富士通研、次世代ケータイの電波受信品質を向上する技術--2010年の実用化目指す

 富士通研究所は4月19日、2010年頃に実用化が見込まれる次世代移動通信システム「3GPP-LTE」の携帯端末において、受信品質上問題となるマルチパスの状態を正確かつ少ない演算量で推定できる「仮想チャネル追加法」を開発したと発表した。

 マルチパスとは、基地局から送られた電波がビルなどの反射により複数の経路で携帯端末に届く状態のことで、これは受信品質の低下を引き起こす。受信品質を上げるには、受信した電波のマルチパスの状態を推定するチャネル推定という技術を用いるが、正確にチャネル推定をするには、受信した電波から受信したい信号とマルチパスによる雑音とを高精度かつ効率的に分離することが求められる。

 広く使われている従来手法は、一定領域の雑音を単純に取り除くもので、雑音と同時に受信したい信号の一部も除去されてしまうため、推定精度は低かった。一方、理論上最も高い精度でチャネル推定ができるとされているMMSEアルゴリズムでは、演算量が膨大となり、携帯端末への実装は現実的ではなかった。

 今回開発した仮想チャネル追加法は、受信した電波の有効領域の外側に仮想的な信号を新たに加えて処理してから、従来のように一定領域の信号を取り除くもの。これにより、受信したい信号と雑音との分離を、MMSEアルゴリズムと同等の高い精度で行うことができる。また、仮想的な信号を加えるにあたって、演算量の少ない計算手法を開発して、全体の演算量もMMSEアルゴリズムに比べて約10万分の1に削減できたとしている。

 富士通研究所は、この技術により、3GPP-LTEにおいて高性能な受信機を携帯端末に実装することが可能になるとしている。また、本技術は、WiMAXのような次世代無線LANにも適用が可能だとしている。3GPP-LTEの標準化仕様に合わせて、2010年頃の実用化を目指す。

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