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ロボットカー開発者に聞く--人工知能と消費者向けロボットの未来 - (page 2)

文:Candace Lombardi(CNET News.com) 翻訳校正:編集部2006年08月10日 02時32分
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--次に出てきそうな用途はなんですか。

 現在でもすでに、このような技術の用途として、ブレーキをかけたり加速をしたりして車間距離を自動的に取る制御技術を持っています。また、車線を外れた際に警告するシステムも良くなってきていますね。緊急時に人間の代わりにブレーキをかけるシステムも開発中です。それらの複合技術で、速度は非常に遅いのですが駐車の際の運転補助システムも多く出ており、デモンストレーションもされています。それから非常ブレーキシステムもあります。衝突が避けられないことが分かったとき、自動車が人間の代わりに衝突の衝撃が最小限になるよう動作しようとするわけですね。今現在もいろいろなことが進行中です。ですから、自動車がよりインテリジェントになっていくと予想するのは、そんなに非現実的なことではありません。これは、実際の観察から言えることです。

--そういった研究開発を推し進める力は何だと思いますか?必要性でしょうか。(日本の社会的コミュニケーションを取るロボットのような)目新しさでしょうか。それとも、単に興味のある人たちによって進められているのでしょうか。

 そのすべてでしょうね。ロボット工学を推し進める力には本当に多くのものがあります・・・。人々はずっとロボットを持つことを夢見てきましたし、ロボットを他の機械とは違う、何か特別なものだと考えています。例えば、食器洗い機はある意味でロボットだと言ってもいいのですが、人々はそれをロボットだとは思いません。ロボットはわれわれの複製だと考える、数十年来の昔から続く夢があるのです。ロボット工学には、やるべきことがたくさん残っています。例えば、われわれがやっている自動車の運転も含めて。利益は明らかですよ。Roombaは好奇心と、最先端の技術と、実際の有用性をミックスしたものです。Roombaは世界最高の掃除機ではありませんが、ロボット掃除機を持つなんてすごく素敵なことじゃないですか。

 その点を究極まで推し進めたのが、意図的に何も目的を与えられていない、ソニーの「AIBO」だと考えています。つまり、AIBOには用途がない。「われわれがこれまでできなかったことがAIBOによってできるようになった」というような、実用的な目的はありませんね。これは賢いことだと思いますが、ソニーはわざとこの犬のロボットに単一の目的を与えるのを避けたのだと思います。AIBOはエンターテインメントのためのものであり、ユーザーを魅了し、人間にとって新しい経験をもたらし、人々はそれを話題にします。ロボット工学の素晴らしいところは、ロボットとのコミュニケーションという、食器洗い機ではできないすばらしい経験をさせてくれることです。

--消費者向けのロボットの見かけや動作は、消費者の購入意欲をそそるのにどのくらい重要なのでしょうか。

 現時点ではわかりません。ロボット工学ではこれまで多くの方向性の異なる試みが行われてきました。ロボットは人間に似ているほどよいと考え、ロボットを人間に似せた形にしようとしている人たちもいます。逆の考え方もありますね。例えば、ロボットカーに関して言えば、私はロボットが車の形をしている方が、人間を尊重する形になり、よいと考えています。私は、ロボットを人間に似せたり、人間が得意な分野に分け入らせようとすることはしませんね。その結果、SFの中ではロボットとして扱われないようなものになるかも知れませんが、構いません。

 人間の振る舞いや外見を真似させる強いニーズはあるのか、そういったものがわれわれにとって本当に役に立つのか、いずれ判断しなければならない時が来ると思います。私は時々、賢くて私の代わりに考えてくれる機械は欲しくないと感じます。私が欲しいのは信頼性が高くて、同じことをやらせたときにその結果が予測できる機械です。Microsoftの「Paper Clip」(編集部注:MicrosoftのOfficeアシスタントの1つ。日本の製品ではイルカがデフォルトとなっている)は、私にとっては迷惑極まりないものです。どこまでやるかについては理想的なバランスがあるのでしょうが、先ほども言ったように、今のところ何が最適かは誰にも分かりません。10年から15年後には、例えば高齢者は自分の相手をしてくれるヒューマノイドロボットを好むのか、それともロボット車いすやロボット歩行器のような、人間には見えず、特定の機能を提供するものを好むのか、分かるでしょう。

--Microsoftが新しくロボット工学研究グループを作り、最初のロボット向けアプリ開発ソフトウェアである「Microsoft Robotics Studio」を発表しました。企業の開発者でも個人の開発者でも利用できる、Windowsベースのツールキットで、様々な製品向けの知的アプリケーションを作れるものです。Microsoftがロボット工学の分野に進出してきたことで、どんなインパクトがあるでしょうか。

 これがきっかけとなって、この分野が目覚ましく進歩する可能性は十分あると思います。他の技術でも同じことですが、多くの要素が1つにまとまる必要があるのです。適切な技術がなければなりませんし、一般の方に適切な見方をしていただかなくてはなりませんし、一般の方からの適切な支持も必要です。ロボット工学はこれまで、企業にとって重要なものとは考えられていませんでした。これは、大企業がロボット工学に真剣に取り組む初めて、あるいは2番目くらいの機会でしょう。Microsoftとはこれまでに何度も話しています。Microsoftの最初の一歩は良いものだったと思います。ただ、今後も製品を出し続けていき、授業で使ってもらったり、趣味にしてもらったり、科学者以外の人に使ってもらったりというように、利用者の裾野を広げていく必要があるでしょう。Microsoftがこの製品に取り込んだことの多くは、とてもよいものですし、うまく選ばれていると思います。ですから、私はこの動きはロボット工学の分野によい影響を与えるだろうと思っています。

--Legoの「Mindstorms NXT」などのプログラム可能なロボットが市場に出ていることは、消費者向けロボット市場にどういう影響を与えるでしょうか。

 趣味のためのプログラム可能なロボットは素晴らしいと思いますね。多くの若者にロボット工学の門戸を開き、この技術を違う形で捉えてもらえるようになるだろうと思います。時々、ロボット工学はVisiCalcが発明される以前のパソコンに似ていると考えることがあります。VisiCalcは特に目的を持ったソフトウェアではありませんでしたが、熱心なファンが購入し、その技術に魅了されました。現在のLego Mindstormsにも同じことが言えます。コンピュータの分野では、面白いアイデアの95%がVisiCalcに続いて出てきたことは明らかです。VisiCalcはコンピュータの分野を完全に変えました。例えばワープロ、ネットワーキングなどがそうですが、それらは、ずっと後になってから現れてきました。ロボットに何ができるのかをイメージしてみて下さい。家の中での利用法を考えてみても、今は予想もしていないような素晴らしい利用法が発明されそうだと思いませんか。Lego Mindstormsはその助けになるだろうと考えています。

--Thrunさんは、自分自身が知的好奇心を持っている特定の分野を研究するのではなく、ロボット工学を導く人間として、社会全体にとって意義のあるプロジェクトを推進することが自分の仕事の一部だと考えられることはありますか。

私について言えば、社会にとって意義のあることと、私が興味を持っていることはほぼ100%一致しています。社会を前に進めることが、科学者としての私の役目です。ですから、社会にとって意義がないけれどもそれ自体に興味深い研究をやったとしても、私は面白いと感じないでしょう。私がロボット工学にのめり込んでいるのは、これが非常に若い分野だと考えているからです。われわれは今ロボット工学の16世紀にいるようなものです。計算機科学もやはり若い分野ですが、そうですね、今17世紀というところでしょうか。これらの技術によって、社会は大変な勢いで変化しています。私の仕事は、その変化をプラスの方向に向けることです。

--Thrunさんはカーネギーメロン大学にいらした時、PEARLという個人向けの高齢者支援ロボットに取り組んでいらっしゃいましたね。PEARLが実用化されるまでには、何年くらいかかるでしょうか。

 それは難しい質問ですね。自動車の話ならばもっとよく分かるのですが。現実的な話としては、PEARLはどちらかというと高齢者にはどのようなニーズがあるかを理解しようとする実験的な試みでした。われわれ自身が介護の現場に入っていくことで、実際にどういうニーズがあるかを理解することができました。PEARLから生まれてきた技術の例に、今現在ペンシルバニア州ピッツバーグにある施設で実験中のロボット歩行器があります。その外見はPEARLとは似ても似つかないもので、使っている人を案内したり、邪魔になるときにはそれ自身が避ける仕組みが入っています。このような特定の用途を持つ器具は、あと5年から6年で登場する可能性が十分ありますね。汎用のヒューマノイドロボットの登場には15年くらいかかるでしょう。

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