IBMが開発した交通システムの試験が、現在スウェーデンのストックホルムで行われている。このシステムは試験開始から1カ月間でラッシュ時の渋滞を25%緩和しており、IBMはこの技術を世界各国に普及させたいと考えている。
「われわれは、すでにこのシステムでこのような良好な成果を収めており、この成果を見れば他の都市もこの技術に注目するだろう」と、IBMのPeggy Kennelly(On Demand Innovation Services部門担当バイスプレジデント)は述べている。同氏によると、これほどの好結果が出たのは、システムの大幅な自動化を可能にする新技術のおかげだという。
このシステムは、世界の多くの地域で政治的自殺行為となりかねないあるコンセプトを中心にできている。このプログラムのもとで、ストックホルム市は路上を走行するドライバーに課金し、その支払いはRFID(無線ICタグ)を通じて行われる。また、世界の他の地域にある大都市圏でも、通行料の徴収か厳格な規制によって、交通渋滞や大気汚染の解消法を模索する動きが活発化している。例えば、インドの首都ニューデリーでは、ディーゼルバスの運行が禁止されている。また英国のロンドンでは、交通渋滞の激しいエリアに進入する車に通行料を課している。
IBMのシステムは、米マサチューセッツ州やポルトガルなどで有料道路の料金支払いの自動化にも利用される可能性がある。ニューヨーク、ロサンゼルス、サンフランシスコ、ワシントンDCの各都市はすでに、交通問題を解決するための手段として通行料制度の導入を検討している。
ストックホルムでは、自動車の所有者に対し、自動車のフロントガラスの内側にRFIDトランスポンダー(中継器)を設置するよう促している。同市のシステムは、自動車が同市に出入りする際に、自動車から発信される無線信号を道路沿いに設置されている電子レジスタステーションがキャッチし、中央コンピュータシステムが自動車の所有者の銀行口座から通行料金を引き落とす仕組みになっている。
RFIDタグが取り付けられていない車については、道路沿いに設置されたカメラで写真を撮影する。自動車のナンバープレートが光学式文字認識システムによって読み取られ、国民の運転免許証のデータベースと照合される。そのプロセスの終了後、ドライバーはインターネット上か7-Elevenの店舗のいずれかで料金を支払うことができる。
Kennellyによると、今回の実験で好結果が出たのは、その文字認識システムのおかげだという。このシステムには、以前は汚れや暗さが原因で確認が困難だった車のナンバープレートの数字を、高性能コンピュータアルゴリズムを使って自動的に確認する新技術が導入されており、人手を一切必要としない。
「(このシステムは)極めて高い精度の認識が可能であるため、大幅な自動化が可能だ。このシステムを導入することにより、人々は長蛇の列に並ぶことなく料金所を通過できる」とKennellyは語る。また同氏によると「同システムを導入した都市では、交通の流れを管理したい特定の時間帯にのみ料金を課すことも可能だ」という。
ストックホルムでは、月曜日から金曜日の午前6時半から午後6時半の時間帯にドライバーに通行料を課している。料金の額は時間帯によって様々で、交通量のピーク時には料金は高くなる。同市で行われている今回の試験は今年の1月から7カ月間実施されるが、最初の月である1月末までに、ピーク時の自動車交通量が10万台減少し、公共交通機関の利用者が4万人も増加した。同市は、試験終了後も同システムを継続するか否かの採決を実施する。
ストックホルム市長のAnnika Billstromは、「国際的観点から見れば、経済的に成長するだけでなく、環境的にも成長することが重要だ」と言う。「多くの都市が深刻な環境問題を抱えている。われわれはいま、現代的でエキサイティングな新しいシステムを使ってこの実験を行っているところだが、欧州や世界の他の地域でもこの実験から得るものがあるだろう」(Billstrom)
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
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