今日は、Something NewならぬSomething Oldな話題をひとつ。
PC業界を代表するイベントのひとつであった「PC Forum」が、このほど30年におよぶ歴史の幕を閉じることに決まった。3年ほど前からCNET Networksの一部として活動を続けてきていた同フォーラムのウェブサイトには、現在「お別れ」の挨拶とともに2006年3月に行われた「PC Forum 2006が最終回になる」との告知が張り出されている。
ご存じの方には改めて申し上げるまでもないが、PC Forumは1970年代後半に刊行された業界向けのニューズレター「Release 1.0」と夫唱婦随する形で続いてきていたもので、CompaqやLotusの立ち上げを支援したBen Rosenにより始められたこの2つの取り組みは、その後双方の「顔」となるEsther Dysonに引き継がれ、比較的最近まで大きな影響力を持ち続けてきた。ちなみに、BusinessWeekは往時のPC Forumについて、「業界人にとっては必ず顔を出したい社交の場で、その年の課題がそこで決まった('PC Forum conferences...were must-attend schmoozefests that solidified the issues of the coming year.')」と評している。
また、実際に「過去の講演者」のページを見てみれば、この一文が誇張ではないことがすぐにわかる。公開されているなかでもっとも古い1983年の欄には、William H. Gates(Chairman, Microsoft)、Steven P. Jobs(Chairman, Apple Computer)といったお馴染みの名前のほかに、Mitchell Kapor(President, Lotus Development)やKazuhiko Nishi(Chairman, ASCII Corp)といった名前も見受けられる。
ちなみに、翌85年には、AppleのJohn SculleyやKleiner, PerkinsのJohn Doerrが、86年にはOracleのLawrence J. Ellisonがそれぞれ初参加したようだ。また、Ashton-TateやTandonといった今はなきコンピュータメーカーの名も並んでいる。
さて。当事者のEsther Dysonはこの決定について、ZDNet.comのなかにあるブログで事情を説明しているが、正直なところ、この説明はどこか釈然としない感じが残るものとなっている。
Dysonはまず、幕引きを決めた心境について、「25年やってきて、やっと(2006年に)満足のゆくイベントを行えたから」と説明する。ご当人いわく「やっとPC Forumのリリース1.0(出荷準備OKの段階)に達した」のだそうだ。また、3年ほど前に(Release 1.0とPC Forumの運営会社であった)EDventure HoldingsをCNET Networksに売却した目的については、「PC Forumを他人の手に委ね、自分は他のことをできるようにしたかったから」とした上で、「やっとそれができる状態になったのだが、誰か別の人間に舵取りさせてまで(PC Forumを)続けることはないとの選択をCNETが行った」と述べている。
PC業界を黎明期から支えてきた人々もすでに50歳を越え、なかにはBill Gatesのように第2の人生に歩み出し始めた者もいる。また、現役バリバリに思えるSteve JobsやLarry Ellisonについても、シリコンバレーではすでに「後継者選び」に関する心配の声が上がっているようだ。
さらに、PCからインターネットへ、そしてWeb 2.0へと業界内の注目の重心がシフトしていくなかで、たとえば8月に開いたパーティに700人もの参加者を集めたMichael Arringtonのような新しいパワー・ブローカー(?)も登場し始めている。そう考えると、Esther Dysonによる今回の決定もそれほど意外なものではないかもしれないのだが・・・いずれにせよ、真相は「闇の中」のまま、一時代を画したイベントが幕を閉じる。
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