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「LUMIX DMC-LX1」を手にして、まず感じた事はメタルボディの高級感とコンパクト機としては異様とも思えるレンズ鏡筒の大きさである。そこには「LEICA」の文字が誇らしげに刻印されている。それはカメラマニアならずとも世界的に有名な独ライカ社のブランド名である。その意味するところ、つまり松下はデジカメなる電子デバイスではなく、写真を撮るための「カメラ」を作ったのだということにほかならない。
松下と独ライカ社との提携はどうやら良縁のようだ。LUMIXブランドのデジタルカメラにおいて、ライカレンズを搭載した機種は既に数世代を重ねてきた。そのラインアップは「DMC-FX8」のようなコンパクト機から「DMC-FZ20」や「DMC-LC1」のような本格的かつ個性的なカメラにまでおよぶ。そしてこの「DMC-LX1」という16:9の画面比率を持つ新しいカメラの誕生により、その関係は新たな段階へと進み始めた。
そもそも、我々のようなフィルム時代からのカメラマンは、銀塩カメラの持つ3:2という画面比率の中で世界を造ってきた。そこにデジタルが入ってきて4:3という画面比率での構築に慣らされていく。もちろん実際には誌面などに合わせてトリミングされるのだが、撮る側の視野が窮屈な枠に閉じ込められていることには変わりがない。しかし、この「DMC-LX1」の16:9画面比率は一気に我々の世界を開放してくれる。その際のレンズ焦点距離は35mm換算で28〜112mmとなり、広角側のワイド感を最大限に生かすことによって撮影者の世界観を惜しみなく表現できるのだ。
このカメラの魅力は多彩な撮影モードにもある。プログラムオート、絞り優先オート、シャッター速度優先オートから各種シーンモード。そしてその中でもこのカメラの性格をいちばん表わしているのがマニュアル撮影モードである。普段は優秀なオート露出で撮ればいいのであろうが、時として狙った仕上がりとならずに歯がゆい思いをすることがある。そこでマニュアル撮影を選択するのであるが、多くのコンパクトデジカメのマニュアルモードは概ね貧弱で、それらをカメラと呼ぶにはあまりに辛い。しかしこの「DMC-LX1」のマニュアルモードは、新しい発想のジョイスティックの操作性と美しく大きな液晶画面によって、直感的な創作をもたらしてくれる。それはAFからMFに切り替えた際、液晶画面に表示されるMFアシストを使用してのピント合わせにおいても無理がなく、高い精度でできることからもこのカメラを開発した人間のマニュアル撮影に対する思い入れを感じられるのだ。
このカメラはマニュアル撮影をストレスなく行えるカメラと申し上げた。だからと言ってオート撮影やシーンモードでの撮影を否定するものではない。試しにいくつか面白そうなシーンモードで撮影してみた。その中で一番効果があったのはやはり夜景モードであろう。
同じ夜景をプログラムモードと夜景モードで撮り比べてみると、明らかに夜景モードで撮影した画像の方がノイズも少なくきれいであった。その理由は感度をISO80まで下げると同時に、長時間露光による受光素子の熱ノイズをアンチノイズ機構により打ち消していることによる。また夜景ポートレートモードはフラッシュ光と背景の明かるさのバランスをうまくとることで、人物と背景を合わせて撮る事ができるようになっている。ただし状況に応じての若干の露出補正は必要なようだ。
ほかに料理モードなども試してみたが、今回は室外光と室内光の混じった環境であったためか、標準のプログラムでの撮影の方が良い結果となった。このように光のバランスや色温度等を見極めつつ、撮影する対象に合わせて撮影モードを選ぶことが大事であろう。
LUMIXシリーズの大きな特徴として、手ぶれ補正機構の装備がある。私は室内においてもその場の光をそのまま生かして撮影することが多い。もちろん暗いところではストロボを使用して撮影するのがセオリーではあるが、それでは光が強烈過ぎてその場の雰囲気を壊してしまうことが多いのだ。そのような場合、開放値F2.8の明るいレンズと手ぶれ補正機構が付いたカメラはとてもありがたいのだ。一眼レフカメラであればキヤノンやニコンのようにジャイロ搭載レンズを使用したり、最近ではコニカミノルタ「アルファデジタル」のアンチシェイク機構カメラ等を選ぶこともできる。しかしコンパクトタイプとなるとLUMIXシリーズをおいてはほかにない。むしろISO感度をあげることによってノイズの出やすい、受光素子の小さなコンパクトデジカメにこそ必要な機能とも言える。手ぶれを気にせずにシャッター速度を下げることによって増感時ノイズを避けることができるからだ。
「DMC-LX1」は30fpsで撮影できる動画モードもある。もちろんその際にも手ぶれ補正機構は有効となる。撮影時間はSDカードのメモリ容量に左右されるとはいえ、30fpsのフルフレーム撮影と併せてとてもきれいな動画が撮影できる。さすが映像に強い松下というところか。
「DMC-LX1」を実際に使用してみて感じたことは、単なる「デジカメ」ではなく、やはり「カメラ」であるということだ。もちろん、気楽に撮影できるさまざまな機能が用意されているため、多くの人に楽しんでもらえることだろう。もっとも、細かいところでは苦言を呈したい箇所などもいくつかある。しかし、松下がこのような「カメラ」を造ってくるこということは、それ自体が松下の意思表示であるとして評価したい。以前、松下の開発担当者と話しをする機会に恵まれたのだが、その際に彼ははっきりと「松下は21世紀のカメラメーカーになる」と言った。私はこの新しいカメラの誕生に立ち会い、彼の言葉に間違いはなかったと改めて思い出したのである。
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