先ほどおっしゃられたように、市場関係者に魅力が伝わっていないのであれば、それは問題でしょう。
確かに、ITという視点で見ると、他の新興市場と比べたときの優位性が見えづらいようにも思えます。おそらく、NEOの魅力が見い出せないとおっしゃる市場関係者は、NEOがほかの新興市場と比較した際にどのような立ち位置をとり、どこをとっていくのかというところが見えづらいということを指摘しているのでしょう。
ただ、バイオの観点から見るとNEOはありがたい存在です。バイオは製品開発に十数年かかるのが普通で、東証もバイオ関連企業における上場基準のハードルを上げているので、その受け皿となる機能を果たせると期待しています。
環境やエネルギーの分野においても同じことが言えますし、ITに関してもインフラ系では相性がいいと考えています。
資本市場や直接金融と呼ばれるものは民間のものです。この民間のものに対して、民間人が信頼して投資ができるようにすることが、監査法人の最大のミッションだと私は考えています。
あえて監査法人の問題点を挙げるとすれば、監査法人の存在そのものがマイノリティだったことではないでしょうか。
経営者の中には「監査法人は会社の味方だと思っていた」などとおっしゃる方もいらっしゃいますが、我々の存在はあくまでも中立的です。中立的だからこそ、投資家や株主が安心して投資判断ができるという環境が整うという重要な役割を果たしているのですが、この事実に各方面の人たちが無関心だった。
しかし、監査法人の重要性に誰もが気づきだし、社会的な期待度も高まってきたことから、急速に監査法人の選別が始まっており、淘汰も起きているということなのでしょう。関連の法制度も多少急いで整備されて来ていますので、これがこなれるのには時間がかかるということは、現時点での課題点だと言えます。
ベンチャーへの愛は感じながらも淡々と監査をすることです。
いい会計士というのは、いい会社に出会うことで育っていきます。しかし、こうして自分を育ててくれる会社への愛が深ければ深いほど、その会社の側に気持ちが傾きがちです。しかし、それではダメで、会社の実情を表わすさまざまな数字に至る過程を知っていても、投資家から見たときに適切な表現方法かどうかを判断しなければならない。
ある意味、監査というのは己との戦いなんです。
私が監査をする上で常に想定しているのは、ある人から聞きましたイギリスの田舎の会社の株主総会の模様です。イギリスの中流階級は質素で、大勢の黒い服を着た老人が配当を期待して座って総会に参加しているそうです。元気が良くてまだ働ける人たちが損をするのとは、わけが違う。この姿を想定して監査にあたることが、我々の原点だと思っています。
徹底して中立の立場を貫かなければならない会計士は、こうした軸を1つ持っていないと、日々の判断に悩むし、迷います。これから会計士は増えていきますが、これからの会計士たちには資本市場の信頼性を守るという使命を忘れず、監査にあたってもらいたい。
こうして会計士と企業の間に緊張感のあるいい関係を作り、お互いがお互いを育てていける環境をお互いが作っていこうとすることが、何よりも重要なことなのではないでしょうか。
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