2007年3月期の第1四半期(2006年4〜6月)決算の発表が一巡したが、今回主力ハイテク関連企業決算のなかで最も大きなポジティブサプライズを市場に与え、株価面でもインパクトを伴う反応をみせたのが、AV機器大手のパイオニアだ。
同社の株価は久しぶりに2000円台を回復し、4月の年初来高値にあと一歩迫ってきた。パイオニアの業績改善傾向は果たして本物なのか、今後の株価はどう推移するのかを探った。
2007年3月期の第1四半期連結決算は、売上高1916億円(前年同期比20%増)、営業利益70億円(前年同期は89億円の赤字)、税引き前利益80億円(同66億円の赤字)、純利益56億円(同53億円の赤字)と大幅な黒字転換となった。さらに、これに伴って今3月期通期の連結業績についても、従来予想の売上高8300億円を8450億円に、営業利益120億円を180億円に、税引き前利益135億円を190億円へ、純利益30億円を75億円へとそれぞれ大幅に増額修正した。
同社は主力の薄型テレビやカーエレクトロニクス事業での採算悪化から、2005年3月期以降、業績が急激に悪化したのを受けて株価も急落。2006年3月期には構造改革費用の大幅な赤字に転落し、2005年11月には一時、1株純資産割れの1410円まで売り込まれる事態に追い込まれた。
そこで同社は、収益性に乏しかったOEM事業を大幅に縮小し、高機能の民生用に特化した。製造工場の減損処理も含めて大幅赤字を一括計上するなどPDP(プラズマディスプレイパネル)の収益性の改善を図った。こうした積極的なリストラの推進と、欧米や国内景気の回復、サッカーワールド杯開催に伴う薄型テレビの特需にも助けられるかたちで、第1四半期の業績が大幅な回復をみせたわけだ。
事業部門別に今回の第1四半期と前年同期の営業損益を比較すると、PDPテレビなどのホームエレクトロニクス部門は、前年同期の123億円の赤字から3億9700万円の赤字へと赤字幅が大幅に減少した。また、カーナビゲーションシステムなどを中心とするカーエレクトロニクス部門の営業利益は前年同期の53億円から75億円へと拡大をみせた。
さらに、今期通期の営業利益が従来予想の120億円から180億円と大幅上方修正された背景には、画質の高さをセールスポイントとした同社のPDPが欧米の専門店で堅調な伸びを示し、販売価格の下落が想定に比べて小幅に推移していることが大きく寄与した。
こうした業績の急回復を背景に同社は約300億円を投じて山梨県南アルプス市にプラズマディスプレイテレビの新工場を建設し、2007年度内にも稼働する。これにより、2008年度の出荷台数を2005年度の2倍に相当する130万台に引き上げる予定だ。
同社の株価は、7月19日に1630円の安値をつけたあと、第1四半期の好業績・今期通期の業績上方修正観測を織り込みながら上昇に転じ、決算発表翌日の8月1日には2110円まで上昇、4月28日につけた年初来高値2120円にあと10円の水準まで肉薄した。
前週末8月11日現在で、株価チャート面では、75日移動平均線を25日移動平均線が下から上へ突き抜けるゴールデンクロス(株価の先高を示唆する指標とされている)を示現している。そのうえ、直近の東証信用倍率が0.47倍と圧倒的な売り長(信用売り残は将来的な買い需要のため、最近の信用取引の売残の急激な増加で、株価上昇要因のひとつとされる)状態にある。
したがって、年初来高値を更新すると、売り方の買戻しも加速して株価上昇に拍車がかることも予想される。ただ、株価はすでに連結PERで50倍近くとかなりの割高水準に達していることも確かで、上値はある程度限定されることになりそうだ。
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