アップルは本当にそれほどすごいのか

文:Michael Kanellos(CNET News.com)
編集校正:坂和敏(編集部)
2006年04月03日 13時02分

 Apple Computerがそれほど素晴らしい会社だとしたら、なぜあれほど小さいのだろうか。

 Appleを巡るさまざまな話--同社が創業30周年を迎えたことから、そうした話をたくさん見聞きしたことだろう--を聞いていると、まるで同社が海王星への初の有人宇宙飛行を成功させたか、あるいは長除法でも発明したかのように思えてくる。しかし、同社が最近成し遂げたことといえば、Foghatのシングルをウェブで発売したり、iPod用の皮製ケースを99ドルで発売したことくらいなものだ。

 Appleの全世界のコンピュータ市場におけるシェアは、昨年末時点で2.3%。この数字を世界の人口にあてはめてみると、フィリピンとガーナ、それにスペインの国民の数を合わせたのとちょうど同じくらいの割合になる。

 Appleは2005年に474万台のMacを出荷したが、これはDellのPC出荷台数の増加分570万台よりも20%も少ない。つまり、Dellの出荷台数はApple全体の1.2倍も伸びているのに、それでも投資家はDellが力を失いつつあると心配しているということか。

 相対的にみると、Appleのパソコン市場のシェアは今も縮小し続けている。1990年には、Appleは世界最大のPCメーカーで全体の10%のシェアを持っていた。しかし、1997年第3四半期には同社のシェアは7%まで下がっていた。そして、最高経営責任者のGil Amelio氏を解雇するなど、最も厳しかった時期には、同社のシェアはわずか2.8%にまで落ち込んだ。つまり、Steve Jobs氏が同社に復帰したときには、Macグループの規模は(1990年の)約3分の1になっていたのだ。

 Macの出荷台数は現在、パソコン市場全体よりも早いペースで成長しているが、それをいうならAcerやGatewayとて同様。AcerはAppleよりも規模が大きく、またGatewayは米国で第3位とApple(第4位)よりも上位に付けている。

 もちろん、規模がすべてではない。ほかのPCメーカー各社とは異なり、Appleは黒字を計上しており、またiPodでパソコン以外の市場への事業拡大にも成功している。さらに、Appleにはパソコンのデザインと一般ユーザー向けの技術に対する強い影響力があると、IntelのバイスプレジデントDeborah Conrad氏などは指摘している。

 科学関連のカンファレンスに足を運ぶと、Macを持ち歩いている参加者をほかのイベントよりも多く見かける。つまり、Macは明らかに知識人に好まれている。しかも、Appleや同社の製品はとても好まれている。Appleで働いていたことがある私の義弟と義妹は、当時のことをべた褒めする。2人あわせて都合3回も解雇され、そのうち1度はSteveからクビを言い渡されたにもかかわらずだ。

 同社にはこれらすべてを達成し、さらに多くのコンピュータを販売できる可能性がある。ならば、なぜ実際にはそうなっていないのか。

 その理由は、Appleが友人よりもアイデアを重視する会社だということに尽きると思う。ある意味で、これは多くの人が直面する問題だ。つまり、素晴らしい才能に頼って生きていくか、それとも他者とうまくやっていくことで生きていくか、ということだ。

 アイデアは素晴らしい。アイデアなくして文明は進化しない。しかし、これを受け入れることも難しい。ボルテールが何年もの間投獄や追放の憂き目にあったのは偶然ではない。政治でも同じことが起こる。知性に訴える候補者が最初はリードしても、有権者は常にクリントンやレーガンのように、個人的に魅力のある方に傾いていく。

 Appleの歴史を見ると、他社との関係が良かったとは必ずしも言えないことがわかる。同社はかつて他社にOSをライセンス提供していたが、クローンマシンが自社のシェアを奪い始めると、このライセンスプログラムを中止してしまった。筆者は1990年代に複数のApple販売代理店にインタビューしたことがあったが、彼らは教育市場へのMac販売承認を取り消したAppleに対して苦々し思いを語っていた。そして、多くの業者はほかの顧客にAppleを売り込まない形で報復した。また部品メーカーや小売業者の間では、今でも同社に対する不満が絶えない。

 MicrosoftやIntelならそのような態度を取らない。どちらも、顧客が逃げそうだとの噂を耳にすれば、実際上翌日には営業幹部がその顧客のもとへはせ参じる。

 Appleのコンピュータの価格に、例の300ドルのプレミアムが上乗せされていることは、あらためて言うまでもない。Appleの世界観によると、消費者は先端技術に対して、それに見合う対価を支払うべきだという。たとえば、170度の視野角を持ち、輝度も高い液晶画面には、その分の対価を支払うべきだというのだ。だが、他社の多くは違う考え方をしている。「ここは米国で、消費者は価格に敏感だ。ならば、プリンタを無償で付けよう」というのが彼らの考え方だ。

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