次に、第2部では「IT・コンテンツベンチャーにみる新事業開発の今〜シナジー効果を生み出すグループ戦略とは?〜」と題して、インデックスの取締役でメディア・ソリューション局長である大森洋三氏、サイバーエージェントの取締役である西條晋一氏をパネリストに迎えた。
大規模M&Aが目立つインデックスだが、大森氏はまず「コンテンツ提供者としては、100の理論よりも1つのヒットを大事にする面がある」と説明した。こうした流れの中では、年齢や経験は関係なく、ユーザーにどれだけ喜んでもらえるかというのが重要になるとした。そして、「朝になかったチャンスが夕方にくる、夕方に来たチャンスを明日までに自分たちが具体的なかたちにするといったコンセプトある生ものだ」と事業展開の真髄を語った。
そして、シナジーの具体例としては、オークションやショッピングを展開するディー・エヌ・エー(DeNA)との資本業務提携をあげた。大森氏は「アライアンスを組ませてもらったのは、ちょうどPCの市場ではヤフーのオークションにDeNAが苦戦していたときで、モバイル事業を一緒にやろうと持ちかけた」という。その結果、DeNAはモバイル分野で躍進でき、「既存にあるものをレバレッジすることでもっと価値を高められる」(大森氏)との考えを実行できた成果といえる。そして、「M&A=足し算だけではなく、M&Aの中でもこうした軸を持つことが大切ではないか」と続けた。
この一方で、西條氏は「サイバーエージェントは、M&Aが得意ではない」と語った。それは、小さく産んで大きく育てるということを創業以来取り組んでおり、そのノウハウがたまったところで、「新規事業が生まれる仕組みを制度として確立している」という。
この制度は「CAJJプログラム」(サイバーエージェントのCAとジギョつくのJ、ジンつくのJ)と呼ばれている。1つのJは事業をしっかり作れる仕組みを持ちましょうという意味で、もう1つのJは人材育成において他社に負けない仕組みを作りましょうという意味を持つ。CAでは、社員であれば誰にでも新規事業を提案する権利があり、年に2回このプログラムに基づいたコンテストを開催している。
コンテストにはだいたいまず50ぐらいの案件が集まり、そこから選別して20人ぐらいにプレゼンテーションをもらう。そして、グランプリをとった人はプロジェクトマネージャーとして実際に新規事業を立ち上げる。
企画が通り、役員会をとおったら、まずJ3というレベルからスタートする。そして、利益の水準が粗利益で500万円を3カ月平均で突破すればJ2のレベルに昇格する。ただし、3000万円以上の赤字にしてはいけない。J2からJ1へ昇格するには、粗利益で月次1500万円、かつ黒字化しなければならない。だいたいJ1に昇格すると、年商で10億円ぐらいの黒字の会社になっているという。つまり、この制度によって毎年最低でも2つの新規事業が生まれるというわけだ。
2005年のグランプリは大学院を卒業した新入社員が獲得した。賞金100万円を得て、プロジェクト責任者として実際にいま予算をたててブログの新規事業を立ち上げている最中だ。西條氏は「たしかに新入社員にまかせて新規事業をやっているが、ユーザーや取引先、株主がいるのでそのまま手放しでやらせて失敗させても意味がない」として、経営陣がきちんとチェックすべき点はおえているという。これにより、失敗のリスクを下げているということだろう。
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