ウェブマーケティングの最新動向や事例を紹介するシーネットネットワークスジャパン主催のイベント「CNET Japan Webマーケティングセッション『実践的マーケティング戦略を探る』」が11月30日に開催された。基調講演には市場通信の代表取締役社長で金沢工業大学大学院工学研究科客員教授の波多野精紀氏が登壇し、ウェブマーケティングの新しい潮流について語った。
波多野氏は、インターネットが普及する以前の昔の時代と、ウェブサイトによるマーケティングができるようになった現在を対比し「今はさまざまなマーケティングができるようになり、非常におもしろい時代になっている」と語る。ネットの普及により、ウェブサイトを活用した顧客からの問い合わせ件数も増え、見込み客への囲い込みも以前と比べて早くなってきているのだという。また、特におもしろい傾向として、「今までと違った顧客層がウェブサイトを訪れることや今まで売れなかった商品が売れるようになったことが挙げられる」と説明する。
ウェブサイトでのマーケティングも、現在は成熟化を向かえているといわれている。特に、旅行やホテル、人材派遣、転職といった業界は、熾烈な競争を繰り広げ、波多野氏も顧客から「もうこれ以上やることがない」という声を聞くこともあるという。しかし波多野氏はこうした意見に疑問に感じ、まだまだ施策はあるといい、その答えのひとつが「サイトの誘導力の強化である」と語った。
リスティング広告やランキングサイトからのリンク、検索エンジン対策など、外部からの誘導についての対策を施したとしても、肝心のサイト内で顧客を迷わせて、せっかくのチャンスを逃してしまうケースが見受けられる。
たとえば、実際の店舗であれば、店員におすすめ商品を尋ねることができるが、サイトをそういった考え方をもって構築しているところはまだまだ少ない。ウェブサイト上で「自由にごらんください」と言われても、顧客はどのコンテンツを見ればいいのか迷ってしまう。見せたいサイトに誘導できるようなナビゲーションや、サイト内のプロモーションを十分に行っているところはそれほど多くないと話す。
また、最近の傾向として、ブログやソーシャルネットワーキングサービス(SNS)などのCGMコンテンツや、ニュースサイトを経由してアクセスするケースが増えているため、こうしたサイトからの誘導も重要になるという。そのためには、サイトの情報をこまめに更新していく必要がある。カタログ的な商品情報だけでなく、ユーザーの体験レポートや専門家によるレビュー、比較レポートといった、さまざまな切り口で商品を紹介するなど、「いかに更新情報を“開発”していくかが大切だ」とした。
続いて波多野氏は、検索エンジン経由でアクセスしてほしいメインのキーワードについて、競合のサイトのほうが上位に表示される場合でもあきらめる必要はなく、そのときの旬のキーワードを盛り込んだ情報をコンスタントに更新していけば、順位が逆転する可能性があると提案。商品に関連した旬のキーワードを盛り込むことによって、革新的で情報感度が高く、影響力のあるブロガーたちがとり上げることになる。そうなると、自社サイトが注目を集め、検索サイトの格付けも高くなると説明した。
波多野氏は、「競合他社のサイトを調べて対策を練るのもいいのが、自社のことをもっと知ることが大切だ」とも語る。市場通信では顧客企業に対し、CGMサイトやブログなどで商品の評判を調べ、それをもとに自社サイトのFAQといったコンテンツを作成している。「これは実際に良好な結果が出ている。外部サイトに自社商品の評判が見られないという場合は、商品に人気がないか、まだまだ情報発信が足りないということだ」と語り、顧客の声を集めて対応することの重要性を強調した。
ウェブサイトの更新は、CMS(コンテンツ管理システム)を活用することで、レスポンスの良い反応が可能で、検索エンジン対策もある程度は自動化できる。また、関連商品の紹介といったサイト内誘導や、社内の情報共有という意味でもCMSは有効であるとした。
波多野氏は最後に、「テレビからウェブへ、紙媒体からウェブへといった形でメディアがクロスし、誘導の方法もマルチになっている。最終的な落とし込みはウェブで行うとしても、その誘導方法は企業によって異なる。今一度、自社の誘導力がどういったものであるか、サイトに訪れた顧客が求めるコンテンツはどういったものかということを考えて、さまざまな施策を行ってほしい」と講演を締めくくった。
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