2006年3月7日、国際的な無線LANのセキュリティ規格を決める会議が行われた。規格の候補は米国のIEEE802.11i、そして「WAPI(Wireless LAN Authentication and Privacy Infrastructure)」という名の中国独自規格。25人による投票の結果WAPIは僅か8票の支持しか得られず、WAPIは国際標準規格となれなかった。日本も投票しており、日本はWAPIの国際標準化には反対票を投じている。
中国代表団は投票結果に「これはIEEE802.11iを通すためのだけの会議で、不公平だ!」と怒り退場した。また「IEEEが仕組んだ妨害行為だった」とISOに対し4月と5月に2度提訴した。その結果ISOは、無線LANについて技術討論する会議を行うよう各国の代表を招集するとした。
そして6月7日より米国、中国、日本など9カ国とISOとIECの総本部代表が集い、再び会議が開始された。会議はまたもWAPIを推進する中国代表団が「不公平な会議で何の意味もないもの」と捉えるもので、中国代表団はここでも怒り退場した。今回の一連の会議後、中国の多くの著名メディアがこの結果と、不公平さに対する不満を連日取り上げている。
IEEE802.11iかWAPIかという問題は今に始まったわけではない。WAPIは2003年に策定され、その後中国は翌年の2004年6月1日よりWAPIに準拠しない無線LAN製品の製造・販売を禁止する措置を発表した。時はおりしも無線LANも大きく絡むCentrinoテクノロジ搭載のノートPCが販売されており、米国政府を中心にメーカーも加わり、中国と期限近くまで協議した。その結果、中国はWAPI実施を無期限延期とした。
その後中国はWAPIを国際標準にするべく、ファーストトラック投票にかけることを提案する。これに対し翌年2005年9月、ISOとIECがIEEE802.11iとWAPIをファーストトラック投票にかけることを決定し、WAPIの全体投票の期限を、冒頭で紹介した2006年3月7日とし、そして冒頭に紹介した会議に至る。
中国発の国際的標準規格は目立ったものでは現在、中国国内で第三世代携帯電話に採用されるTD-SCDMAくらいしかないのが現状だ。現状では生産時にライセンス料が発生するあらゆるものに対し支払いを行わざるを得ない状況であり、この現実を打破するため、中国発の国際標準規格を立てなければならないという課題に直面している。
WAPIを推進する中国はまだ諦めたわけではない。中国メディアに対し「WAPIはセキュリティに優れているので、次世代で採用される可能性もある」とコメントしている。
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