韓国版「番号ポータビリティ合戦」を振り返る

佐々木 朋美2006年10月23日 13時50分
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 いよいよ日本で24日から番号ポータビリティがスタートする。携帯電話事業者(キャリア)にとってはより多くのユーザーを誘致するための大きなチャンスで、連日激しい宣伝合戦が繰り広げられているが、これより2年半以上早く番号ポータビリティが開始した韓国でもそれは同様だった。

 韓国の番号ポータビリティは、キャリアを移動する際、番号が変わる手間を無くす目的があるのもさることながら、SK Telecom(SKT)による市場の独占状態を少しでも緩和しようという狙いもあった。

 じつは韓国ではかつてキャリアごとに識別番号が異なっており、基本的にSKTは011、KTFは016、LG Telecom(LGT)は019だった。しかし011が跳びぬけて高いブランド力を持っていたため、番号のみでキャリアを選ぶ人も結構多かった。こうした状況に対し政府では3社に公正な競争を行わせようと、新規加入の際は3社とも識別番号を010に統一することが、番号ポータビリティとともに実施された。

 番号ポータビリティ開始直前の2003年12月末当時、SKTの市場占有率は54.5%。KTFとLGTはそれぞれ、31.1%、14.4%だった。そのため韓国の番号ポータビリティは、2004年1月1日から6月末まではSKT会員のみ、2004年7月1日から12月末まではSKTとKTF会員のみ、2005年からはSKT、KTF、LGTというように、市場占有率の低いキャリアに配慮し段階的に実施されていった。

 下位2社にとっては加入者誘致の絶好のチャンスであり、逆に防戦が予想されるSKTは加入者引止め対策が必要となる。3社とも社運をかけるほどの勢いで、2003年後半から激しい広告合戦が繰り広げられていた。あまりの激しさに市民団体が「過度な広告が消費者を惑わす」と自制を訴えかけたほどだ。

 こうした広告合戦に加え、3社はそれぞれ独自のマーケティング手法も行った。SKTでは3社で唯一800MHz帯を使用していることをフル活用し、ローミングや通話品質の向上に努めた。またSK Communicationsが運営する「サイワールド」用の電子マネープレゼントや、「SKガソリンスタンド」利用で会員制カードのポイントを通常の6倍プレゼントなど、手広く展開するグループ会社も駆使した。

 KTFもSKTに負けじと通話品質を改善した。単に基地局を増やすのではなく、顧客から通話品質に関する苦情が来ればそれを24時間以内に処理し、その結果を案内するというものだ。またヘビーユーザーに対しては専門の相談員を配置し、1対1の相談や案内を行うなど徹底的に「尽くす」サービスを行った。

 LGTでは携帯電話故障の際、直接スタッフが顧客の元へ出向いて対応にあたるという親切極まりない「エンジェルサービス」を実施。このサービスと番号ポータビリティへの関心を高めようと200人以上によるカーパレードを全国主要都市で行うなど、選挙顔負けの派手なイベントを断行した。

 また端末では、低価格帯の携帯電話が比較的目立っていた。韓国では当時、補助金が法律で許可されていなかったため、20〜30万ウォンで「低価格帯」と言われるほどの高価ぶりだったのだ。そのため金銭的な負担感を減らしながら気軽に番号ポータビリティを行えるよう、取り計らったものと思われる。

 代表的なのはVK Mobileの端末だろう。海外市場への端末輸出専門だった同社だが、2003年12月、SKT向けに32万画素のカメラと26万カラーTFT LCDを搭載したコンパクトな「VK100」で韓国市場に初登場した。以降、低価格帯を中心に端末を発表し続けたが、その価格攻勢が裏面に出て2006年7月に倒産。法廷管理(日本でいう会社更生法)下となってしまった。

 そして番号ポータビリティ開始から約2年半以上が経った現在の韓国市場は、さすがに以前のような激しい広告合戦は姿を消している。市場占有率は2006年8月末時点でSKTが50.5%、KTFが32.2%、LGTが17.3%となっている。

 SKTが占有率を落とした反面、LGTの伸びが目立つ。それは番号ポータビリティのおかげのみ、とは決して言えないのだが、011神話は少しずつ薄れつつあり、またそれに伴ってSKT独占という構造も緩やかに変わってきてはいるようだ。

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