我々が目指すべきは世界展開、各国を心でつなぐ「BEAT Japan」へ - (page 3)

勝屋久(Venture BEAT Project)、文:島田昇(編集部)2007年07月06日 18時19分

ビジネス基盤の構築は条件ではなく信頼関係

--我々の今後の活動に期待していることがあれば教えて下さい。

 今思っていることは、世界とも交流していきたいということです。Venture BEAT Projectにも外国人が参加すべきですし、わたしの方でもメンバーの海外進出はお手伝いしたいと思っています。

 前述の通り現在、IT関連業界の大きな潮流として、米国だけに限らない、特にアジア圏を中心とした国際的な人と人のつながりの中で新しいビジネスがどんどん生まれています。そのきっかけとして、国や経済界が支援している団体が大きな役割を果たすというような事例もあり、Venture BEAT Projectにおいても、そういった国と国の架け橋になるような活動をしてもらえればと思っているんです。

 ビジネスの基盤を作る上で最も重要なことは、会社同士のメリットをいかにして出すのかという「条件」ではなく、担当者同士の「信頼関係」です。

 たとえば、日本と中国は今も政府間ではさまざまな問題を抱えていますが、中国もこちらのことを知らないし、僕らも彼らのことをきちんと理解してはいない。にもかかわらず、政府間の問題を前提にお互いのことを理解しようとせず、心と心で会話をしようとしなければ、本当の関係は築けない。そうして信頼関係も築けずに、「中国は金の匂いがするから」といって条件面だけを見てビジネスをしようとしても、そんな状態できちんとしたビジネスが成り立つはずがないんです。

 特に中国においては、お互い戦前や戦時中の過去を引きずっているところもありますが、戦後の我々が前向きなことをやっていかないと、日本の未来はない。

 また、「人件費が安いので安い労働力を得られる」ということを理由に、日本企業が積極的にベトナムとのビジネス展開を図っています。しかし、低賃金という条件ばかりに目を向ける関係に疑問を感じ、わが社ではハノイ工科大学から日本で働きたいと考えている学生を受け入れることにしました。すると、「これまで日本に興味はあるが分らないことばかりで不安だ」と言っていた学生たちが、一生懸命日本語を勉強し始めたんです。

 こういう信頼関係の下に、お互いのことを知ろうとし始め、そこから本当の意味でのビジネスが生まれていくのではないでしょうか。もっと言うとそういう関係を構築できなければ、日本だけがアジアの中で、さらには世界の中でも孤立してしまうことになりかねない。このことにわたしは、強い危機感を抱いています。

 ですから、我々は今後、「BEAT Japan」として、これを軸に世界各国と本当の意味で深くつながっていけるような活動へと、発展させていきたいと思っているのです。

勝屋久の氣づき(Venture BEAT Project)

 今回の取材で小池氏が強調していたのは、「国や民族などは関係なく、世界の人達と心と心が繋がり、そして信頼関係をつくることがこれからは大切で、日本人はもっと世界を視野にいれるべきである」ということです。

 また、今まで日本の大手企業が海外の現地法人で現地の人々を単なる労働力としてのみコントロールしようとし、うまくいかなかったことにも言及し、「これはまさに心と心がつながっていなく、結果、信頼関係ができないケース。まずは相手をパートナーとして対等に見て、与えることから始めるべき」と語っていました。

 わたしもこれには全く同感です。この8年間、多くの外国の人たちと接してきました。その中で最も重要なことだと確信しているのは、お互いに心を開き、ハッピーなビジョンを描いたりして価値観を共有することです。その上で、ようやく本当の信頼関係は生まれます。

 論理的に相手を負かしたり、資本力によってコントロールしようとしても、決して良い結果にはならないのです。

 ngi(Next Generation Innovator) groupは今後、さらに精力的に海外と繋がっていくことでしょう。我々もテクノロジー系ベンチャー企業の「化学反応」を促進する存在として、さらに一段上のステップを踏むためにも、そろそろ「BEAT Japan」という呼び名を意識し始めてもいい頃なのかもしれません。

IBM Venture Capital Group ベンチャーディベロップメントエグゼクティブ日本担当
勝屋 久

1985年上智大学数学科卒。日本IBM入社。2000年よりIBM Venture Capital Groupの設立メンバー(日本代表)として参画。IBM Venture Capital Groupは、IBM Corporationのグローバルチームでルー・ガースナー(前IBM CEO)のInnovation, Growth戦略の1つでマイノリティ投資はせず、ベンチャーキャピタル様との良好なリレーションシップ構築をするユニークなポジションをとる。総務省「情報フロンティア研究会」構成員、経済産業省「Vivid Software Vision研究会」委員、New Industry Leaders Summit(NILS)プランニングメンバー、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「中小ITベンチャー支援事業」のプロジェクトマネージャー(PM)、富山県立大学MOTの講師などを手掛ける。

また、真のビジネスのプロフェッショナル達に会社や組織を超えた繋がりをもつ機会を提供し、IT・コンテンツ産業のイノベーションの促進を目指すとともに、ベンチャー企業を応援するような場や機会を提供する「Venture BEAT Project」を手掛けている。

ブログ:「勝屋久の日々是々

趣味:フラメンコギター、パワーヨガ、Henna(最近はまる)、踊ること(人前で)

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