個人情報管理のパイプドビッツで凜と社内を正す女性

瀬井裕子(編集部)、写真:uga2007年11月16日 19時35分

 メール配信のASPを中心に顧客管理のシステムを提供し、2006年12月にマザーズへの上場を果たしたパイプドビッツ。個人情報保護に関わる同社では、情報セキュリティの維持管理に対しての取り組みが欠かせない。その責任者として活躍するのが青木宏実さん。

 法務・コンプライアンス統括部のマネージャーとして、プライバシーマークなど第三者機関からの認証取得とともに社内向けの意識教育にも奔走し「彼女の存在は欠かせない」と評判の女性だという。お茶を嗜み、落ち着いた雰囲気の青木さんが仕事とプライベートについて上品な口調で語った。

目に見えないサービスのレベルを守る見張り番
青木宏実さん 「法務の交渉では、男性が来ると思われることが多くて大変です」と青木宏実さん。

 「一般の法務部よりもジャンルが広いと思うんですね。品質管理と開示統制、情報マネジメント、個人情報保護マネジメント、日本版SOX法--いろいろなプロジェクトに関わっていて一つの業務に専門で携わる時間が少ないので、頭の中で切り替えを早くしていかないと追いつきません」。

 青木さんの仕事は、同社が情報セキュリティの維持管理をするための社内制度の企画立案や整備、また規定を定期的に見直して問題点を抽出し、修正を行っていくことだ。

 「この仕事は法律的な基礎知識は必要ですが、それよりも書類の問題や、あやしい部分がつきとめられる嗅覚というかカンみたいなものが必要だと思います」

 例えば顧客から修正の要求を受けても「修正していいのかどうか見解が統一されていないものもあります。実際に修正すると当社にとってどんなリスクがあるのか気づく力は、おそらく法律を勉強しただけでは分からないと思います。相手が何を狙ってその修正をしたいと思っているのか、想像する力が大事だと思います」。

 そんな青木さんの一日は、毎朝9時から始まる。

ある日の行動
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 朝は6時半起床。8時半から9時の間に出社し、掃除とメールのチェックを終えてから9時の始業を迎える。始業後はまず、チェックシートの回答案のチェック。10時からは社内のSLM(Service Level Management:サービスレベル管理)委員会に出席。昼食後は営業に同行し、顧客に情報管理体制について説明する。

 帰社後、部内で契約交渉についての会議。文書チェックを終えた後は報告書を作成し、議事録の確認。帰宅後は食事を作り、夜に新聞を読む。

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 問題点を見出すカンを養うために、一般的にどういう基準であればデータの管理が安全だと見られているのかを知ることが必要だ。日頃から法令の改正や施行の情報、省庁が出すガイドラインや基準、判例、さらにパブリックコメントも研究しながら「世情を勉強します」。

お気に入りのグッズ
goods.jpg 上から時計回りに、仕事机の隣に並ぶ法律関連の書籍。お気に入りの「TWININGS」の紅茶。携帯電話Vodafone802N。専門誌「ビジネス法務」とマンガ2冊「バーテンダー」(原作:城アラキ、漫画:長友健篩)「ソムリエール」(原作:城アラキ、漫画:松井勝法)。

 通勤に欠かせないのは、認証取得関連の書籍とマンガ。「いつも何かしらのマンガは持っています」。

 「仕事で法律書や認証の規格など堅いものを読んでいるので、通勤や家では無心に読める気晴らしになるものを手に取ります。料理マンガなどの専門性の高いものが好きです」。料理は作るのも好きで、最近は茶懐石を作ったという。

 仕事場には六法全書をはじめ、膨大な量の法律関係の書籍が並ぶ。一方、欠かせないのはお気に入りの紅茶。ハート型のティー・ストレーナーで入れる。また「家では絶対にパソコンは立ち上げないですね。電磁波っぽいものは避けます。友達とのメールは携帯で」。

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 仕事で感じる女性ならではの苦労を聞くと「貫禄があるように見せるのが大変です。貫禄がないという印象を与えてしまうとパワーバランスが変わってくるので。特に法務コンプライアンス部門は女性が少ないですし。とにかく落ち着くことが大事だと思っています。契約の交渉に行く時も、案をしつこいくらい準備をすると無理な要求にも対応できます」と丁寧に話す。

 「上場の前は記憶にないくらい働いていました。書類のチェックと問題点の洗い出しとその修正の繰り返しで、それが膨大な量でした。取締役会決議なども上場前は重要なものがあるのでその議事録も気が抜けないですし、直前の3日間はどうやって生きていたのか・・・」。

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 そんな青木さんの趣味は茶道。月に1回程度、5年以上続けている。「茶道の先生のお宅が遠いんですね。鎌倉の近くで家から2時間近くかかるので最初は行きたくないなと思うんですけれども、終わった後は自然と体が軽くなるというか・・・」

 「普段は電子的な音やスピードで自然と体が疲れているのが、お茶をいただく時はお湯をちょろちょろ入れる音とか自然の音とか、自然を感じられる環境なのがいいと思っています」と言う。仕事とプライベートを切り分けた、青木さんならではのライフスタイルを持っている様子を穏やかに語った。


パイプドビッツ
経営企画管理本部 法務・コンプライアンス統括部 マネージャー

青木宏実

法政大学法学部卒。飲食業界の人事・総務を経て、2005年10月にパイプドビッツ入社。人事・総務担当として主に採用業務に携わった後、2006年3月より現職。契約関連法務のほか、コンプライアンス担当として法令・諸規則の遵守体制の整備、個人情報保護マネジメントシステムの構築・運用等において主導的な役割を果たす。現在はJ-SOX法の施行に伴う内部統制体制の構築をはじめ、情報セキュリティマネジメントなど、幅広いプロジェクトに参加している。

取材を終えて

 仕草や話し方に丁寧さがにじみ出て、育ちの良いお嬢様という印象でした。もともとは芸術系の進路を目指していたとのことでしたが、まったく違うIT業界の法務担当としてとても誠実な仕事ぶりなのだろうと想像できます。20代だとは思えない落ち着いた素敵な方でした。

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