Inform--変わる新聞社サイトの対グーグル用秘密兵器?

坂和敏(編集部)2006年07月31日 23時35分

 今日は、TechCrunchと、The New York Timesがそれぞれ採り上げていた「Inform」という会社の話を紹介します。

 The Washingtonpost.com、The New York Sun、The OklahomanのNewsOK.comの3媒体が、このInformというニュースアグリゲーションサービスと契約し、自社サイト内に掲載するニュースの関連記事として、他社記事へのリンクを追加するようになるとのことです。

 大手新聞社などのメディアサイトでは、昔から「デスティネーション」として、より多くのユーザーを呼び込み、できる限り囲いむことを至上命題としてきました。ところが、Google NewsやYahoo Newsなど(そしてDiggも)の台頭によって、多くの人々がまずこれらのニュースアグリゲーションサイトに真っ先に向かうようになってしまいました。それに伴って、広告費もアグリゲーションサイトに流れてしまい、とくにテレビやオンラインなどの他媒体に読者を奪われている新聞(少なくとも米国では)にとっては一種の死活問題にもなっているようです。

 New York Timesの取材に答えたNewsOK.comの責任者、Kelly Dyer Fry氏は、Informとの契約による関連リンクの提供で、ページビューが最低でも3倍にはなると見込んでいるとのこと。また「これは、ちょうど3万人のジャーナリストを雇ったようなものだ」との見方を示しています。念のためにいうと、Informのサービスを使う新聞社側は、あくまで自社サイトを読者のファーストオプションにすることが目的で、またリンクされる他の新聞社側でも「自社サイトへのトラフィック流入増につながる」としてこうした動きを歓迎していると、New York Timesの記事には書かれています。

 ところが、TechCrunchを主催するMichael Arringtonは、肝心の「Inform Publisher Services」について、「正直なところ、関連性の高いコンテンツはあまり見られなかった("Frankly, I didn’t see a lot of relevant content.")」とし、さらに、「記事にこれだけのリンクが新たにつくといっても、ほとんど関連しないコンテンツを見せられていては、読者はすぐに飽きてしまうのではないか("But with all the new links in the articles, it seems that readers will quickly tire of seeing a results page with barely-related content put in front of them")」との考えを示しています。

 このInformが、新聞社にとってGoogle NewsやDiggなどと対抗していく上での、心強い助っ人になるかどうか。それは時間の経過とともにはっきりしていくでしょう。いずれにしても、これまで囲い込みを専らとしていた大手メディアサイトが、時代の趨勢に押し流されたカタチとはいえ、外部へ扉を開くことは確実に大きな変化といえるのではないでしょうか。NewsweekやUSA Today、New York Timesなどが実験を進める「マイペイジ」化の動きとともに、これからも注目していきたいと思います。

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