資金調達の本質は、融資と増資の使い分け

中村知子(未来予想パートナー)2007年10月19日 08時00分
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 資金調達はテクニカルな手法が多数あります。ただし、大きく分けると、お金を借りる(融資)、株式を売る(増資)--の2つに集約されるでしょう。実際の現場でも、この使い分けを協議することが最も重要な部分だと思っています。

 今回は融資と増資の二大重要事項について、読者の方が調達活動を準備する際、少しでも参考になるようまとめてみたいと思います。

資金は「借りる」が一番

 ここでいう資金調達コストというのは、金利ということだけではありません。お金を借りることだけが資金調達ではなく、株式を発行して増資をする場合にも見えない資金調達コストは発生するのです。

 まず、お金を借りる場合はどうでしょう。2007年10月半ば時点では、短期プライムレートが1.875%、長期プライムレートでは2.45%(日本銀行 長・短期プライムレート(主要行)の推移)となっています。つまり、銀行からお金を借りる場合には、これに銀行の利益分がのった金利になるでしょう。

 そこで借りられない場合には、もう少し金利は高いノンバンクから借りることになります。それでも借りられないのであれば、社長個人が消費者金融でお金を借りてそれを会社に貸し付ける形をとるのですが、そうすると、金利は15%くらいになるでしょうか。

 ここでの判断は非常に簡単です。金利が安いほど資金調達コストが安い、つまり、コストが安いところから資金調達活動をすればいいわけです。

 株式発行をする場合にはどうなのでしょうか。

 お金は毎月返済しなくてもいいわけです。増資分の0.7%程度の登記費用がかかる程度です。しかし、実は株式を発行して増資の形をとった方が資金調達コストは高くつく傾向にあります。なぜなら、株主に対しては会社が存続する限り、毎年度配当を検討しなくてはなりません。

 さらに、なんらかの利害関係において業務に影響を及ぼすことだってあります。その株主が実は反社会的勢力だった場合には取り返しがつきません、もはや貴社の社会的信用力が地に落ちるのは時間の問題でしょう。

 さて、どうでしょうか。”コスト”だけを勘案するなら間違いなく、資金は「借りる」のが一番です。
※自己資本比率・ROE・ROA等のテクニカル論は説明をはぶき、考え方中心のまとめとしています。

お金だけじゃない関係

 さて、ここまでくると「資金調達=お金を借りるに偏った価値観を啓蒙してしまいましたが、株式を発行して増資する手法にも利点はあります。

 ベンチャー企業にとって、資金調達にかかる「コスト」よりもメリットのあることは何なのでしょうか。それは事業の拡大です。つまるところ営業協力であり、信用力拡大です。これはお金を借りるという行為では得られないことです。

 この部分を業務的な提携関係を結び、さらにそれ以上に近い関係性を保つために、資本関係を構築するということであれば、実は資金調達コストもそれほど高くつくことはないでしょう。コスト以上のメリットがとれるわけですからね。

 ただし、業務提携がうまくいかなければ、それこそただのコスト高の調達をしたということに他なりませんので、その点は大いに気をつけましょう。

迷ったときは原則に立ち戻るべき

 資金調達を検討する場合には「何にいくら使うので、いくらお金が必要」ということがまず前提にあります。これをもって最初に考えることは、より安い金利でお金を借りることです。その後、業務的に関係を構築できる相手先があったら、はじめて資本提携を考えればいいのです。すべてのケースをこの考え方にあてはめることは難しいと思いますが、本来はこうするべきだ、という形を認識することで、メリットとデメリットを浮き彫りにしやすくなります。

 ベンチャーキャピタルなどは、お金は貸さないし、業務提携もできない、ということになってしまい、登場機会がなくなってしまいますが、ベンチャーキャピタルというのは、原則としてはリスクをもってベンチャー企業を応援し、仮にうまくいった時には思い切り売却して利潤をとるという商売を、主たる事業としています。(会社によってそれぞれポリシーが違いますので、ホールド型のVCの方はお見逃しください)

 したがって、ベンチャーキャピタルへ支援要請をする場合にも、本質を理解した上で行動することで、よりよい関係が構築できるのではないかと思います。

 読者の会社で、資金調達活動の検討段階において少しでもおかしいなと感じたところがあれば、今一度、その調達方法が自社にとってベストソリューションであるか否かを再考するという機会をつくってみてもよいのではないでしょうか。

未来予想パートナー
中村知子

会計事務所での様々な業種の会計・税務コンサルティングの実務経験。その後、転職を機にIPOに向けた管理部門整備の経験を経て、現在、未来予想株式会社にてベンチャー・中小企業向けの経営企画・管理・財務部門のコンサルティングならびに実務支援の専門家として活動中。

未来予想の主なベンチャー支援向けサービス:「EIP型マネジメントASP Miraizβ(登録無料)」、資金調達支援サイト「資金調達.bz」(登録無料)

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