「DMC-LX1」という「カメラ」

パナソニック
DMC-LX1
内容:LUMIX「DMC-LX1」は、16:9のワイド写真を撮影できるデジタルカメラだ。新開発した広角28mmレンズを採用し、従来の4:3だけでない新たな世界を楽しむことができる。8月26日の発売に先駆け、製品レビューをお伝えする。

「16:9」の新しい表現領域

高級感のあるメタルボディ「LUMIX DMC-LX1」 (クリックすると拡大できます

 「LUMIX DMC-LX1」を手にして、まず感じた事はメタルボディの高級感とコンパクト機としては異様とも思えるレンズ鏡筒の大きさである。そこには「LEICA」の文字が誇らしげに刻印されている。それはカメラマニアならずとも世界的に有名な独ライカ社のブランド名である。その意味するところ、つまり松下はデジカメなる電子デバイスではなく、写真を撮るための「カメラ」を作ったのだということにほかならない。

 松下と独ライカ社との提携はどうやら良縁のようだ。LUMIXブランドのデジタルカメラにおいて、ライカレンズを搭載した機種は既に数世代を重ねてきた。そのラインアップは「DMC-FX8」のようなコンパクト機から「DMC-FZ20」や「DMC-LC1」のような本格的かつ個性的なカメラにまでおよぶ。そしてこの「DMC-LX1」という16:9の画面比率を持つ新しいカメラの誕生により、その関係は新たな段階へと進み始めた。

 そもそも、我々のようなフィルム時代からのカメラマンは、銀塩カメラの持つ3:2という画面比率の中で世界を造ってきた。そこにデジタルが入ってきて4:3という画面比率での構築に慣らされていく。もちろん実際には誌面などに合わせてトリミングされるのだが、撮る側の視野が窮屈な枠に閉じ込められていることには変わりがない。しかし、この「DMC-LX1」の16:9画面比率は一気に我々の世界を開放してくれる。その際のレンズ焦点距離は35mm換算で28〜112mmとなり、広角側のワイド感を最大限に生かすことによって撮影者の世界観を惜しみなく表現できるのだ。

撮影者の意思を反映させる道具

 このカメラの魅力は多彩な撮影モードにもある。プログラムオート、絞り優先オート、シャッター速度優先オートから各種シーンモード。そしてその中でもこのカメラの性格をいちばん表わしているのがマニュアル撮影モードである。普段は優秀なオート露出で撮ればいいのであろうが、時として狙った仕上がりとならずに歯がゆい思いをすることがある。そこでマニュアル撮影を選択するのであるが、多くのコンパクトデジカメのマニュアルモードは概ね貧弱で、それらをカメラと呼ぶにはあまりに辛い。しかしこの「DMC-LX1」のマニュアルモードは、新しい発想のジョイスティックの操作性と美しく大きな液晶画面によって、直感的な創作をもたらしてくれる。それはAFからMFに切り替えた際、液晶画面に表示されるMFアシストを使用してのピント合わせにおいても無理がなく、高い精度でできることからもこのカメラを開発した人間のマニュアル撮影に対する思い入れを感じられるのだ。

 このカメラはマニュアル撮影をストレスなく行えるカメラと申し上げた。だからと言ってオート撮影やシーンモードでの撮影を否定するものではない。試しにいくつか面白そうなシーンモードで撮影してみた。その中で一番効果があったのはやはり夜景モードであろう。

 同じ夜景をプログラムモードと夜景モードで撮り比べてみると、明らかに夜景モードで撮影した画像の方がノイズも少なくきれいであった。その理由は感度をISO80まで下げると同時に、長時間露光による受光素子の熱ノイズをアンチノイズ機構により打ち消していることによる。また夜景ポートレートモードはフラッシュ光と背景の明かるさのバランスをうまくとることで、人物と背景を合わせて撮る事ができるようになっている。ただし状況に応じての若干の露出補正は必要なようだ。

 ほかに料理モードなども試してみたが、今回は室外光と室内光の混じった環境であったためか、標準のプログラムでの撮影の方が良い結果となった。このように光のバランスや色温度等を見極めつつ、撮影する対象に合わせて撮影モードを選ぶことが大事であろう。

小さな名アシスト

 LUMIXシリーズの大きな特徴として、手ぶれ補正機構の装備がある。私は室内においてもその場の光をそのまま生かして撮影することが多い。もちろん暗いところではストロボを使用して撮影するのがセオリーではあるが、それでは光が強烈過ぎてその場の雰囲気を壊してしまうことが多いのだ。そのような場合、開放値F2.8の明るいレンズと手ぶれ補正機構が付いたカメラはとてもありがたいのだ。一眼レフカメラであればキヤノンやニコンのようにジャイロ搭載レンズを使用したり、最近ではコニカミノルタ「アルファデジタル」のアンチシェイク機構カメラ等を選ぶこともできる。しかしコンパクトタイプとなるとLUMIXシリーズをおいてはほかにない。むしろISO感度をあげることによってノイズの出やすい、受光素子の小さなコンパクトデジカメにこそ必要な機能とも言える。手ぶれを気にせずにシャッター速度を下げることによって増感時ノイズを避けることができるからだ。

 「DMC-LX1」は30fpsで撮影できる動画モードもある。もちろんその際にも手ぶれ補正機構は有効となる。撮影時間はSDカードのメモリ容量に左右されるとはいえ、30fpsのフルフレーム撮影と併せてとてもきれいな動画が撮影できる。さすが映像に強い松下というところか。

21世紀のカメラ

 「DMC-LX1」を実際に使用してみて感じたことは、単なる「デジカメ」ではなく、やはり「カメラ」であるということだ。もちろん、気楽に撮影できるさまざまな機能が用意されているため、多くの人に楽しんでもらえることだろう。もっとも、細かいところでは苦言を呈したい箇所などもいくつかある。しかし、松下がこのような「カメラ」を造ってくるこということは、それ自体が松下の意思表示であるとして評価したい。以前、松下の開発担当者と話しをする機会に恵まれたのだが、その際に彼ははっきりと「松下は21世紀のカメラメーカーになる」と言った。私はこの新しいカメラの誕生に立ち会い、彼の言葉に間違いはなかったと改めて思い出したのである。

おまけ isopyの物欲度 星☆☆☆☆☆

サンプル撮影画像

夜の赤レンガ倉庫をプログラムモードで撮影。暗部にノイズが出る
おなじく赤レンガ倉庫を夜景モードで撮影。ノイズリダクションでノイズが低減され暗部の締まりもよい
夜景ポートレイトモード。人物と背景の明るさのバランスが良くない。人が浮いて見えてしまう
解像度 : 3840×2160
画像サイズ : 約4Mバイト
露出時間 : 0.77秒
レンズF値 : F2.8
ISO感度 : 200
撮影条件 : 夜間
解像度 : 3840×2160
画像サイズ : 約4Mバイト
露出時間 : 8秒
レンズF値 : F5.6
ISO感度 : 80
撮影条件 : 夜間
解像度 : 3840×2160
画像サイズ : 約4Mバイト
露出時間 : 1秒
レンズF値 : F4
ISO感度 : 200
撮影条件 : 室内
室内にて窓外からの明かりのみで撮影。プログラムモード。ネコの毛の描写は優れている
室内にて窓外からの明かりのみで撮影。プログラムモード
こちらも低速シャッターだが手ぶれ補正機構によりぶれずに写っている。MODE2使用
解像度 : 1360×2048
画像サイズ : 約1.35Mバイト
露出時間 : 1/30秒
レンズF値 : F2.8
ISO感度 : 125
撮影条件 : 室内
解像度 : 3840×2160
画像サイズ : 約4Mバイト
露出時間 : 1/25秒
レンズF値 : F2.8
ISO感度 : 200
撮影条件 : 室内
解像度 : 3840×2160
画像サイズ : 約4Mバイト
露出時間 : 1/15秒
レンズF値 : F2.8
ISO感度 : 200
撮影条件 : 室内
バッタをマクロ撮影。プログラムモード。接写にも関わらず優れた描写。色収差もほとんど見当たらない。さすがLEICAレンズというところか
昼飯の天丼。料理モード。窓外の光に影響されてしまい全体がシアンかぶりしてしまった。食べ物としてはありえない
天丼。プログラムモード。WBは太陽光固定。室内の電球によって若干アンバーになっているが、食べ物はそのくらいがちょうどよい
解像度 : 2880×2160
画像サイズ : 約2.3Mバイト
露出時間 : 1/200秒
レンズF値 : F4.9
ISO感度 : 80
撮影条件 : 晴天
解像度 : 3840×2160
画像サイズ : 約3.9Mバイト
露出時間 : 1/30秒
レンズF値 : F3.2
ISO感度 : 80
撮影条件 : 室内
解像度 : 3840×2160
画像サイズ : 約3.1Mバイト
露出時間 : 1/30秒
レンズF値 : F3.2
ISO感度 : 80
撮影条件 : 室内
プログラムモード。夏の光に照らされた赤い橋と青くぬけた空とのコントラストが鮮やかに表現されている。暗部もつぶれることなく、明るい空でもフレアが出ていない。これぞLEICAレンズの実力か
マニュアルモード。早朝のベイブリッジ。霞のかかった空気と今日一日の暑さを予感させる空の色も抑えめの露出に潰されることなく表現されている。16:9のワイド画面あっての重量感
解像度 : 3840×2160
画像サイズ : 約3.2Mバイト
露出時間 : 1/400秒
レンズF値 : F5.6
ISO感度 : 80
撮影条件 : 晴天
解像度 : 3840×2160
画像サイズ : 約3.9Mバイト
露出時間 : 1/60秒
レンズF値 : F5.6
ISO感度 : 100
撮影条件 : 屋外

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