業界の雄が明かす、モバイルコマースの現状と成功のための施策

 成長を続けるモバイルコマース市場。モバイルコンテンツフォーラムによると、2006年のモバイルコマース市場は5624億円で前年比38%増、その中でも物販系の成長は著しく、前年比68%増の2583億円となっている。

ビッグタウン代表取締役社長CEOの近藤勝俊氏 ビッグタウン代表取締役社長CEOの近藤勝俊氏

 12月7日に開催された「モバイルビジネスサミット2007 マーケティングエディッション」のパネルディスカッション「EC企業にとってのモバイルとは」では、そんなモバイルコマースに取り組むアマゾン ジャパンAmazonモバイル シニアマネージャーの原田卓氏、SHOPPING.JPの代表取締役社長である半澤修太郎氏がパネラーとして登場し、その現状や新規参入の際の施策や心構えなどを紹介した。なお、モデレーターはビッグタウン代表取締役社長CEOの近藤勝俊氏が担当した。

 同じモバイルコマースといっても、Amazon.co.jpは検索によって商品を探す「Pull型」のコマースが中心である一方、SHOPPING.JPはモバイルならではのデコレーションメールといったHTMLメールを活用したメールマガジンやおすすめ商品の掲載によって商品を選ぶ「Push型」のコマースが中心になっており、ユーザーへのアプローチが異なっている。近藤氏はまず、その両社について、利用ユーザーの傾向を聞いた。

アマゾン ジャパンのAmazonモバイル シニアマネージャーの原田卓氏 アマゾン ジャパンAmazonモバイル シニアマネージャーの原田卓氏

 原田氏はアマゾンのモバイル版サービス「Amazonモバイル」について、「2004年にリニューアルし、Amazon.co.jp独自の機能であるAmazonスキャンサーチを追加した。その後、「Amazonモバイル アソシエイト・プログラム」や「Amazonモバイル メール検索」など、他国のAmazonサイトに先駆けて数々の携帯電話向けサービスを導入している」と説明する。サービス開始以来Amazonモバイル経由での売上は年々成長しており、Amazon.co.jp全体の中で占める比率も増加している。日本での展開を受けてワールドワイドでもモバイルへ力を入れ始めているという。

 ユーザーの傾向については、「Amazon.co.jpでは初めての人でも気軽に買い物が行えるよう、年齢や性別等のデータは収集していない」(原田氏)と説明。それでも全体の傾向として、モバイルユーザーはパソコンユーザーよりも若年層が多く、女性の比率が大きい。また、パソコンユーザーよりモバイルユーザーの方が購入商品の平均単価が高く、購入頻度も高いという傾向がある。これは原田氏も予測していなかったことだという。

 実際に売れている商品としては、書籍やCD,DVDなどのメディア系商材が多いが、そのうち書籍の割合はパソコンユーザーよりも少なく、その分DVDやゲーム、CDなどが好調だという。そしてそのほとんどが、Amazon.co.jpの個人向け「おすすめ機能」や「検索機能」を通じて購入している

SHOPPING.JP代表取締役社長の半澤修太郎氏 SHOPPING.JP代表取締役社長の半澤修太郎氏

 一方、半澤氏は「モバイルでショッピングするユーザーは25〜29歳を中心にいわゆるF1層(20〜35歳)が多く、SHOPPING.JPでもそこをターゲットとしている」と説明する。特にファッションとビューティの商品に対する反応が良かったことから、その部分に注力し詳細にカテゴライズして販売してきた。現在は対面販売のような感覚で、モバイル向けのメールによる接客を工夫して販売しているが、今後は検索や比較機能などPull型の要素も対応していきたい」という。

 今後も増え続けることが予想されるモバイルコマースだが、モバイルコマースに新規参入したいというショップは、資本力や集客力を考えてPush型のモデルから始めるのが妥当だと近藤氏は語る。そして、その具体的な施策として、半澤氏は「モバイルでは、1週間程度で商品を入れ替えていくことが大切」と語る。

 モバイルでは物理的な画面の制限があるために、PCより一覧性や検索性が乏しくなってしまう。そのため初めてサイトに来てすぐに購入するというケースはまだ少ないと半澤氏は説明する。そこでウィンドウショッピングからお店のフライヤーを手に取ってくれるような感覚でまずはメールマガジンを購読してもらい、そこからデコレーションメールなどで丁寧に接客を行うことで、売り上げにつなげていく。今後は2Dや音だけではなく、端末の進化により3Dアニメーションと音楽などの表現手法も期待される。

 また、一般的には「集客はSEO、接客はメール」という手法がとられることが多いものの、モバイルのSEOはキャリアによっては公式サイトと一般サイトの検索結果表示ルールに違いがあるので、それぞれに合わせた対応が必要になる。ただ今後、徹底的にユーザー行動を検証していき、徐々に収束されていくのではないか、と半澤氏は言う。

 原田氏も「公式、非公式サイトにかかわらず、SEO対策はやらざるを得ない。SEO対策はリソースを割いて進める大きなプロジェクトになるが、そ れなりの効果がある」と同意を示す。また、Amazon.co.jpでもPush型のコマース手法としては、メールが中心になっているという。「Amazon.co.jpではターゲットE メールをはじめとしてメール手法がいくつかある。今後はこれを強化していくほか、ウィジェットなどメール以外の手法も、クロスメディア的な展開と合わせて 今後は可能性が出てくるだろう」(原田氏)

 モバイルならではの集客の手法について、半澤氏は(1)キャリアとのキャンペーンタイアップ(2)アフィリエイト(3)SEO・SEMの3種類の方法を紹介し た。その中でも一番効果があり一番大切だと考えているのは、やはりもっとも多くのユーザーを持つキャリアとのタイアップなのだという。また、「アフィリエイトとSEOはある程度成長が見えてきており、今後は成果報酬型SEMに期待している」(半澤氏)という。

 在庫に関する問題については、「Push型通販では、初動を読むことが重要で、特にモバイルの場合は時間単位、分単位、秒単位で、迅速に対応していかなければならない」(半澤氏)。一方で原田氏は「Amazon.co.jpでは、ユーザーの購買履歴やアクセス履歴を分析して常に適切な在庫を持てるよう、在庫管理を強化している」と説明し、在庫を保有することでの強みを語った。

 さらに原田氏は、在庫管理を強化することで「Amazon.co.jpに行けば、この商品が見つかる」という認識が定着してくる。また、たとえ在庫がない商品でも入荷 したらメールで知らせるとか、予約を受け付けることで顧客が離れることを防げる。さらにこれらの機能をシステマティックに自動化していきたいと締めくくった。

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