的部署」が必要だと思うのです。もしかしたら、「インターネットの価値は広告活動だけに寄与する」と捉え、宣伝部に帰属させるのは間違いで、「インターネット○○部」のような部署が、独立組織化し、しかもハブ的存在になる時代がくるのかもしれません。それを支援する広告代理店の役割は、将来的に一層複雑化すると思います。

海老根智仁
株式会社オプト 代表取締役CEO

大手広告代理店退職後、財団法人社会経済生産性本部において経営コンサルタントの認定を受け、その後1999年9月株式会社オプト入社。2001年1月より同社代表取締役COO。2006年1月より同社代表取締役CEO。慶應義塾大学経済学部卒、産能大学大学院経営情報学研究科(MBA課程)卒、中小企業診断士。デジタルハリウッド大学院教授(「インターネットマーケティング」担当)。「サイバーコミュニティを使った『ニーズ調査』の有効性に関する比較研究」(経営情報学会2000年、共同研究)、「インターネット広告による売上革新」(同文舘出版2006年、共著)等学会・講演活動多数。

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