Mac miniはリビングPCの夢を見るか アップルコンピュータ 「Mac mini」(前編)

坂和敏(編集部)2005年02月24日 00時00分
Apple
M9686J/A
内容:「ミニマリズムの具現」ともいえるマシンが、「絶対買いっ!」であるのは間違いのないところだが、アップルが積極的に「最小化」を図ったのと同様に、買う側にもポジティブな意味での「割り切り」が求められる部分もある「Mac mini」。超小型デスクトップマシンの魅力とは?

ミニマリズムの具現

 いわゆる「客観性」を装ったレビューが書けるかどうかなんてことは、頭からすっかり忘れ、ただただアップル最新のマシンを試してみたいと、このレビュー記事執筆を買って出た私は、実をいうと「LCII」の時代から足かけ15年もMacとつき合ってきた人間だ。

 無論、ソニーの初代「VAIOノート」とか、比較的初期のシャトルの小型ベアボーンとか、その時々で「浮気」もしてきた(つまり、ミーハーということだ)。けれども、それはあくまでも「本妻」のほうがしっかりしていなかった──そういった類の製品を出していなかったからで(だから、別に「Mac万歳」というワケでもない、と言い訳したり、強がったり)、ともかく「Mac OS X」が登場し、また「Safari」が出て……とソフトウェア側が徐々に確実に整ってきて以来、ブラウザとテキストエディタ(具体的に言うと「Jedit」)、メーラーの使用頻度が異様に高い私には、Macを離れる理由がなくなった。

 そんな私にとって、この「ミニマリズムの具現」ともいえるマシンが、「絶対買いっ!」であるのは間違いのないところだが、ただし、アップルが積極的に「最小化」を図ったのと同様に、買う側にもポジティブな意味での「割り切り」が求められると思う部分もある。そのあたりを含め、この超小型デスクトップマシンの魅力をお伝えできたらと考えている。

ほかに無いから買う

 これまで、どこか「割高」というイメージが付いて回っていたMacに、500ドル(消費税込みで、6万円)を切るマシンが出た、ということで、当初は値段のほうにばかり話題が集中していた感もある「Mac mini」。実際、発表直後にはCNET Japanのニュースでも「Mac miniお買い得は本当か」という記事を取り上げて、大きな反響をいただいた。そんな「Mac mini」だが、そのミニマリズムにたどりついた「割り切りっぷり」のほうが実は重要なのではないか、とこのレビューについて考えをめぐらしながら、そんな想いがますます強まっている。

 まずはミニマリズムの一番わかりやすい部分と思える、その「小ささ」について見てみよう。165.1mm×165.1mm×50.8mmというこのサイズを実現するために、アップルはiBookのパーツを敢えて選択した。パーツの流用は、スケールメリットを活かした低コスト化にあたっての必須の要件といえるが、ただし単なる安価なパソコンをつくるという考えだったとしたら、こういうサイズにはならなかっただろう。つまり、積極的に「割り切る」という選択がなければ、もっと低価格かつ大容量の3.5インチHDDを積んでいたはずだ。同じように、ふつうに小型のデスクトップマシン──たとえば、かつての「Power Mac G4 Cube」程度の大きさでよければ、いまなら「PowerPC G5 Chip 」をおごるという手さえあり得たかも知れない。

酸化皮膜処理されたアルミニウム製ボディ。白いカバーはポリカーボネート

 しかし、あえてそうした選択をせず、いまとなっては相対的に非力な感もあるG4チップと、そして大容量化では遅れをとる2.5インチHDDを採用することで目指したもの。それは、ここ数年パソコンの世界で盛り上がりをみせてき2つの流れ--「スモールフォームファクタ(小型化)」と「静音化」を同時に実現させるためだった、と思われる。この2つの流れについては、それぞれもう1、2年も前から続いてきているもので、単独で見れば特に目新しくもないのは周知の事実。ただし、両方を同時に、しかもきちんとした形で実現したものは、これまでになかったと思う(シャトルの小型ベアボーンと、それからソルダムの外付け電源を自腹で手に入れた私には、なおさらそう思えてしまう)。

 こうしたある種の「コロンブスの卵」的イノベーション(=ソリューションの考案、という意味で)は、スティーブ・ジョブズ復帰後のアップルの十八番ともいえ、その最たる例が「iPod」「iTunes」「iTunes Music Store」のデジタル音楽トロイカであるのもこれまた周知の事実だろう。「Marketing Whiz」(フォーチュン誌)と称され、また自らも他社を「Out-Innovate」(「out-sell」ではなく)して勝ち抜くことを標榜するジョブズの面目躍如といったところか。

外付け電源とMac mini

 さて、このソリューションを編み出すにあたり、ジョブズとその仲間たちは、数の上ではアップルに勝るアドバンテージを持つ──つまり、コモディティビジネスにおいてスケールメリットで勝負しているPC陣営には真似できそうもない部分を逆手にとった。それが、独自の小型マザーボードの設計と、そして電源の外部化である。特に静音化の点では、すでにラップトップへの搭載を実現している「PowerPC G4 Chip」への割り切りが効いていると思われる。なぜなら、相対的に発熱量の少ないG4だからこそ、この外付け電源(他の媒体ではよく「比較的大きめの」という形容句を目にするが、それでも私の買った無骨な黒い外付け電源と並べてみれば、いかにエレガントで、取り回しも楽なことか)と、そして小型の冷却ファンで済ませることが可能になったはずだからだ。

 そうしたことで、この「小型化」「静音化」に積極的な価値を見出せる人にとっては、「Mac mini」は価格云々を超えた極めて高い満足感をもたらすマシンとなるだろう。こうなってくるともう「安いから買う」ではなく「ほかに無いものだから手に入れる」ということになってくる。

Cinema Displayを奢る

 上記の積極的な発想の転換と、そして「PowerMac G5」以降のアップル製品に共通する独特の審美眼が相まって生まれてきたとおぼしき「Mac mini」には、一見控えめながら、実に好ましい質感がある。とりわけその筐体は、1.32kgというスペック上の重さ以上にズシリと感じられるが、これはサイドにぐるりと張り巡らされたアルミフレームによるものだ。また、それと対をなす白色の剛性の高いポリカーボネートのカバー部分には、「iPod」や「iMac」と共通する艶がある。この小さなボディの質感が、巷でよく見かけるどこか頼りなげなプラスチック素材にシルバーand/orブラックの塗料で色づけしたPCの筐体とは一線を画すものであることは是非特筆しておきたいと思う(個人的には、マットな風合いに変わった「iBook」の白い筐体よりも好ましく感じる)。

20インチのCinema Display

 「Mac mini」のツートーンのデザインが、アップル純正の「D・K・M」(ディスプレイ、キーボード、マウス)との組み合わせを前提に考えられていることは自明で(「PC用のD・K・Mをそのまま使えます」という売り文句は、あくまで「Switch」促進のため)、できることなら、この相性ぴったりなアップル純正D・K・Mを選びたいところである。ちなみに、これら一式を純正品でそろえたシステムは、絶対額でいえばそこそこの金額になるけれども、各々の相対的な価格対性能でみると、どれも非常にすぐれたものと思われる。これは、特にアップルが「Mac mini」の発売前後にキーボード&マウスをほぼ半額に、また20インチの「Cinema Display」に至っては4万円近くも値下げしたことが大きく効いている。とりわけ「Cinema Display」については、実際に画質が非常に優れており、その点とデザイン性や解像度(1680 x 1050 ピクセル)を考え合わせると、この頃わりと目にするようになった10万円前後/以下の他社製20インチモニターとは比較にならないお買い得品だと思う(こうなるともう、惚れた弱みを笑わば笑え……である)。

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