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IBM、世界初の単分子スイッチを開発

文:Peter Judge(ZDNet UK) 翻訳校正:編集部2007年09月03日 19時41分
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 IBMの研究チームが、より大規模なシステムへの組み込みの可能性を秘めた世界初の単分子スイッチを開発したという。また同日、IBMの別の研究チームが、単一原子レベルの磁気記憶(MS)の開発につながる可能性のある研究結果を発表した。これら2つの研究成果は、現地時間8月31日発売のScience誌で報じられている。

 IBMのチューリッヒ研究所のPeter Liljeroth氏率いる科学者チームが、ナフタロシアニンと呼ばれる分子を基礎とする分子スイッチのデモを行った。ナフタロシアニンの内部空洞には2つの水素原子が存在し、これらの原子は2つの位置を取ることができる。Science誌の記事によると、これらの原子が位置を変えることにより、ナフタロシアニンの伝導性に大きな変化をもたらし、微細な論理ゲートの構築を可能にするという。

 分子スイッチは過去にも作られたことがあるが、このスイッチは分子の形が一定である点で従来の分子スイッチとは異なる。Liljeroth氏はZDNet.co.ukのインタビューの中で、「われわれが開発したスイッチでは、(分子の)形は変化せず、中央の水素原子のみが移動する」とした上で、「これらのスイッチを使って、より複雑な装置を作ろうとするなら、これは大変重要なことだ」と付け加えた。

 ナフタロシアニンは、Liljeroth氏が可能性のあるいくつかの候補をテストしている最中に発見した。この分子には、より複雑な装置を開発する上で、もう一つ大きな利点がある。同氏は、ある分子が移動すると、隣接する分子のスイッチングに影響を与えることを証明した。

 Liljeroth氏は、「分子スイッチを使用する際、そのスイッチと他の複数のスイッチを通常の銅線でつなぐやり方は現実的ではない」とした上で、「それよりも、分子同士を直接つなぎ、分子で構成されるネットワークを構築する方がより理にかなっている」と指摘した。仮に分子群からより複雑な論理装置を作れるとしたら、これらの分子群を別の分子群や実際の装置に電子的につなぐことが可能だ。

 しかし現時点では、このスイッチは絶対零度に近い低温でしか機能しない。Liljeroth氏は、システム間の結合の強度や、より複雑なシステムの実現可能性を調査した上で、温度を室温に徐々に近づけていく計画だ。「やり方についてはいくつかのアイデアがあるが、これはあくまで試験的なものだ」(Liljeroth氏)

 一方、カリフォルニア州サンノゼにあるIBMのアルマデン研究所のAndreas Heinrich氏率いる科学者チームは、走査型トンネル顕微鏡(STM)を使って、単一鉄原子が安定した磁場(磁気異方性)をどれだけ維持できるかを測定した。現在のハードディスクに使用されている磁区には数百万個の原子が含まれている。よって単一原子の磁場を操作できれば、磁気メディアの記憶容量は大幅に増加する。Science誌には、より詳細な情報が掲載されている。

 「われわれは文字通り、1つの原子を選び、その磁気異方性を測定し、その隣に別の原子を置き、その原子が(最初の原子の)磁気異方性にどのような影響を与えるかを調べ、そこから、われわれが予想しているような超高データ記憶密度を備えた素材の作り方を習得できる」(Heinrich氏)

この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したも のです。海外CNET Networksの記事へ

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