先日、ヤフージャパンは、行動ターゲティング広告の新商品「カスタム行動ターゲティング広告」を発表しました。
例えば、自動車メーカーが「高級セダン」の広告を打ちたい場合、一般的な「高級車」や「セダン」といった自動車に関連するカテゴリに加えて、「高級時計」や「投資信託」、「ゴルフ」といった自動車と直接関連のないカテゴリも設定できるようになります(日経産業新聞、2007年11月13日)。つまりこの商品は、広告の露出範囲をより効果的に広げることができるのです。インターネット技術の進化により、広告主は、効果を出せる広告枠を一層的確に指定できるようになってきたのです。
先日米国に出張した時にAlmond Net社の方にお会いし、会社の概要を取材しました。この会社は、自らはアドネットワークをもたず、他社のネットワーク上等で、自社のクッキーを配布し、約100万人エンドユーザー分のクッキーに紐づく検索ワード及び行動データ等を集め、そのデータをメディア、アドネットワーク等に提供している会社であります。
いままでの考え方だと、行動ターゲティング広告は、「こういうパターンの行動を取る人は、こういうカテゴリの広告が響くはず」という、エンドユーザー(以下ユーザー)の行動パターン等で、ユーザーをグループ化してそこにカテゴライズされた広告を配信するという考え方でありました。
しかし、この会社のサービスでは、ユーザーのグループ化は一切せず、実際の一人ひとりの行動に、カテゴライズされた広告を掲出するという手法をとっています。これは、まさに、グーグルが推し進めている広告のパーソナライズ化を他のメディアを組み合わせて行っていることになります。つまり、デモグラ情報や、個人情報などは、ぶっちゃけ意味はないということになります。例えば、ディズニーのビデオをよく買う人や、よく検索する人は、男であろうが、女であろうが、年齢など関係なく、次回もディズニーのビデオを買う確立が高いという考え方であります。
違う言い方をすると、特定個人がその趣味・嗜好に関連する広告にどこに行っても追っかけられ、(良い意味で)物・サービス等を購入させられてしまう仕組み(データ)を提供している会社がAlmond Net社なのです。
究極のインターネット広告、それは「特定できる1人に対してのセールスプロモーション活動」を実現できる仕組みなのではないでしょうか。
しかしこれは私達が長い間培ってきた「広告」(広告業)なのでしょうか。通りすがりの人までもその魅力的なクリエイティブで振り向かせることができる、これこそが広告業に携わる人々のモチベーションであったはずなのです。
インターネットの存在は、「広告」を「狭告」にしていきます。その狭告を従来型の広告と一緒に販売していくことはできるのでしょうか? その方法論を広告業に携わる人々は確立することができるのでしょうか?(この狭告を肯定し、方法論を確立せざるを得ないと思います)
インターネットメディアが主に唱えていくであろうこの「狭告」論に、皆立ち上がらなければなりません。いま急がなければならないのは、これからの広告業界で活躍できる能力ある人的資産の育成なのです。
大手広告代理店退職後、財団法人社会経済生産性本部において経営コンサルタントの認定を受け、その後1999年9月株式会社オプト入社。2001年1月より同社代表取締役COO。2006年1月より同社代表取締役CEO。慶應義塾大学経済学部卒、産能大学大学院経営情報学研究科(MBA課程)卒、中小企業診断士。デジタルハリウッド大学院教授(「インターネットマーケティング」担当)。「サイバーコミュニティを使った『ニーズ調査』の有効性に関する比較研究」(経営情報学会2000年、共同研究)、「インターネット広告による売上革新」(同文舘出版2006年、共著)等学会・講演活動多数。
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