先日、AERA誌の取材をお受けしました。テーマは、「デジタルプアの見えない壁〜携帯オンリーが陥る下流スパイラル」(5月28日号)。
このリンクをクリックしても記事の内容は窺えませんが、その前に発売された、知る人ぞ知るコアな雑誌「FACTA」にてほぼ同様の趣旨の記事が掲載されていて、「パソコン見放す20代 下流携帯族」(FACTA online)と大枠の論旨は共通していたと思います。
要するに携帯電話でしかインターネットに繋いでいない人が増加しており、彼らはデジタルデバイドの境界の下、つまり下流ではないのか、と。
取材をお受けした加藤ですが、これら記事の根にある主張の「PC接続が上流で、携帯電話のみで接続している人が下流」という捉え方には大いに異論があります。
総務省の「通信利用動向調査」によると、確かに国内のネット人口のうちの22.5%は「携帯電話のみで」インターネットに接続しているというデータが出ています。でもですよ、その22.5%がここでいわれる「プア=低レベル」な方々だとはとても思えないのです(もちろん両誌記事で紹介されているような問題の人々も若干いるとも思いますが)。
高速化や定額化、端末のハイスペック化によって携帯電話によるインターネットは既にPCのそれと大差がなくなっています。ここ数年の検索とコミュニティーの進化によって得られる情報もユーザビリティも格段に向上しています。しかもいまのF1、M1、ティーン層は携帯電話を自己表現のツールとしてもとより使いこなしている層です。
通信速度が劇的に上がったN904iに搭載されたピクセルブラウザでウェブサイトを見てみてくださいよ。ここまで見れればもう十分でしょ。英語版ですけどYouTubeにデモあったので、こっちもどうぞ。
人間にはいろんな状況適応力が備わっています。お金がないからPCで繋がないのではなくて、必要性を感じないから、携帯電話でネットに繋ぐのが楽で自然だから、いまは携帯電話で、が実態でしょう。そもそも日本は世界を代表するインターネット料金の安い国なのです。ましてや、それをリテラシーの問題と整理するのは危険だと思います。
ギャル社長藤田志穂さんによると「わたし達の年代(藤田さんは22歳)はモバイルが中心なんですけど、今の中高生くらいになるとPCも使えちゃう。学校の授業でやるらしくて、普通にExcelとか使えるんです」。おお、そうなんだ。
この記事を読んだり、新卒の方と面談をしたり、TwitterやNetvibesの猛烈な普及スピードを見るにつけ、人間の情報の吸収速度やリテラシーの劇的な向上を実感します。
このプッシュトークを使っているおじいちゃんの例を読んで思うに「孫と話をしたいという要望が、プッシュトークというリテラシーを超えている」てのは、ほんと道理だなぁと。
このように、日々開発されている新しいコミュニケーションのためのシステムやツールも、インサイト(生活者のホンネ)をミートしたアイデアや用途をきっちりと提示出来れば受け容れられていくことでしょう。
デジタルプアだかデバイドだが知りませんが、そんなもんは誤差の範疇です。いやむしろ、この中学生からおじいちゃんまでの全体的なリテラシーの向上を鑑みれば、早晩、日本人すべてがインターネットのヘビーユーザーになるはずだと考えるほうが正しいはずです。
インターネットを活用した、企業と生活者の相互理解、相互満足も新しいコミュニケーション手法の創出によってますます図られると思います。そしてその双方への対話の働きかけこそが、これからの広告会社の仕事ではないでしょうか。
1967年4月7日生まれ、大阪府出身。関西学院大学商学部在学中の1986年に株式会社リョーマ設立に参加し、学生起業を興す。1991年同大学卒業後、株式会社徳間インテリジェンスネットワークに勤務。1992年に雑誌媒体専門の広告会社、日広(現NIKKO)を設立。1996年からインターネット広告の取り扱いを開始、ウェブサイトを軸としたインタラクティブマーケティングに強みを持つ総合広告会社へと発展。日本広告業協会 インタラクティブメディア研究小委員会委員、日経広告研究所 デジタル放送広告研究会委員。
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