デジタルカメラが日用品となって久しい。韓国では既に広く普及したコンパクトタイプに飽き足らず、より質の高い写真が撮れるDSLR(デジタル一眼レフカメラ)を、2台目のカメラとして持つ人も多くなった。日本ではセミプロ用というイメージが強いが、韓国では一般の人たちが趣味用や日常使いのカメラとしてDSLRを持つことで、裾野が広がっている。
とくに週末は、DSLR同好会と思われる人たちが女性モデルを伴って歩いている姿が、公園や観光地などで複数見られる。このほか街をウィンドウショッピングがてら歩く女性や子連れのお父さんも、肩にはDSLR。はたから見ると重たそうなのだが、本人たちは写真撮影に夢中だ。
ここで撮った写真は多くの場合、ブログやコミュニティサイトなどで公開されることとなる。DSLR流行中なので、写真共有サイトも数が多い。
中でもポータルサイト「Paran」では、大容量写真共有サービス「Pudding」を提供している。ここではユーザー当たり3Gバイト(活動状況により最大5Gバイトまで拡大可能)までのファイルをアップロードでき、写真ごとにタグを付けることも可能だ。また商業利用、写真の編集、著作権表示などの可否を、アイコン表示することで写真の著作権を守ることもできる。
またデジタルカメラの情報交換や写真コミュニティサイトとしては老舗の「dc inside」は7月初旬、1日のページビューが1億を超えたと発表している。プロ並みの風景写真から笑える瞬間写真、画像ツールで編集したユニーク写真まで、多様な写真が満載のこのサイトのページビュー増加が、写真への関心の高さを表しているようだ。
こうした写真流行に合わせ、「Yahoo! KOREA」では人気写真共有サービス「Flickr」の韓国語版を提供するつもりであると明らかにしている。
活況の一方で、デジタルカメラ利用に関する問題も浮上している。それが最近韓国のマスコミをにぎわせている「モルカ族」だ。
モルカというのは「こっそりカメラ」を意味する韓国語の略語だ。モルカ族はおもに繁華街で女性たちをこっそり撮影し、この写真をインターネット上で共有する。望遠や広角などのレンズをつけたDSLRからコンパクトカメラ、携帯電話のカメラなどカメラは人それぞれ。大の男が数人ずつで撮影している場合もあるので威圧感があり、撮られているのを知っていても泣き寝入りする女性もいるようだ。
このモルカ族は最近、ポータルサイト「Daum」の掲示板上に、自身の恋人がモルカ族に撮られたことに腹を立てた男性が掲示した告発文によって大きな話題となった。男性は恋人が撮られた際モルカ族たちに抗議したものの、彼らは「法に触れない」とかえって強気の態度に出たという。
この告発文に対するネットユーザーからの反響は大きく、毎日多くのコメントが付けられ議論が沸騰している。コメント内容は賛否両論だが、こっそり他人の写真を撮るというモルカ族の行為そのものや肖像権などの問題について、多くのユーザーに考えさせるきっかけとなった。
ところで韓国では、いつからこれほど写真への関心が高まったのだろうか。大きなきっかけの1つとなったのは、日本にも進出しているSNSサービス「Cyworld」との見方が一般的だ。ここで自分が撮った写真を見せ合う楽しさが、結果的に2000万人もの会員を集め、デジタルカメラを大きく普及させて、インターネットにおける写真公開をごくごく一般的なこととする原動力となった。
Cyworldユーザーの中には、文章をつづる日記コーナーを非表示設定にはしてしても、写真を公開するコーナーは公開設定する人が多い。「百“文”は一見にしかず」ということなのかもしれないが、Cyworldの醍醐味は写真で自己表現したり、日常生活を公開して体験を共有する楽しさにあるようだ。
そういえばインターネットで公開されている写真には、ユーザー自らが登場するものが多いが、こうした開放感は顔を出さない傾向の強い日本とはまた違う面だといえる。これで人気を得て芸能界デビューする人もいるほどなので、自分の姿を誇示したい人も中にはいるが、特にそうでなくとも自分や友達、家族の顔を出すことに対する抵抗感は相対的に低い方だ。こうした顔出し文化は携帯電話でも見受けられる。韓国では携帯電話の待受画面に自分の顔写真を設定している人を見かけることが、日本と比べると結構多い。韓国の写真好きは、自分ひいては人が好きな国民性の表れなのかもしれない。
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