Linus Torvalds氏は米国時間3月20日、新しいLinuxカーネルを公開した。この新しいLinuxでは、IBMのCellプロセッサの機能をサポートし、クラスタ化されたデータベース用にOracle製ソフトウェアを含み、マルチプロセッサシステムにおける同オープンソースOSの稼動性能を改善している。
慣例通り、Torvalds氏は20日、バージョン2.6.16をLinuxカーネルのメーリングリストで発表した。
Cellプロセッサがサポートされたことで、IBMは、2005年後半に登場する同プロセッサ搭載サーバの販売が容易になる可能性がでてくる。独自の構造を持つ同プロセッサは、ソニーが今後発表する予定のゲーム機「PlayStation 3」にも使われるが、IBMは、医療用画像処理などの高性能コンピューティング能力が要求される作業での使用にも期待している。Cellは、メインのPowerPCプロセッシングエンジンを、小さなプログラムを実行する8つの専用コアで補完するという構成になっている。
Cell用にプログラムを書くことは難しさを伴うといわれている。しかし、Linuxがサポートすることで、難しさの度合いが多少低くなるかもしれない。新しいカーネルは、Synergistic Programming Unit(SPU)ファイルシステムを含むので、プロセッサコア間の制御や通信がソフトウェアで可能になる。
Linuxでのサポートが進められているマルチコアプロセッサは、Cellだけではない。SPARCプロセッサ対応Linuxの主任プログラマーDavid Miller氏は、Sun MicrosystemsのUltraSPARC T1(Niagara)搭載サーバ上でLinuxを稼動するためのパッチを、Torvalds氏が21日に多数受け取ったことを、自身のブログで明らかにした。
この新しいカーネルはOracle Cluster File System(OCFS)も備えている。OCFSは、1つのプールのデータが複数のサーバでどのように共有されるかを決定する。これは、高価なマルチプロセッサ搭載サーバの代わりに、低価格なコンピュータをクラスタ化してデータベースを構築するという、Oracleの取り組みにおいて重要な要素になる。
OCFSのバージョン2は「SUSE LINUX Enterprise Server」の一部である。しかし、Red Hatは、オープンソースの代替品として、Global File System(GFS)を独自に持っている。KernelNewsbiesサイトによると、GFSはバージョン2.6.16には含まれていないという。
Linuxは、低価格帯のコンピュータで広く使用されているが、大規模マルチプロセッサシステム用に移植する作業はまだ継続中だ。この領域で起こっている変化の1つには、LinuxによるNon-Uniform Memory Access(NUMA)の処理方法を改善することがある。
新しいカーネルでは、メモリの使用を停止せずに、そのメモリに保存された情報を最も関連性の高いプロセッサに近くなるように移動できる。
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス