便利なモノにつきまとう不快さ:D・A・ノーマン氏にきく「配慮のある技術デザイン」 - (page 3)

文:Candace Lombardi 翻訳校正:吉井美有2007年12月05日 08時00分

―自動車メーカーがより多くのコンピュータ制御機器を車に装備しようとするとき、最大の問題になるのは何でしょうか。

 彼らは非常にうまくエンジンのコンピュータ化を行いました。横滑り防止装置(ASB)や安定制御はコンピュータ制御であり、非常にうまく導入されています。

 違いがあるのは、操作に関するところです。スピードが速すぎるとか車線を外れつつあるとかいうことを自動車が判断して自分で制御を始めると、問題が生じてきます。車線をキープすることはよいことだと思いますが、警告機器として使われるべきで、制御機器として使われるべきではないと思います。

 このいわゆる「知能」が失敗することは多いのですが、それが実際には「知能」ではなく推測だからです。ですからわたしは完全な自動化を支持しています。この中間的な段階が危険なのです。もしわたしが意図的に車線を外れようとしているのだったらどうするのでしょう。

―車線変更をしようとしているとか、そういうことですか?方向指示器を出さずに横に逸れるような状況があるでしょうか。

 そうは言っても、多くの人は方向指示器を出さずに車線変更しています。

―しているでしょうね。消費者は便利さのためには適応しなくてはならないということでしょうか。

 われわれが本当に欲しているのは、もし車がそれをやるのであれば、車に任せきりで人間は何もしなくてよいようにすることです。人間がやるのであれば、人間に任せて車には何もさせないことです。車の場合、反応が0.5秒遅れてしまう、訓練の足りない運転者もいます。ですから、運転を自動化したいというのも不思議ではありません。それはよいことだと思いますが、中途半端な状態はかえって危険を招きかねません。

―シグナルの不協和音と今よりも自然な警告の必要性を主張していますね。これがどういう意味か説明してもらえますか。

 わたしは今朝、トークショーに出ていたのですが、同じ質問をされて、突然完璧な例を思いつきました・・・(しばらく沈黙の後、音を立ててドアを閉める)。何が聞こえましたか?

―大きな音、ドアが閉まる音ですか?

 「ビー」という音ではなく、ドアを閉めたということが分かりましたね。これは技術者が「この場面に来たということは多分重要なことだから、シグナルを出した方がいいな。安いシグナル音はどこで手に入るだろう」というふうに決めたものではなく、明らかにドアを閉める音です。

―世の中の多くのシグナルは、どんなものとも関連がありません。

 完全に恣意的なもので、われわれはそれがどういう意味か学ばなくてはなりません。・・・ある病院で最近、わたしは医師とホールで立ち話をしていました。頭の上のスピーカーから「ビー、ビー、ビー」という音が聞こえたので、わたしは「あの音はどういう意味なのですか」と尋ねました。すると相手は「いや、誰も知らないので、無視しているんですよ」と言うのです。

―コンピュータインターフェースを扱う際には、どうすればよいのでしょうか。

 今では、AppleとMicrosoftのごみ箱に何かをドロップすると、紙を丸めてゴミ箱に落とすような音がします。他のほとんどどんなものでも、自然な表示と自然な音を備えることができるはずです。ところで、すべてが音である必要はありません。音は非常に邪魔になることもありますから。

―2020年にはハイテク住宅はどのようになっていると思いますか。

 2020年の住宅は、今建てられている家の中に造られます。ですから、多くのものがその場しのぎの組み合わせになるでしょう。

 住宅がどうなるかを話す代わりに、生活がどうなるかを話しましょう。住宅をリブートするのにかける時間が多くなるでしょう。今は問題が起きたときには大工、塗装屋、配管工、電気屋といった人たちを呼びます。このリストに、情報と技術の専門家、オートメーションの専門家、AVやテレビの専門家などが加わるでしょう。台所家電の専門家も必要になるかも知れません。

―「われわれが望みさえすれば、それは起こる」という形になるのでしょうか、それとも押しつけがましいものを抑えようという動きが進んでいくのでしょうか。

 今われわれが不満に思っているものの多くは、将来完成し、われわれが望んでいるように出しゃばらない形で静かに効率的に働くようになるでしょう。しかし、考えてみてください。2020年には、今は想像もできないものも含めて、あらゆる新しいものが登場し、われわれを喜ばせると同時に不満にさせ、大きな恩恵をもたらすと同時にいつも故障したり、わかりにくかったり、おかしな形で動作したりするでしょう。わたしのテクノロジーの定義を聞きたいですか。

―お願いします。

 テクノロジーとは何か。それは人間が作るものです。すべてがテクノロジーです。着るものもテクノロジー、あなたの腕時計もテクノロジー、住宅も・・・

―わたしは時計をしませんが、わかりました。

 そうですか。携帯電話は使いますね。

―その通りです。

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