New Industry Leaders Summit(NILS)では、Web 2.0をテーマとして取り上げ、さまざまな切り口でセッションが行われた。最後のセッションは、これまでの総括という形で「ネットメディアの将来展望」と題し、ネット系サービス、メディア企業から5社の代表が招かれた。
登壇したのは、オールアバウト 代表取締役社長 兼 CEO 江幡哲也氏、カカクコム 前代表取締役社長 穐田誉輝氏(6月28日に社長を辞任し取締相談役に就任)、ゴルフダイジェスト・オンライン 代表取締役社長 兼 最高経営責任者 石坂信也氏、楽天 取締役常務執行役員 兼 ポータルメディア事業カンパニー社長 吉田敬氏、リクルート インターネットマーケティング局 局長 伊藤修武氏の5名。モデレーターはNILSの主催者であるグロービス・キャピタル・パートナーズ パートナー 小林雅氏が務めた。
今回のセッションでは、Web 1.0から2.0への進化をどう取り入れていくかという点を中心に話が進められた。その中で、メディア企業としてオールアバウトの江幡氏は、Web 2.0を考えていくには3つの大きなポイントがあると述べた。
1つ目は、コンテンツの作成でWeb 2.0的テクノロジーをどう取り入れていくかということ。2つ目はユーザーとの接点をどう強化するかということ。そして、3つ目にはマネタイズに向ける仕組みをどうするかということだ。
テクノロジーをどう取り入れ、ユーザーとの接点をどうするかという点についてはWeb2.0の流れを積極的に取り入れていくが、3つ目に挙げたマネタイズは、オールアバウトとしては1.0のままでいくという方針だという。
「エコノミクスを下げるという、テール系で新しい傾向を作っていくというのがネットの主な流れです。しかし、稼ぐという面ではヘッド・ミドル系で十分儲かることがわかっています。ここは2.0とは違うので、取り残されている感じはします」(江幡氏)
「Web 1.0の代表的企業であった」とするリクルートの伊藤氏は、媒体者であり広告主でもあるという立場としてWeb 2.0への取り組みを語り、広告主としては、広告がロングテール化されていく中で劇的に費用対効果が上がっていることを指摘した。
「今リクルートでは、キーワード広告で常時200万〜250万のワードを使っています。運用面で大変ですが、バナー広告を中心に集客していた頃の費用対効果を比べると劇的な変化を遂げています」(伊藤氏)
また、リクルートのメディアとしての取り組みについては、現在は掲載料を前課金という形でビジネス展開をしているという特徴がある。メディアをWeb 2.0側に寄せていくほど、構造的にはアフィリエイトのような後課金型にならざるを得ないと伊藤氏は指摘し、安易にWeb 2.0に流れれば高収益モデルが失われていく可能性があることを懸念していた。
「前課金型のモデルとWeb 2.0的なコンテンツを融合できる可能性のある唯一の会社がリクルートではないだろうか。クライアントを啓蒙しながら実現させていけば、ベストなビジネスモデルを確立できると思っています」(伊藤氏)
専門型の深堀り企業として、ゴルフダイジェスト・オンライン(GDO)は、メディアとコマース、サービスの3点を組み合わせることによって、ユーザーに付加価値を提供してきた。
石坂氏はWeb 2.0の流れを取り入れる際、ユーザーオリエンテッドな思考で立ち上げていく必要があると考える。これまでブログ、ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)などを立ち上げてきたが、それを少し改め、今は全体像を理解し、先読みをして今後どうすべきかを模索していく必要があるという。
システムを作る上で開発者のコミュニティー、メディアの公開など、Web 2.0的要素が取り入れられていく一方で、楽天の吉田氏は、Web 1.0と2.0の本質的な概念には、それほど大きな違いがないという。
「世の中には不便なことがあり、それをどう解決して価値を提供していくか。便利ならば受け入れられていきます。これが楽天でやってきたビジネスモデルです。これを推し進めていく中で、まだ遅れているところに対してWeb 2.0を取り入れて強化していくというのが楽天の考えです」(吉田氏)
ロングテール型の広告に対して吉田氏は、広告配信技術の変遷を感じているという。1996年にバリュークリックが登場し、その後、さまざまな配信技術が加わってGoogleのアドワーズ広告に至るまでの変遷を例として述べた。そして、今後の広告がアフィリエイト的になっていくのではないか、その流れの中で他のプレーヤーが登場する可能性はあり得るという。
また、穐田氏は、Web 2.0をサービスの進化として捉えている。1997年にサービスを立ち上げ、秋葉原で配られている激安チラシを集め、それに載っていないものを調査し、ネットで公開した。さらに掲示板を集めて口コミ情報を中心としたコンシューマー・ジェネレーテッド・メディア(CGM)を確立。累計で500万件以上の口コミ情報を提供してきた。
「今後はそれを進化させ、消費者のためのエージェントとしての機能を付加していきたいと考えています。それがWeb 2.0時代におけるカカクコムの進化です」(穐田氏)
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