消費者を味方に付ける「コミュニティメディア」の条件とは

インタビュー:島田昇(編集部)、文:松島拡2007年04月18日 20時25分

 国内最大手の価格比較サイト「価格.com」を運営するカカクコム。東京・文京区にあるそのオフィスの一隅に、社員4人、アルバイト3人の小集団が陣取っている。2005年3月にサービスを開始したWeb 2.0型のレストラン情報サイト「食べログ.com」の運営チームだ。

 同サイトは、レビュアーの書き込みをもとに、独自のロジックを用いてレストランの点数を算出する評価方式を導入し、サービス開始直後から注目を集めた。そして、わずか2年の間に月間ページビュー数2000万、月間利用者数250万人を獲得するまでに成長。月間利用者数1000万人で業界トップを走る「ぐるナビ」を猛追している。

穐田相談役が引き寄せた2つの才能

 その急成長を牽引したのが、事業開発部CGM推進室長で、同サイトの管理人を務める村上敦浩氏と、技術責任者の宮島壮洋氏。両氏はともに1975年に生まれで、中学校から大学までを同級生として過ごした間柄。大学卒業後、一時別々の道を歩んだこの二人が、食べログ.comの両輪として活躍するようになったのは、サービス開始直後、2005年の6月からだ。

 村上氏は大学卒業後、外資系コンサルティング会社、アクセンチュアに入社し、コンサルティング業務に従事する。また、仕事のかたわら、1998年にビートユニット「Neutrino」を結成。米Mushレコードからアルバムをリリースするほど音楽活動に打ち込んだ。

 二足のわらじで精力的に活動する村上氏だったが、入社から数年を経て、次第に転職を考えるようになっていた。「コンサルティング業務は、いくら動かすお金やプロジェクトが大きくても、個々人に与えられる仕事の範囲は狭い。自ら考えて仕事をしている、という実感がなかったんです」

 そんなとき、音楽への造詣の深い村上氏が目を付けたのが、某大手CD販売チェーンのオークション進出。同社に、より検索しやすいオークションサイト運営の企画を持ち込み、即採用が決まる。しかし、それと前後して、カカクコムの採用試験もパス。迷った末、村上氏はカカクコムへの入社を決断する。

 「ダウンロード中心になってきている音楽ソフト販売業の将来性に不安を感じていたのもありますが、やはりカカクコムの穐田誉輝相談役の存在が大きかったです。彼のもとでなら、自分のやりたいことをさせてもらえる、と感じました」

 2004年10月に入社した村上氏は、穐田相談役の提示したいくつかの新規事業計画の中から、グルメサイト運営を選ぶ。そしてうまく社内の協力も得て、わずか3カ月ののちに、「食べログ.com」を立ち上げたのだった。

 一方の宮島氏は、大学院で物理学を専攻したのち、ポータルサイト国内最大手のヤフーに就職。約2年間、オークションサイトの運営に携わるが、マンネリ化しつつあった仕事に対し、徐々に不満を感じるようになっていく。

 「オークションサイトの運営が完全に軌道に乗り、新しく手を加えられる部分が少なくなってきたので、飽きてしまったんです。何かもっと新鮮で、面白いことをやりたい──。そう思っていた矢先、カカクコムから声をかけてもらいました。私も村上と同じく、入社の直接的なきっかけになったのは、穐田相談役との会話でした。すごく話しやすかったし、会社の自由な雰囲気を感じ取れたのが決め手になりました」

 そして2005年6月。カカクコムへ入社した宮島氏は、技術責任者として「食べログ.com」の運営に参画。村上氏と再び机を並べることになる。同氏の合流以降「いかにユーザーにとって使いやすいか」という点を最重要視し、1週間に1サービスをリリースするという常軌を逸したハイペースで、マイナーチェンジを繰り返した。その結果、他のグルメサイトで活動していた著名なレビュアーたちが、徐々に「食べログ.com」への書き込みを開始したのだった。

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