現在の楽器インターフェースは最適解か?――岩井俊雄氏、TENORI-ONを披露 - (page 2)

071203_tenori2.jpg TENORI-ON演奏の手元

 これを元に、任天堂との協力でマウスでグラフィカルに音楽をいじれるソフトウェア「サウンドファンタジー」(未発売)を開発したり、坂本龍一とのコラボレーション作品をアルス・エレクトロニカに出展するなどの活動を行っていく。こうした中で出てきた、16×16のマス目で音楽を表現するという考えをヤマハのスタッフと協業して実現したのがTENORI-ONだ。

 実際に楽器として仕上げるには多大な苦労があったというが、「できたものを世界のアーティストに試してもらったところ、非常に良い感触があった」(岩井氏)。実際にイギリスで発売された後にはビョークが5台も購入し、ライブにも使われたという。

 TENORI-ON開発の際には、従来の楽器と電子楽器の違いについて深く考察したという。「従来の楽器はギターでもピアノでも、音を鳴らすための必然とした形状のデザインとして完成されている。ヤマハから発売された初のシンセサイザー『DX-7』も、インターフェースはピアノ同様の鍵盤。シンセサイザーは確かに新しい発想だったが、入力に対しては新しい提案をしていなかった」(岩井氏)。さらに、電子楽器はアコースティックな楽器の形にとらわれてしまったため、個性を発揮できていないのではないかと指摘。

 「現在もっとも使われている楽器はPC。サンプリングなどでどんな音でも出せるが、これには楽器の形としての必然性は存在しない。アンチアコースティックとしては面白いムーブメントだが、全部これになってしまうのは面白くない」(岩井氏)。こうした考えを進め、演奏スタイルの個性にこだわったものがTENORI-ONにつながったという。最後に、「ヤマハのホームページに、ピアノやギターといった項目と一緒にTENORI-ONが並んでいる。何十年後かには、TENORI-ONも楽器のスタイルの一部として定着するかもしれない」と展望を述べた。

 このように全く新しい楽器を作るという風潮は、他のメーカーでも徐々に立ち上がってきている。代表例をあげると、コルグから発売されているタッチパッド入力型のシンセサイザー「KAOSSILATOR」だ。元々は同じタッチパッド入力を採用した多機能エフェクター「KAOSS PAD」シリーズの後継製品だが、単体で発音できたりアルペジエイター(特定の音の発声に対して分散和音を付加する仕組み)を搭載したりなど、電子楽器として完結するものとなっている。

 YouTubeで「KAOSSILATOR」のデモンストレーション動画がアップロードされたころから注目され、現在では主な楽器店でも売り切れ状態が続いている。

 「TENORI-ON」と「KAOSSILATOR」、どちらも従来の楽器とは全く違うインターフェースを持ち、直感的に音楽表現ができる。今後はピアノやギターの心得がなくとも、コンピュータの助けがあればフィーリングだけで作曲ができる、そんな未来が訪れるのかもしれない。

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