企業がネットマーケティングを展開していく上で、サイト訪問者に対する購買者の比率を表す「コンバージョン率」をいかに向上させるのかという問題は、非常に重要な視点となる。なぜなら、コンバージョン率が上がれば大幅な業績向上に直結するためだ。
例えば、1%だったコンバージョン率を2%にすれば、この1%は非常に大きな意味を持つ。売り上げの数値に置き換えて考れば分かりやすく、売り上げが1億円であればそれが2億円になるわけだ。しかも、これはマス広告などによる一時的な売り上げ増加ということではなく、コンバージョン率を向上させるベースがしっかりしていれば、恒久的な売り上げの底上げにもつながる。
ただ、世の中における企業サイトの平均的なコンバージョン率は、2005年で2.4%。実店舗のウォルマートストアが80%程度なのだから、今の業界平均値は、非常に低いと言っていい。
実際、わたしが手がけた宝石の卸売企業は、1%に満たなかったコンバージョン率が50%超へと飛躍的に向上した。
では、コンバージョン率向上のポイントを、以下に記したい。
まず重要なこととして、企業はすぐにでも、適任者をCPO(最高説得責任者)に任命すべきだと考えている。
人は企業という単位に属すると、極めて愚かな馬鹿げたことを考え、実行しようとすることが多い。例えば、小売事業者の中には「お客様の目標を達成することではなく、自分たちの業績目標を達成するために仕事をしている」という人がいる。こういう人たちに「あなたは業績目標達成のことだけを考えている企業から商品を買いたいですか?」と質問したら何と答えるだろうか。答えは明確だ。
こうしたことは、特定部署に属する人が「木を見て森を見ず」のように、所属部署のことだけを考えて会社全体のことを考えられなくなることに起因している。従って、会社全体の意思を統一し、お客様が目標を達成することの支援能力を測る指標が必要となる。それがコンバージョンであり、お客様が目標を達成するための責任を担う役目こそが、CPOなのだ。
さらに、コンバージョン率の向上を考えるには、マーケティングだけでなくセールスの視点も必要となる。場合によっては、それ以外にも複数の部署をまたがって仕事をしなければならないこともある。
つまりこのことは、コンバージョン率を向上させるための組織改善と、それを全社的に統括すべき存在が必要であるということを意味している。
とは言え、CPOの概念を導入している企業はまだまだ少ない。しかし、導入している企業は素晴らしい成功を収めている。難しいのは、企業が大企業になればなるほど、「縄張り」という名の制限があり、CPOを置くのが難しくなる。しかし、こうした企業ほどCPOの存在が必要だ。
CPOはこの10年間で重要性を増してきた。2005と2006年のCPOの数を比べれば、その数は倍増するだろう。米国では3〜4年経てば、企業がCPOを置くのが当たり前のことになり、そのことが存続できる企業の条件にもなると考えている。
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